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ONKYO Integra A-919

最終更新日  2009年1月29日



A-919

●1990年発売 定価160000円(税抜き)
●定格出力(20〜20kHz):200W+200W(4Ω) 155W+155W(6Ω) 120W+120W(8Ω)
●全調波歪率10W出力時:0.0015%
●混変調歪率;0.004%
●ダンピングファクター:400
●周波数徳性:CD 2〜100kHz
●入力感度/インピーダンス;PHMM 2.5mV(47kΩ) MC 160μV(100、220Ω) CD,TUNER,TAPE,DAT 150mV/47kΩ
●S/N比;PH 94dB/75dB AUX 107dB
●トーンコントロール;BASS ±10dB@20Hz TREBLE ±8dB@20kHz
●外形寸法;471W×170H×430D
●重量;26.6Kg

5年後に後継機種のA-929が発売されていますが、重量が6.6キロも軽くなり、出力も減少しています。ツマミ類を中心とした外観の変更と、トランスの変更・無帰還回路の採用というところが、目立つ変更です。

A-929
●1995年発売 定価170000円(税抜き)
●定格出力;160W+160W(20〜20kHz、4Ω 0.04%)、130W+130W(20〜20kHz、6Ω 0.04%)、100W+100W(20〜20kHz、8Ω 0.04%)
●全高調波歪率(20〜20.000Hz):0.04%(定格出力時8Ω)、0.005%(PHONO→REC 3V出力時]
●混変調歪率;0.04%(定格出力時.8Ω)
●ダンピングファクター;160(20Hz〜20kHz8Ω)
●周波数特性;5Hz〜100kHz
●入力感度;PHONO(MM)3.0mV/47kΩ、(MC)HIGH300μV/100Ω、LOW300μV/50Ω、CD、TUNER、LINE、TAPE1.2.3(SOURSE)POWER AMP DIRECT:500mV/25kΩ
●S/N比;再生時117dB(CD TUNER LINE TAPE-PLAY[DIRECT]POWER AMP DIRECT時)
●トーンコントロール;BASS200Hz+15dB-6dB@20Hz、TREBLE7kHz±10dB@20kHz、MIDBASS PRESENCE±6dB@200Hz/300Hz
●寸法;445W×165H×438D
●重量;20Kg

A-929で ONKYOの大型ハイグレードアナログアンプは打ち止めです。
以後は薄型のQUEST(クエスト)シリーズというアンプを発売するようになり、程なくピュアオーディオから完全撤退してしまいました。

2006年現在一応デジタルアンプで部分的に復活しているのが不幸中の幸い。

メインボリュームを中央に設置したONKYOの伝統的なスタイル。
コロコロとデザインを変えるメーカーが個人的には好きではない。
ボリュームのノブは取り外していないが 触った感じは値段相応ではないのが残念。

発売時期としては SONYのTA-F555ESLと同じ1990年ごろの製品

電圧から電流へのリニアリティ良好な変換特性をもつBI-MOSドライブ方式アンプを前段に持ち、出力段には新開発のスーパーカレントアンプ搭載で、電流増幅のみを担当させたアンプ、この方式により超安定した駆動力を実現している。電源トランスは、LASERトランスを搭載。リーケージフラックスから音楽信号をガードする特性を得ている。高剛性の3BOX構造、6点止め高剛性天板の採用など、堅牢な防振設計をあらゆるパーツに施している。さらには微小信号ブロックを中央に、パワー部分と電源部分を左右にレイアウトすることにより、信号伝達距離を最短で結ぶことなど、ストレートな伝送を実現。

FETとバイポーラートランジスターの良さを再生音に反映したい、と考案されたBI-MOS方式は、当初出力段(ファイナル)として登場したが、第3世代目となる本機では同回路はドライブ段に採用され、出力段はオーソドックスなバイポーラートランジスタで構成されている。


サイドウッドを取り外すと内部シャシーがすぐに露出する。


サイドウッドはMDF製だが、光沢が美しい
サンスイやSONYなどとはワンランク違う仕上げとなっている。


ネジ部分はゴムが埋め込まれている


天板は 前述のようにサイド部分がない
6箇所でネジ止め固定


内部写真
中央のプリアンプを左右のパワーアンプで挟んだ構成

SONYのようにGシャーシーなどの重量添加物なしで この重量が立派。

構造はテクニクスのSE-M100に似ている


トランスは4本のネジでシャシーに固定

ゴムを介している。ケースのサイズはSE-M100より大きい
超低リーケージフラックスのLASERトランス
コアのデザインやシールドの工夫によって、一般的なトロイダルトランスより不要放射が少ないという。実測で従来のEIコアのトランスと比較して不要放射が1/30になったとされている。

 


ONKYOと書いてあるが モノは日本ケミコンのnegative black
71V 12000μFが4本(左右別)
写真のようにバンドでシャシーに強力に固定されている。


整流回路・フィルターコンデンサー・プロテクター回路などは全部パワーアンプ基板に乗っており、ごらんのようにスピーカー端子に直接配線されており、無駄な配線が無い。

そのため(?)といってなんだが、このアンプにはスピーカー端子は一組しか用意されていない。スピーカー端子は大型であるが、あまり太いコードは使用できず、また壊れ易いので、力任せに締め付けては駄目である。


終段は3プッシュプル

ご覧のようにコンデンサーのTOPが膨張しており お疲れ気味です。

回路は+/-対称の全段プッシュプル構成。プリドライバー段にMOS-FETとバイポーラートランジスターを組み合わせた回路を使用して、電圧→電流変換を行う<BI-MOSドライブアンプ>という。


カレントドライブ回路搭載ということらしいが、これも詳細不明。おそらく電源を安定化させて ゆるぎない出力・・・といった感じの回路か?


センターにも小さなトランスがある。プリアンプ用?

シャフトはボリューム駆動用。
途中にジョイントを設ける芸の細かさ


プリアンプ部

上から見える範囲は 切り替え系とPHONOイコライザー系である。
本当のプリ回路は 一番下に設置してある。MUSEなどが多用されている。

写真中央 やや左手に見えるのがメインのボリューム
リモコン用のモーターも付いている。

写真中央 やや右側が モータードライブの入力セレクター

 


日本ケミコン社製 VX(M)コンデンサーが多用されている。
またMUSEコンデンサーには防振の為 黒いテープが貼られている。


底板は3分割構造


コルクが脚に貼ってある


中は空洞


センター部分 取り外し

上からは見えなかったプリ基板が現れる


パワーアンプ部の底板も取り外し

補強板が前後に渡してある


全部取り外し

プリの電源部以外は 完全左右対称で美しい


電解コンデンサーのアース部分には銅プレートが使用されている。

音質のインプレは こちらを参照(別窓)

1990年11月のステレオ誌に 斉藤宏嗣氏のコメントがありました。
MOS-FETとバイポーラートランジスタを組み合わせた独自の”BI-MOS方式”をドライブ段に採用し、混変調歪を抑え、出力段はバイポーラートランジスタの3段並列方式で電力のみ扱う新開発のカレントドライブ方式となっている。再生音はワイドレンジでパーフェクト・フラットバランスであるが、全域で厚く、高密度のパターン。スケール感充分のダイナミックなサウンド


また1992年秋号のオーディオアクセサリー誌にも 斉藤氏のコメントがありました。

再生音は、同社のコンポーネントに共通した有機的で分厚い低音、押し出しの良い中域、繊細で粒立ちの良い高域がパックされて、独自の世界を展開する。低域から中域にバイポーラと同社独自の粘りのある音質で、高域はFETの爽やかなニュアンスが加わる。全てのソースアナログ的なつながりのよさがあり、アコースティックと音像の溶け合いが感じられる。アコースティック系のソース、特にボーカル、ジャズ、ヒュージョンなどでアナログ感覚に富んだ描写が可能であり、マニアは見逃せない。中域の充実感が、快い張り出しのよさを演出しているようだ、

同じ1992年秋号のオーディオアクセサリー誌で井上良治氏のコメントもあります。
サウンドは質感を十分に高めたもので、音楽に対する表情の豊かさを重視、しなやかな表現を持つ。低域のコントラストをしっかり出し、これが響きに幅を付け、空間の広がりを上手に引き出している。しなやかながら甘口にはならず腰がある。ボーカルの存在感などは実にリアル。高域方向で時折高さが出にくくなるところがあるが、快い響きは十分なまでの魅力を持っている。

1990年12月のステレオ誌では入江順一郎氏のコメントがあります。
今までのONKYOのサウンドとは次元の違う、厚くて柔らかみを備えたサウンドになっている。

1990年11月のステレオ誌では斉藤氏のコメントがあります。
ワイドレンジでパーフェクト・フラットバランスであるが、全域で音が厚く、高密度なパターン。スケール感充分のダイナミックなサウンド。

1991年4月発行のSOUND TOPS季刊26号(1991春)では高島誠氏は以下のようなコメントを残されています。
好みがハッキリ分かれる個性的な音が出る、キャラクターのある製品だ。中高域にある独特のみなぎりとつやがある。そのため直接波が非常にはっきり聴こえる反面、そこに注意が吸い寄せられるため、間接波や余韻は割りと早く消えてしまう印象を受ける。SONYのTA-F555ESLと比較すると、わずかにオイルがかってツヤが出る感じだ。これがDIATONEのDS-3000ではより強調される。スピーカーとの組み合わせには注意が必要だ。しかしオンキョウの伝統であるスピード感は十分で、弟機のA-917と比較すると本機の方がオンキョーらしいモデルといえよう。特にパワフルなパートでその傾向を強く感じる。

また同誌に藤岡誠氏のコメントもありました。
弟機のA-917に似ているが、内部構造は全く違い、倍近く価格差に見合ったパーツや内部構造を持っている。完全ツインモノ構成で、それぞれ大変強力な電源部を持っている。そのためスピーカー駆動能力は驚くほど高い。特に中低域から低域にかけての押し出しやパワー感は、かなりの実力がある。低音楽器はいずれもぶ厚い音が出る。DIATONE DS-3000と組み合わせると、本機から出る低音の領域とDS-3000からでる低音の領域が一致せず食い違っているようだ。相性は良くない。とはいえ、低域の量感、パワー感は相当なもの。A-917の軽い感じの低音とは全く異なる。また中域にキャラクターがあり、ピアノの右手にややツヤが乗ってくる。高域は917ほどは気にならないが、もう少し柔らくしたい。しかしパーカッションなどの迫力は圧倒的で、現在使用中のスピーカーが低音が出にくかったり、硬質すぎたり、あるいは軽かったりする場合、本機の低域のドライブ能力で十分補えるだろう。

 

 

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