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サンスイ CD-α717 EXTRA

2006年3月9日 更新

  価格(税別) 発売年
CD-α707 79800 1986
CD-α707i 89800 1987
CD-α717 EXTRA 89800 1988
CD-α717D EXTRA 89800 1989
CD-α717D LTD 99800 1992
CD-α717DR 108000
参考
CD-α917XR 160000 1993

CD-α707iまではマルチビットタイプのDACですが、CD-α717 EXTRAは松下とNTTが共同開発した1ビットタイプのDACが採用されています。

430W×127.5H×397.5Dmm
10.0kg


外観は同時期の同社のアンプに共通する、漆塗りのようなデザインです。10keyも装備していますが、プログラムで演奏順序を指定する際に使用するのみのようです。例えば(2)のボタンを押してもSONYのように直ちにINDEX-2の曲が再生されるわけではありません。ボタンの数は多いのですが操作性は悪くありません。

 


光を反射します。下のCDはSONY CDP-X333ES

 


トレイは薄型で独特
トレイの動作は非常に俊敏である。

 


リヤパネル
アンバランス/バランス出力 各1 と、デジタル出力 同軸/光
電源コードは、普通の細めのコードが使用されている。

 


天板
サイド3本×2とリヤ2本の 8本のねじで固定。

 


内部写真

 


メカニズム
リニアモーターを採用したオリジナル製

 


外見は特に特徴は無い。
敢えて言えば、上側のクランパーを支える部分が丈夫に作ってある程度。
この機種のために、新たに開発されたメカニズムで、4モーター&トリプルシャシー構造。ピックアップ部の駆動にはリニアモーターを採用して、高速アクセスと静粛性を両立している。さらにディスクトレイには液晶ポリマーが採用されている。液晶ポリマーはダイアトーンがDS-500というスピーカーの振動板に採用している素材である。高い剛性と弾力性、そして振動吸収性の良さによって、スムーズな動作と安定したトレース能力を得ている。

 


電源トランス
デジタル・アナログ別の2トランス

 


ドライブメカ後方にある基盤
デジタル出力関係と2系統の整流回路が設置してある。
中央のデカいコンデンサーがあるのが、アナログ用であろう。右側のMUSEコンデンサーを使用した回路はデジタル用。

トランスやらコンデンサーに塗られてる塗料のようなものは、
前ユーザーによって塗られたもの。防振塗料とか・・・
とても効果は期待できそうにも無い。フラシボー効果はあるかも知れんが・・・。

 


デジタル出力回路
東芝74HCU04AP
アンバッファタイプのインバータICが使用されている。クロック回路でも良く使用されるチップである。

 


アナログ回路用のコンデンサー
グレートサプライ 50V 3300μF
その手前の茶色のコンデンサーは 日本ケミコン社製AWFコンデンサー;容量は不明。

 


メインの基盤にも整流回路が少なくとも3系統見受けられる。
左・中央・右と3系統あるのがお判りいただけるであろうか?
視認できるものは、以上の5系統だが、実際は9系統の電源回路を搭載しているとのこと。

 


角度を変えて撮影
レギュレターを固定するネジは銅メッキされたものを使用している。
使用されているコンデンサーは、奥がニチコンAWF、真ん中がグレートサプライ、手前がMUSEと、使い分けている。

 


SONY製 CXK5816
S-RAM 16K(8K×2)
何に使用使用しているのか不明だが、CXD1125のすぐ近くに設置してあることから、ピックアップからの入力信号の処理に使用しているのだろう。

 


東芝製74HC74AP 2回路 フリップフロップ

SONY製CXA1081
これもRF信号処理系のチップ


メイン基盤前側にあるRF/サーボ系の直立基盤
細い線はドライブメカにつながっている。
この基盤にも、やたら沢山のトランジスターが配置されている。
サーボ系のバランス構成になっているようで、その為に部品点数が多いようだ。

後継機種のCD-α717D EXTRAになると デジタル系・サーボ系の部品が整理されて少し減るが、それでも他社と比較すると部品点数が多い印象を持つ。

 


アナログ系の回路
ここにも2枚の直立基盤がある。


DAC周囲
DAC本体は基盤裏側にある。
多数のAWFコンデンサーが使用されている。

 


出力アンプの基盤
+/-のバランス回路なのでトランジスターがずらりと8個並んでいる。
オペアンプを使用せず、ディークスリートで組んである。
灰色のcableが、バランス出力の(最終)のcable。
アンバランスの出力は、中央の黒いcableである。
DACも4DACなので、その出力をそのまま+/-に振って利用する4DACツインバランス構成し、微小レベルの信号の再現性を向上させている。

 


その反対側の基盤
DAC以降は完全にバランス回路化されており、ローパスフィルターもバランス回路(つまり4つある)化されている。


底板
足を含めて合計17本のネジで固定されている。

 


脚は軽量級で中は空洞
横に見えるのはピックアップ固定用のロック

 


底板
厚さ1-1.5ミリくらい

 


底板をはずした眺め

 


MN6471M 松下製MASH 1ビットD/Aコンバーター
1チップで4DACを搭載している。MASHとしては第2世代となるチップである。

MASHはPWM(パルス幅変調)型のD/Aコンバーターで、理論的には画期的なコンバーターでしたが、製造元である松下のモデル(テクニクス)やYAMAHA・ONKYOの一部のCD、海外製品の一部に使用されただけであまり採用実績は伸びませんでした。また回路を単純に出来るため、ローコストCDプレーヤーを中心に採用され、高級機は他社製DACという不幸な住み分けも実際ありました。SONYやパイオニアなども1ビットDACを採用しましたが、MASHは採用せず自社開発の改良品を採用しました。MASHはその後も1チップに8DAC搭載したり、基準のパルス幅を短くしたりして改良されました。

フィリップスはビットストリームというタイプ(PDM;パルス密度変調)の1ビットDACを開発しましたが、セールスとしてはこちらのほうが成功したといってよいでしょう。

1ビット VS マルチビットという図式が一時期ありましたが、その後両者の利点を生かした4ビットのパルスDACが開発されたり、1ビット派だったメーカーがマルチビットを再度採用したりと その垣根は事実上今日では無くなっています。

決定的だったのが SACDの登場ですが、それについては私の守備範囲ではないので他のサイトを参照してください。

CD-α717DRのページにも 1ビットDACについてまとめておきました。あわせてご覧ください。

 


CXD1125
ピックアップからの信号を処理するチップ

CD録音時に16bitの信号には信号処理とエラー訂正の符号が加えられ、0と1の符号だけになる。しかし0や1の分布が不均一だと、再生時にクロックの抽出がうまく行かないので、8bitのデータ列を0,1が均等に分布した14bitのデータ列に変換し(EFM変調)CDに焼き込まれている。

ピックアップはCDにレーサー光を当てて、その反射をフォトダイオードで捕らえ、それが増幅されてRF波形となる。RF波形はCXD1125のような復調用の回路で処理され元の0と1の信号になおされ、D/Aコンバーターに送られるわけである。
(間違っていたらすいません)

 


SONY CXA1082B
ピックアップのサーボ系のコントロールチップ


AU-α707L EXTRA と D-55 との組み合わせで視聴
なおアンバランス・バランス ともに全く同じcableを使用した。
AU-α707L EXTRAには バランス入力は パワーアンプダイレクトしかないので、
アンバランス入力もパワーアンプダイレクトを選択した。

バランス入力はアンバランスより若干音が大きく聴こえる。実際回路の関係で音量は増えるそうだ。 その為最初はバランス入力のほうが音が良いように聴こえるが、そのつど音量を適切に調節して聴くと音の差は少ない。

確かに音はわずかに違う・・・・が それほど大きな差ではない。一般的にはアンバランス伝送のほうが透明度がありクリアなサウンドで、バランス入力は落ち着いたサウンドになりやすいといわれる。しかし今回の聴き比べでは困ったことに、この音の差がソースの選択で逆転するのである。30分ほど視聴したが、どちらが優れているか結論は出なかった。

 

せっかくキチンとしたまともなバランス回路を備えた(※)CDとアンプであるので、オーディオマニア(音楽マニアではない)としてはバランス入力で使用したい。

※単にオペアンプやトランスを使用して逆相を作り出してバランス出力を提供している機種もある。そういった機種のバランス出力は意味が希薄で音質的にも期待できない。ちゃんとオーディオ出力段が4channel構成になっているバランス回路を装備したCDを選択するのが大切。

他のCDプレーヤーとの比較試聴は こちらを参照

1989年7月のステレオ誌に以下のコメントがありました。
江川三郎氏
1ビットDACが、実に良く効果を発揮している。この場合はNTT開発のものだが、フィリップスで作られた1ビットDACなどで聴く音質とは違うか、従来のマルチビットDACでは感じられない音楽の動きを的確に捉える能力を持った方式であると聞き取ることが出来る。特にこの製品では音楽信号の音の積み重なりが厚くなったときに納得できる分離が得られるのが特徴である。CDの音楽はくっきり、はっきりしているのが特徴だが、とかく金属的な響きとかきつい感じの鳴り方が指摘されるが、この製品ではこの点が大幅に改善されているように思われる。こうした事実を聞くにつけて、CDはまだまだ発展途上の方式と考えられる。それにしても他社がマルチビットDACのハイビット化競争に明け暮れているときに、音質改善効果の良いdeviceをいち早く取り入れた同社の見識は高く評価されるべきことだ。

1988年11月のステレオ誌に 藤岡 誠氏のコメントがある。
音は従来のサンスイとは相当に違ったニュアンスを聴かせる。バイオリンは金属的な響きがなく、弦の響きも滑らかに聴かせる。あたりの柔らかい聴きやすい音質。MASH方式だからという点だけでなく、それよりもトータルで攻めるところを攻めた結果としての滑らかさだろう。

1990年5月のステレオ誌に後継機種のCD-α717D EXTRA(89800円)のコメントがありました。
入江 順一郎氏
なかなか優れた音である。ピアノはクッキリと伸びやかに出てくれ、響きの美しさも抜群だ。ブラスも厚み・暖かさ・柔らさがあり、張りや艶やかさも得られ、いかにもブラスらしい音である。オケでも、きめの細やさや滑らかさがあり、エッジの出方も良好で、音場も実に自然である。高域は爽やかに高い方まで伸びており、低域の弾力感や躍動感もあり、全体的に穏やかさもあるサウンドである。もうひとつ付け加えたいのがバランス出力のサウンドだ。厚み・豊かさ・重心の低さそして解像度の高さなど、実に優れたサウンドである。RCAピンによる通常のアンバランス出力も申し分ないし、同軸デジタル出力のサウンドもアナログ出力に遜色ないサウンドが得られるが、アナログのバランス接続は最高である。光デジタル出力ではやや軽量になり低域はやや丸くなる。ブラスは同軸デジタル出力よりも落ち着いた感じになる。しかしやはりメインはアナログバランス出力である。このCDプレーヤーはすべての面で良く出来ていると思う。

 

オーディオ解体新書>サンスイ CD-α717 EXTRA