
1987年に発売されたD-200 Liverpoolの改良バージョン。
D-200 Liverpool はこのサイズのコンパクト2WAYスピーカーの火付け役となったスピーカーである。
ツイーターの振動板の材質変更など色々細かく変更されているが、外観やサイズ、重量は同一である。
216W×352H×228D
重量6.8キロ
クロスオーバー 2.8kHz

安物っぽいアルミプレートが意見が分かれるとは思うが、良いデザインだと思う。

ユニットはバッフルを削り込んで固定されている。

ビクター SX-F3とのサイズ比較。

若干D-200の方が大きい
奥行きはD-200Uの方が短いが、背面にポートがあるので壁から少し距離をとる必要がある。

背面にポートがある

外装の仕上げはSX-F3のほうが良い。
スピーカー端子は D-200→D-200Uで随分大きくなり、使いやすくなった。

16センチピュアクロスカーボン振動板
従来より15%軽量化されたものを採用している。
ピュアクロクカーボン振動板というのはONKYOに限らず、結局のところカーボン補強エポキシ振動板というべきものであって、固有の鳴きがネックとなった。パルプや発泡ウレタンをサンドイッチしたり、セラミックやマイカを混入したりして各社工夫したが、2000年を迎える前に殆どのメーカーが見限ってしまったのは、個人的には残念なところ。

このスピーカーも色々工夫をしている。
白い塗料のようなものを一部に塗布してある。高域の共振防止処置だろう。正面のフレームはアルミ製の化粧板で、本来のフレームは鉄板をプレス加工フレームである。重量は1.3キロ。4本の木ネジで取り付け

反対側には重量添加物が取り付けてある。
おそらく最終的な音作りの段階で取り付けることが決まったものだろう。振動板は軽ければよいというものではないという、好例だろう。キャビネットや磁気回路の強さ、振動板の口径、ダンパーの強さなどによって、好ましい重量というのは決まってくる。

ユニットの品番はW-1652B
AV対応で磁気回路は直接見ることが出来ない。
ちなみにD-200にはW-1652Aという品番のユニットが使用されている。振動板の裏が白く塗られているのは同じであるが、エッジの材質が異なり、D-200のW-1652Aはウレタン製のエッジが使用されており、2006年現在オリジナルの状態を保っているものは極めて少ないだろう。D-200のW-1652Bには、薄いゴム状のエッジが使用されており、比較的丈夫である。

2.5センチ、ツイーター
品番はTW-385B
プラズマ状態で浸炭処理をしたプラズマカーボネイトチタン振動板が使用されている。浸炭処理によって、表面に炭素とチタンの合金皮膜が形成され、剛性が約2倍に高まっている。D-77XDや77XGのツイーターと同じ材質だろう。
外周の2箇所をレーザーで切断して、高域の共振によるピークの発生を防いでいる。これはD-77XXやモニター2001と同じ技術である。D-77Xのツイーターも別で紹介しているが、D-77XXは窒化処理であり表面の色調が異なる。
D-200にはTW-385Aというユニットが使用され、振動板には浸炭処理やレーザー加工はされていない。

正面はアルミ製の化粧板で覆われているが 、トップフレームはプラスチック製
重量は950グラム。4本の木ネジで固定される。木ネジはウーハーと同じサイズのものが使用されている。


トップフレーム

裏側

プラズマカーボネイトチタン振動板
外周の2箇所がカットされているのがわかる。 色がくすんで見えるのは浸炭処理のためである。エッジはロールエッジが使用されている。

ボビン部分も金属製であるが、ドーム型振動板と一体形成したものではないようだ。
中央にゴム(?)の小片が固定されている。また周囲には樹脂のようなものが塗布されている。ハード系振動板の難しいところで、振動板は軽くても、こういった音作りをしないと良い音が出ないということだろうか?せっかく軽量な振動板を重くしてしまう加工だが、単純に振動板の材質や物理特性を謳っても、音の評価には直結しないということだろう。
ボビン部にも縦に切れ込みが入っている。磁気ひずみの対策だろうか?詳細不明

磁気回路


キャビネット
バッフルは20ミリ厚、他の5面は18ミリ厚だと思う。
パーチボードをMDFでサンドイッチした木材が使用されており、あまりキャビネットは鳴かさない選択である。この辺はSX-F3と思想が異なる。

吸音材は極めて少ない
ウレタンの小片が3枚だけである。内1枚はご覧のようにキャビネット内部に斜めに固定されている。
ネットワークはウーハー用がスピーカー端子裏に、ツイーター用がその上部に固定されている。
裏板の上部には、ウーハーの抜き穴が貼られている。バスレフポートは紙パイプ製で、40-60HZくらいに調節してあるようだ。

ウーハーの抜き穴以外には補強材はない。
所々に隅木がいれてある。

ツイーターのネットワーク
D-200とは、微妙に変更がある。
D-200は、電解コンデンサー×2、フィルムコンデンサー×2、コイル×1、抵抗×1と組み合わせは同じであるが、フィルムコンデンサーの銘柄、サイズが異なる。
電解コンデンサーは6.8μFと5.6μF、それぞれにフィルムコンデンサーが並列に接続されている。コイルの容量は不明。抵抗は1.5Ω+-5%だと思います。

さっそく改造。
なるべく音楽信号がプリント基板を通らないように、素子と素子のリード線を直接接続した。

裏側(改造前)

裏側(改造後)
他のスピーカーと共用の基板なので、信号の取り回しに無駄が多いパターンである。ゼロから作り直した方がよさそうだが、時間の関係でそこまで出来なかった。

ウーハーのネットワーク

スピーカー端子からは、ダイレクトにツイーターのネットワークに配線が伸びている。ウーハーの配線はツイーターへの配線にハンダ付けされている(写真の黒い配線)
コイル×2、抵抗×1、電解コンデンサー×1、フィルムコンデンサー×1
D-200ではフィルムコンデンサーと抵抗は使用されていなかった。

これも配線を変更。(-)側のメインの配線はプリント基板を通らないようにした。また(+)はダイレクトにコイルに接続した。


上がツイーターのネットワーク。なおネットワーク内部で(+)(-)逆になり、逆相接続になっている。
下がウーハーのネットワーク図

問題なく音が出ることを確認。

試聴
うーん SX-F3と比較すると現実路線という感じ。
詳しい私の音のコメントはこちらを参照
1990年4月号のSTEREO誌では、<小型スピーカーを中心に音の良いコンポを組む>という特集があり、そこでこのスピーカーは以下のような評価をされていました。
入江順一郎氏
割とまとまった感じの音で、ソプラノも伸びやかで自然な感じで聴ける。弦も適度なツヤと明るさがあり、オーケストラでは、わりと豊かな感じで音像の広がりが得られる。ピアノのくっきりさもあり、高域も素直で、バランスも良好である。
藤岡誠氏
ベストセラーを続けている。仕上げも価格以上。極太のスピーカーケーブルもすっぽり入る大型入力端子。音場感とメリハリ感を上手にまとめている。高域はピーク成分がなくておとなしい。低域は軽快に鳴ってくる。スケール感も表現がある。
1989年7月のSTEREO誌では、<私のベストワンはこれだ!!>という企画で、5万円以下のスピーカーで一位を獲得しています。
入江潤一郎氏
小型2ウエイの中では最近感心したもののひとつ。前作のD-200は小型2ウエイと言うジャンルを強烈にアピールした。最近急速に機種が増えているが、その中で最近感心したのが本機である。音のヌケとかバランスの良さ、そして穏やかさも備えているサウンドは実に好ましい。
江川三郎氏
旧型のD-200より歪感が減って聴きやすくなった。D-200は私を含めて音楽ファンのグループである<モノーラルの会>のメンバーに好まれているスピーカーである。マークUとなり、同じグループでD-200と比較試聴をした。その結果は音色の変化もさることながら歪感が減ってより聴きやすくなったという評価が得られた。こんなシンプルなスピーカーでもまだまだやり残されたことがあるものだ。木製でしっかりしたスタンドが必要だ。
長岡鉄男氏
ルックス・音質・音場の3点からD-200Uを選んだ。元々評判の良いスピーカーだったが、マークUになってから低域を強化し、高域のキャラクターを抑制したことで、オーソドックスな高品位なサウンドを実現。音場感もよく、ルックスも抜群だ。
藤岡誠氏
ツイーターの振動板がワンランク向上。ウーハーも軽量化して特にバインダーのエポキシを減らしたことで、低域の質感が向上、外観には変化はないが入力端子は大型になって使いやすくなった。旧型に対して全体的に解像度が向上、一皮向けた新しいリバプールだ。
1989年6月のSTEREO誌の新製品紹介のコーナー
藤岡誠氏
音質は大変化。トータルとして解像度は上昇しており、低域方向の伸長も著しく、中低域は肉厚でありながら分解能が高い。中域の固有音も抑えられており、同時にウーハーとツイーターのスムーズなつながりを感じさせる。高域の質感も良好。
1990年6月のSTEREO誌で石田善行氏は以下のようにコメントしています。
コンパクトサイズだから低音には限界があるが、不足感は無い。十分に安定したバランスの良さがポイントで、なかなか明るく伸びやかな音だ。歪みやピーク・ディップを良く抑え込み、綿密で彫りの深さを聴かせる。
このスピーカーは 知人宅でYAMAHA NS-10Mと対決する予定です。さあ どうなるか・・・
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