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D-55 (20センチバックロードホーン)

最終更新日  2006年10月2日

10センチバックロードホーンに続いて 20センチバックロードホーンの代表作(長岡鉄男)D-55を作成した。作成したといっても数年前に作成済みの中古を購入していたのをやっと立ち上げただけである。(あまりの重さに放置していた)

1人での移動は無理。車に乗せるとズシリと車高が下がります。2階に移動するのは大人2人でなんとかOK。 ユニットは208スーパー。

初めはツイーターなしで試聴。CDP-555ESDAU-α707iという組み合わせで試聴。製作から年月が経過しているのでエージングは十分かと思いきや、中音の歪を感じる。208Sも3年以上電気を通していないので逆エージングが進んでいるのか?(そもそもそんな物があるのか?)

パワーも入り 微小入力にも強い。ダイナミックレンジも大きい。音像もフルレンジなので小さめ。しかし低音がでない。簡易的にPCを使って測定してみると、1KHZなどと同レベルで低音が出ているのは100HZまで。それ以降はだら下がりで50HZから下は殆ど再生できていない。高音は10KHZまでは綺麗に再生できているがそれ以降はダラ下がりでスーパーツイーターとスーパーウーハーは必要な感じ。

S-LH5と比較。能率が圧倒的に違うので、切り替えた瞬間は仰け反るほどの音量の違いだが、中音は歪っぽく 低音の量感もD-55の完敗。クラシックとしてはS−LH5のほうが好ましいが、D-55もそれほど前へ張り出してくるような感じでもないので中音の歪を除けば悪くは無い。

とりあえず色々なソースの入ったCDをリピートにセットして3日3晩再生にして放置しておいた。鳴らしこんで音が落ち着いてくればよいが・・・・・

あと外観の劣化も目立つのでパテで補修しておく。


補修中のD-55 茶色いものは段付補修用のパテ


サンダー(電動の紙やすり)で古い塗装面を研磨


細かい塗装の粉が出て この時点で塗装を完全に剥離することは断念。部屋中にこの塗料の粉末が散布されスゴいことになった。
電動ドリルで穴あけをして補強用の木ネジ(ステンレス)を打ち込みます。板厚があるので木ネジは長さ55ミリのものを使用します。電動ドリルはバッテリー式ですが、20本ほど穴あけ+打つ込みをすると電圧が下がって充電が必要になります。


FOSTEXのFE208スーパー

マグネットの大きさはこんな感じ
振動板の直径より、マグネットの直径が大きいというとんでもないユニットです。


保護用のネットをオークションで入手。10センチバックロードホーンでも使用した製品ですが(ハンドメイド)今回は色違いです。


梱包も丁寧・・・というか丁寧すぎ


固定用の糊と補修用の塗料も付属します。


接着中
部分的に接着するだけなので、取り外しも簡単に出来る。重りに使用しているのはテクニクスの5HH10 ツイーター



砂利や鉛を底に設置するつもりは無いので 無垢の板材を36センチ幅にカットして底に階段状に設置した。 勿論音には殆ど影響が無いだろうが・・・・


2005年9月18日

最近のD-55の音ですが、音の歪は感じなくなりました。音が透明で倍音成分の再生も見事。ツイータも接続しましたが5HH10では役不足か?あまりツイーターの存在を感じません。


2005年9月19日

低音について再評価しました。100HZの再生には問題なし(このサイズだから当たり前)、80HZもまずまず。60HZは一応音は出ていますが、もうダメですね。40HZは空振りで殆ど再生できません。

歪は取れましたが、聴いた感じでハイ上がりの印象です。スペアナではどうか判りませんが、かなり1KHZ前後にパワーが偏っている感じです。

エコーの分離とかは見事になりました。S-LH5では再生できないような残音も綺麗に再生できます。でもクラシックなどは渾然一体で再生してくれるS−LH5に対して、D-55は対照的な感じです。


2005年9月24日

サンダーでパテを研磨。ベランダにD-55を移動させて作業した。
塗料は水性の黒色を使用。下地にパテなどあるので濃い色しか不可、simpleに黒を選択した。油性塗料はパテが対応しないそうで却下。別に下駄箱を油性塗料で塗装したがスゴイ匂いで玄関がずっとくさい。水性で正解した。


このあともう一度上塗りをして研磨する予定。


9月28日

クリアは水性のアクリル系を選択。ホームセンターには”ヒノキ”の香り付しか販売しておらず、おかげで作業中は頭痛がするような匂いが部屋に立ち込めた。


上の白い部分はまだクリアが乾燥していないので濁っている


本当は1000番くらいのヤスリがよいのだが、少し湿らせたタオルで磨き込んでみるが、これもダメ。日を改めて1000番の紙ヤスリを購入してくることとした。

クリアは3回以上塗布したが、あまり光沢に関しては効果がない印象。今の時点で思うのがやっぱり大切だったのが下地処理と1回目の塗装ですね。

下地がザラザラだとその後何をしてもダメですね。


10月1日

1000番のヤスリを購入して使用してみたが、それなりには効果があり、触った感じがツルツルになった。しかし見た目にはあまり変化はない。側板などは研磨する元気もないので天板のみ研磨した。


ユニットを再度取り付け中


とりあえずこれで一旦完成とした。


ごらんのように ライブ気味の部屋です。
D-55のきつく聞こえるのも部屋の影響かもしれません。床はコンクリート+ビニルシートだけなので強力。

底板の塗装が床に転写されるのを防止するために 木片で3点支持して浮かしています。

試聴・・・・あんまり変わんねーな。
オレって耳が悪いのかね?

ツイーターのローカットコンデンサーを0.68に変更してみる。
これはガラリと変わった。0.68のほうが俄然良い。

アコースティックギター(押尾コータローや赤崎郁洋)などは D-55が一番良く合う。S-LH5やS-77TWINSDなどは ギターを叩く音がドラムの音のようになる感じで鈍い音楽になる。NS-1000Xも悪くないが、こういった音楽に関してはD-55が一番。自衛隊のCDや生録音の類のCDもD-55が一番だと思うが、逆に駄目なのがクラシックですね。キツイ音で長時間聴くのは苦痛です。

長岡鉄男氏のコメントは以下
予想外にワイドでフラット、超高能率である。軸上3mのf特で、指向性が効いていて、ハイエンドはやや下降気味。そこでツイーターを追加。色々やってみて、コンデンサーは0.47μF、逆相接続、位置はバッフルからホーンの付け根(本体のプレート)まで25ミリというところで決まった。このときのf特は( )のようになった。レンジはメーカー製50〜100万円なみ、能率は6〜12dBたかい。音は実物を聴いてもらう以外に伝えようがない。言葉で伝えようとすると、必ずウソをつけといわれてしまう。なぜってこのスピーカーを聴いたあとは 他のスピーカーを聴く気がしなくなる。D-70をも上回っているのではないかと思う。Dレンジの広さ、押し出し、圧力は比類がない。20センチ一発で40センチ4ウエイを凌ぐ圧倒的大音量再生が可能、一方微小信号にも強く、きわめて繊細で、とげとげしさは全く無い。ユニットが小口径、バッフル面積が小さいので音場感も良い。とにかく何を聴いても音楽が生きている。再生という言葉が生命の復活、蘇りを意味するのであれば、D-55こそ真の再生機であろう。

ツイーターについて
206スーパーはフルレンジであり、ハイエンドも延びているので一応ツイーターなしでも使えるが、不満が出てくるのは判りきっているのでツイーターは必需品と考えたい。問題は使えるツイーターが少ないということだ、ドーム型は能率不足で役に立たない。質の良いホーン型を使いたいが、入手可能なものはフォステクスT500A, T925, FT90H, FT96H, T300A, FT66H, テクニクス5HH10といったツイーターだ。このうちFT96Hは能率がやや不足ではないかと思う。T300Aは高価すぎるし,15Khzまでしか延びていないので、更にスーパーツイーターが必要。また超高能率なのでアッテネーターが必要になる。FT66Hはソフトタッチで206スーパーとの相性はもうひとつ。5HH10はやはりクオリティの面で相性いまいち。T500Aは良いが高すぎる。T925は一発だけ使用するとちょっと冷たい感じがする。能率もやや高め、FT90HはT925の普及版だが、能率は適当、音もFT96Hよりシャープで、T925より暖かみがあり、適当と思われる。今回はFT90Hを使用したが、ツイーターの交換は容易なので好みのツイーターを使うのは一向に構わない。

私の音のコメントはこちらを参照


その後 このD-55は、長野県松本市の方に引き取られていきました。手放した理由は色々あるのですが、やはり大きすぎる・重過ぎますね。普段は保管しておいて気の向いたときに運び出して聴くという使い方も出来ません。その割りにこのスピーカーの得意なジャンルは狭いように思います。つまりオールラウンダーでないスピーカーが、巨大な設置面積を占有している状態が許容できませんでした。また相当な大音量でないと真価を発揮しないようです。通常のスピーカーだと破損を心配するような大音量で鳴らしてこそ、真価を発揮するスピーカーだと思います。私自身をそれほど大音量派でもありませんでしたし、先のスペースも問題もあり処分しました。

運送は ヤマト運輸の家財宅急便を使用しましたが、Bサイズで運搬できました。ただしスピーカーと告げると、かなり嫌がられました。<ビンテージ物じゃないですよね。>とか<簡単な包装しか出来ませんが・・・>とか<どのくらいの価値があるものですか>など色々尋ねられました。結局傷ついたり破損しても、現在市場にあるもので、ある程度の補修が効くスピーカーであること、破損した際は保険の範囲での対応ということで引き受けていただきました。多分ダイヤトーンなどのスピーカーで輸送中の破損が多発して、社内でも問題になっているのでしょう。(ボロンは壊れ易く、メーカー在庫もないので修理が出来ない)


上から筒状のクッション材をズボンと被せられて、あっという間に運ばれていきました。新しいユーザーの元で真価を発揮されることを期待します。

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