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YAMAHA AX-2000

2009年7月28日 更新


デザインは A-2000シリーズに共通だが、AX-2000からはチタンカラーとなった。

内部は、前モデルのA-2000aから一新。
回路的にも共通事項は殆ど無い。2000や2000aにあった”リッチネス”という、ラウドネス機能も無くなった。
( 最近では”ラウドネス”という名前も殆ど死語になっているのではないか?)

またA-2000aにあった、6段階のフォノ入力は大幅に整理され、MM/MC切り替えのみになった。

A-2000aは、Dual Amp class A with ZDRという、AB級アンプとA級アンプの変形BTLアンプ)で、結構な放熱があるアンプでした。A-2000aとA-2000には2つトランスがありますが、小さい方がA級アンプのトランス、大きな方がAB級アンプのトランスです。ZDRというのは歪キャンセル回路で、当時のYAMAHAはNFBとは違う新回路と宣伝していましたが、結局のところ、出力波形からネガティブフィードバックを掛けることには変わりなく、NFB類縁の回路かと思います。

テクニクスのクラスAA回路と似た方式です。ただしクラスAAはマトリックス接続可能(SP端子のマイナスはグランドに接地し、A級とAB級のアンプはHOT側に存在する)でしたが、YAMAHAのDual Amp class A with ZDRは、サンスイのダイヤモンド回路(純正なBTLアンプ)と同様に、マトリックス接続は不可です。

AX-2000以降のモデルはそれを放棄して、双曲線出力による回路でスイッチング歪を回避するHCA回路を採用していました。実に理にかなった回路で当時私も感心した記憶があります。それによって消費電力も420Wから350Wに減り、放熱量も減っています。

AX-2000は、2000シリーズで唯一 DAコンバーターを搭載したモデルである。ただ単にDACを搭載したのではなく、SU-MA10のように大出力DACを搭載し、デジタル入力時の音質改善を図ったものである。通常のCDプレーヤーのRCA出力は2Vであるが、このアンプに搭載されているDACは、その3.5倍の7Vの出力を可能にしていた。

後継機種のAX-2000Aは、サイズ、重量、出力は同じ、電源部も共通であるが、DACは搭載されなかった。
AX-2000にはバランス入力端子が導入され、またアクティブボリュームが進化したものになった。
DACがあったスペースには、それらのパーツが設置されている。

発売年
重量
価格
特徴
A-2000
1983
26kg
185000円
AB型アンプとA型アンプの変形BTLアンプ
※マトリックス接続は不可
フォノ入力は6段階切り替え
A-2000a
1985
26kg
195000円
A-2000のマーナーチェンジ
主に電源部のリファイン
AX-2000
1987
28kg
230000円
全面改良のニューモデル
DAC搭載、HCA回路搭載 ビデオ入出力搭載
リモコン付属
AX-2000A
1990
28kg
240000円
DAC削除、ビデオ入出力削除
バランス入力付き
アクティブボリュームの進化

 

 


サイドウッドの仕上げも高級感がある。


天板。
どうやって固定してあるのか、最初判らなかった。


天板は表面処理をしたアルミ製で3分割。
後方しか固定されておらず、前方は差し込まれているだけの状態。
しっかり固定されていないので、叩くとビリビリと共振する。
ネジが表面に出ないようにと、デザイン上での処理かと思うが、残念な構造。


アルミなので柔らかく、傷つきやすい。
発熱も少ないわけではないので、上には機材を置けないアンプである。


完全左右対称で美しい。
電源部のパワーは、A-2000aと比較すると弱くなっていますが、シャシーなどの強化により重量は逆に増加している。
トランスはケース入りのEIコアで420VA。
電解コンデンサーは直径80ミリ×100ミリのサイズで、27000μF×2本。
製造元は不明(YAMAHAと記載されている)。


サンスイ AU-α707L EXTRAとの比較。
トランスは同程度のサイズ。

 


電源ケーブルは太めのキャブタイヤコード。極性の表示は無い。インレット式ではない。


フロントのパネル内に、トーコンなどのツマミが搭載されている。
小さいが、視認性も良く、使いにくいということは無い。
この辺のつまみは、プラスチック製。
A-2000aではアルミ削り出しであった。(A-2000はプラスチック製)


メインボリュームのツマミは無垢。


リヤ側のボックス内部に18ビットDAコンバーターが搭載されている。
ボックスの蓋はダンプされておらず、強度はもう一歩という感じ。


ボックス左側がDAI部分、右側がDAコンバーターである。

リヤパネル
上段が、デジタル入出力(光+同軸)。
中段が、 アナログ入出力。
下段が、ビデオ入出力となっている(同軸のみ)。

そうAX-2000には、ビデオ信号回路も搭載されている。不要なときにはフロントパネルから、ビデオ信号回路の電源を切ることが出来る。


DACチップは、定番のバーブラウンPCM56Pを左右独立で使用している。
これに8倍オーバーサンプリングのデジタルフィルターを併用している。
通常なローパスフィルターがこの後に構えていますが、
デジタルダイレクトボタンを押すと、ローパスフィルターがバイパスされる仕組みになっています。

DACとしては、CDX-2000と同等かと思われます。


DACの最終出力は、JRCの5532オペアンプとなっている。
赤いコンデンサーはエルナーと思うが、銘柄や容量は確認できなかった。


底板も銅メッキ。
脚はプラスチック製で、底板にしか固定されていない(シャシーには固定されず)。
そのため、自分の重量で底板が歪んでしまっていた。


底板を外したところ。
手前の基板はビデオ信号回路。
中央の白い基板は、整流回路だろうが、サンスイなどのアンプを比較すると、あっさりしている印象を受ける。


リヤパネルのサービスコンセント付近。
これって、工場出荷時で こういう仕様なんでしょうか?
前ユーザーの加工?



右側の2つのパーツがブリッジダイオード(パワーアンプ用)
左半分は、フォロ回路やDAC回路、プリアンプ回路用の定電圧回路。
コンデンサーなどが妙に少なく、違和感を覚える。非常にあっさりしている。


サイドウッドは、側板をかねる構造。
ただし、キャビネットの強度には寄与していない。


パワーアンプ基板。


2SA1491と2SC3855
サンケン(株)のバイポーラートランジスター をトリプルプッシュプルで使用している。

ドライバー段は、東芝製のバイポーラートランジスターが使用されている。
2SA1388??

全体的に、この頃にYAMAHAのオーディオ製品に良く使われている基板やコンデンサー、抵抗などが見られる。


出力素子は、アルミ角ブロックに固定されたあと、放熱器に固定されていた。青いシートはシリコングリスの代わりだろう。


KS(M)コンデンサー;詳細不明。

音はシルキーで大人しい感じ。デジタルダイレクトで使用すると、SU-MA10のようにノイズが激減する。DACのスペックは今となってはお世辞にも良いものではないが、通常の3.5倍もの出力によって、後方のプリアンプの増幅度を低くしているメリットは、確かに体感できる。デジタルダイレクトボタンを押すと、事実上DAC+アクティブボリューム+パワーアンプという非常にシンプルな構成になり、DACのローパスフィルターさえもバイパスされる仕様になっています。

元々 A-2000aも特徴のない音でしたが、そのサウンドを継承しています。

このアンプのトランスやシャシーは、MX-2000というパワーアンプにも使用されています。


なぜAX-2000かというと、液晶TVやプレイステーション、LD、DVDからのデジタル出力を再生する必要があったからです。当初DAP-5500M-90aの組み合わせで対応予定でしたが、大掛かりになるため、AX-2000を購入したわけです。

最新の単体DACでも良かったのですが、中国製の怪しいDACでさえ、AX-2000の中古価格より高いですし、パナソニックのSA-XR55やSA-XR57も同様です。また解体してもゲンナリするような中身スカスカの機器を新品で購入するなんて、私には考えられない行為なのです。

そうなると重量級アンプでDACがあり、出来れば少し凝った製品・・・・となると、この製品か、SU-MA10, SE-M100, AX-Z921位しかない訳です。

 

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