オーディオ解体新書>SONY CDP-X333ES

 

SONY CDP-X333ES

最終更新日  2009年1月20日

2005年年末ハードオフで保護6000円だった。

CDP-X333ESは 1990年発売 59800円のモデルです。1989年のCDP-Xシリーズからマルチビットから、NTTが開発したMASH型1ビットDACに改良を加えた自社開発のパルスDACを採用しており、本製品はそのCDP-X33ESの改良モデルです。

430W×125H×375D
12キロ

CDP-333シリーズは CDP-333ESD CDP-337ESD CDP-338ESDまでは中級機(89800円)であったが、1989年のCDP-X33ESから 上級機が7シリーズとなったため(具体的にはCDP-X7ESD 20万円) 価格帯が下げられ以後3シリーズは59800円の初級者むけCDPとなった。

購入を決めた動機は重量。とても初級者向けのクラスの製品ではありません。実測11キロ以上あります。

カスタムファイルやカスタムインデックス・プログラムバンクといったCD情報のメモリー機能があるが、説明書が無いので使用の方法はわからない。CDを編集してプライベートなミュージックテープを作成するのに便利らしいが、操作がややこしく実際活用された方も少ないだろう。また今となってはCDをテープに録音することなぞ皆無であろうから、特に必要性は感じられない。ただし10キーは素晴らしく便利である。デザイン上不細工と思えるかも知れないが、実際使ってみると非常に便利である。また表示もわかりやすく 全部でCDに何曲入っているかも常時表示されるので判りやすい。表示がうるさいという人のために 表示をオフにするボタンもついている。


脚は内部まで充填された割と重いもの。持った感じはモールドの骨組みにゴムを充填した感じ。6万円クラスでこういった手抜きしてない脚は異例。おそらくCDP-X33ESと同じものではないか?


底板は取り外し可能。

10本以上のネジで固定されている。厚さ1.5ミリくらいの丈夫なもの。特にダンプはされていないが 鳴らない。この辺もCDP-X33ESと同じ。


シャシーも肉厚の鋼材で作られており 丈夫。FBシャシーと呼ばれていた。シャシー自体はCDP-X33ESと基本的に同じものだが、細部が微妙に異なっており一部補強などもなくなっている。

基板裏側に目立つチップがDACです。


CDX2552チップ

KENWOOD DP-7040にも使用されているパルスDAコンバーター。ただしこのCDP-X333ESには左右独立で使用されている。ワンチップで4CH出力可能である。2つ使用しているのでトータルで8つのDAC出力を使用していることになる。これをコンプリメンタリー動作させている。

1ビットDACには NTTが開発したMASH方式とオランダ フィリップスが開発したビットストリーム形式があり、ソニーのパルスDACはMASH方式をベースとしたもの。45ビット・ノイズシェービング・デジタルフィルターやダイレクト・デジタルシンク・サーキットと呼ばれるジッター除去回路などによって構成されている。このデジタルシンク・サーキットはCDP-X7ESDなどで初めて搭載された技術で、当時は専用のICとして搭載されいましたが、CDX2552では内部に含められているようです。デジタル信号の振幅幅に加えて時間軸精度も向上させてたもので、デジタルフィルターCXD1244から出力されたデジタル信号を、マスタークロック精度に並べ替え、同時に0→1、1→0へ変化するときの振動をクリーンします。

ちなみにCDP-337ESDはフィリップスTDA1541 CDP-338ESDはバーブラウンPCM58Pを採用している。CDP-X33ESもパルスDAコンバーターであるが、CDX2552チップは1つしか使用していない(それでも4DACだけど)。


メカ部分

裏側からは何も見えない


天板

裏側に異なる材質の鋼板を張り合わせ、更にフェルトでダンプしており鳴かない。これもCDP-X33ESと同じ構造だが、手前の小さなフェルトはCDP-X33ESでは2枚張られていた。

トップ4本 裏1本 サイド4本の合計9本のネジで固定。


内部写真

デジタル・アナログ独立トランス。6万円クラスでこの強力な電源は他社製品にはありえない贅沢だ。多分CDP-555ESJなどとも同じトランスだろう。

そしてCDP-X33ESとの最大の違いが デジタル・アナログ独立基板である。2階建て構造で上側がデジタル基板、下側がアナログ基板である。電源基板もメカ後方に独立している。


こっちがCDP-X33ES

デジタルアナログそして電源回路も共通の1枚の基板に乗っている。使用されている部品やパーツはかなり共通している。またCDP-X33ESはELNAのDUOREXが広範囲に使用されていたが、CDP-X33ESRにはELNA DUOREXは使用されておらず、日本ケミコンの製品が多用されているのが面白い。


デジタル基板の目立つ部品

ICに銅製のヒートシンクが装着されているものだ3つ。X33ESにも同様のものが2つ観察されている。モーターやピックアップをコントロールするICのようです。

デジタル系基板が独立していますが、正直なところこんなにでかいデジタル基板が必要なのか?と思います。別段集積度も高くないようですし・・・

どうやらこの世代から、ファインドライブ・SサーボIII・アドバンストTSサーボ・デジタルCLVサーボなどと称して かなりピックアップのコントロール方法を変えてきたようで、そのためにデジタル系・・・というかコントロール系の回路が肥大してしまって、アナログ系と分離せざる得ない結末になったように思います。

次のモデルのCDP-333ESAでは コントロール系がかなりコンパクトにまとめられています。


巨大なトランス


奥がアナログ回路用の電源コンデンサー

日本ケミコン製 35V5600μF 銘柄は不明(?)

手前がデジタル回路用の電源コンデンサー

これも日本ケミコン製 16V 4700μF AVFコンデンサー


アース電位を安定させる銅製のバーが惜しげもなく投入されている。



アナログ回路

デジタル回路の基板に隠れていて 通常はこの程度しか見えない。定電圧回路と最終段の一部だろう。基板自体は高品位なものではないが、そこまで要求するのは酷と言うものであろう。これでガラスエポキシ基板だったら10万円〜15万円でも通る製品だ。

6万円でこの内容はありえない・・・ホント 皆さん手元に6万円くらいのCDPあれば分解して中を見て比較してみてください。ソニー製を嫌う方も多いですが、某D社とかは中身がスカスカで金がかかっていません。


アナログ基板全景

写真右下に見えるCXD1244というLSIがSONYオリジナルの8オーバーサンプリングの45bitノイズ・シェイピング・デジタルフィルターです。CXD1244からは45ビット分のデーターが出力されますが、45ビット動作の可能なD/Aコンバーターなんて当時ありませんから、オーバーしたビット数は四捨五入で切り捨てられます。このときに丸め誤差というのが生じ、かえって量子化ノイズを増やしてしまい音を汚してしまいます。音を汚さず残りのデーターを生かせないか・・・・その回答がソイズシェイピングテクノリジーです。元データーに補完データーを加えたり、あるいは減らしたりして、出力させた後に複数の出力結果を平均化することより、規定より小さな信号を得るようです。これにより高域では20数ビット以上の、低域では45ビット相当の分解能を実現し、再量子化ノイズを低減することに成功しました。

中央ややしたの左右の四角のマークの裏側にパルスDACチップが装着されています。

 


DAC周囲

メタライズド・ポリエステル・フィルムコンデンサーらしいものが多用されている。また電解コンデンサーはここでも日本ケミコンのAVFが使用されている。本当はAWFのほうが良いがコスト的に仕方のないところ。写真中央上側と下側にクロックの水晶が見える。またそのすぐ横には東芝製74HCU04APが、それぞれ使用されている。


オペアンプ

アナログ回路はデュークスリートではなく オペアンプを使用している。

シグネティクス(現テキサス・インスツルメンツ)社製の名オペアンプNE5532P
値段は120円前後で、CDP-X7ESDなどにも使用されている。

閑な方はバーブラウン社の OPA2604AP(1つ800円程度)などに交換されると面白いかも・・・。
しかし最低4つ必要で、消費電力も大きいのでその辺の注意も必要です。

一方ヘッドホンにはJRC4556というオペアンプが使用されています。


63V1000μF 日本ケミコン社製AVFコンデンサー

その後方のやや色の違うコンデンサーがAWFコンデンサーです。


ここにも銅製のバーが使用されている。


メカニズム 
後方より覗く
ピックアップの品番はKSS-271A


メカニズムはリニアトラッキング

灰色の部分はGベース
Gシャーシーではないが 同じ材質でメカのベースを製作したものらしい
こういった凝ったメカニズムは もう現在じゃ見られませんね。

1990年11月のステレオ誌に 斉藤宏嗣氏のコメントがありました。
本格的なフロントデザインのイメージに沿ったスケールの大きなパワフルなサウンドがポイントである。低域は量感も充分でフォーカスもシャープで弾力的。中域音像の肉付きもよく、ボーカルなどの厚さもあり、クラシックのソロ音像もスッキリと浮かび上がる。高域はよく粒立つが高密度で分離も爽やか。低重心で低域方向に豊かなプレゼンスが加わり、ステレオ感も富んでいる。全域で必要以上に絞り込まれず開放感がある響きもポイント。

同誌の金子英男氏のコメントは以下のとおり
無理のない充実感があり、レンジを広く取って伸びも良いですし、スケールも大きい。音像そのものが持つ存在感があってかなりしっかりしている印象。特別これ見よがしに鳴るのではなく、音一つ一つが充実して、中途半端な鳴り方をしない。何かこれが足りないという感じもない。これでしなやかさが出ると良いのですが・・・・。

1990年12月のステレオ誌では石田善之氏が5〜7万円のCDプレーヤーとして本機を選出され、以下のようにコメントされています。
機能も音質も大変整っている。さらに音は前作のX33ESと比較して重心をぐっと下げながらスムーズなもので、安物CDプレーヤー的な硬さにつながる要素がない。ここが最大のポイントで、ディスプレイなどもドット表示でくっきりしている。操作性も優れている。最後までビクターのXVZ505と迷った。

同じ紙面で入江順一郎氏は以下のようにコメントされています。
このクラスは、ビクターのXL-Z505とSONYのCDP-X333ESが競合する形になったが、やはりSONYのしっかり芯のある音が気に入った。XL-Z505も荒を出さない、そつのない音にまとめてあるが、ダイナミックな感じからすると、暖かみはそれほどでもないが、やはりCDP-X333ESということになった。

また同じ紙面で長岡鉄男氏は以下のようにコメントされています。
この価格帯はコンパチとモロに競合するので難しいところであるが、今回は一発で決まり、CDP-X333ESである。昨年もCDP-X33ESが選ばれているが、あれは正直言って音には大いに不満があった。しかし、金のかかった機械なので、使いこなしに期待するという意味でのベストワン選出であった。今回のX333ESは音の良さにビックリしての選出である。どこがどう変わったのか、X33ESとは格段の差である。情報量の多さ、中高域の切れと伸びはCDP-X555ESにも負けない。

私の音質のコメントはこちらを参照


 

 

オーディオ解体新書>SONY CDP-X333ES