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DENON DAP-5500

最終更新日 2009年6月27日


 

1987年(昭和62年)発売。
「新世代のデジタル・プリアンプ。狙いはD/A変換のリファレンス」
「最高級D/A変換を実現。4DAプッシュプル・スーパーリニアコンバーター搭載」
デジタルプリアンプ
DAP-5500
標準価格:200,000円

<以下、DENONホームページより引用:青字部分>

DAP-5500は、本格化するデジタル時代に対応して、デジタルソースが本質的にもっている高いクオリティを100%ピュアに引き出すため、現時点における可能な技術をすべて投入し、開発された新しいタイプのデジタルプリアンプです。
新開発16ビット4D/Aプッシュプル・スーパーリニアコンバーター、デジタル・アナログ部完全分離シャーシ構造、広帯域光伝送.システム、マニアックな2電源トランス・2電源コード方式など、あらゆる技術を駆使して、リファレンス機として誇れる究極の性能を実現したD/Aコンバーター部。
さらにライン入力3系統、バランス入力、無帰還UGIアンプなどを搭載して、デジタル時代のオーディオシステムの発展と、新しい可能性を秘めたニューモデルです。

特長

1. デジタルマルチインターフェース/DAC部

D/A変換回路に、新開発16ビット4D/Aプッシュプル・スーパーリニアコンバーター方式(特許出願中)を採用して、非直線ひずみやノイズを低減し、ダイナミックレンジ97dB以上、SN比110dBを達成。まさにデジタルオーディオの究極ともいえる広ダイナミックレンジ低ひずみ率を実現。

光入力対応のデジタルに入力3系統を装備しCDプレーヤーや、DAT、DBSチューナーなどのデジタル出力をダイレクトに受け、さらにサンプリング周波数を自動的に選別してデジタル信号に復調。

デジタル録音再生やデジタルイコライザーなどに対応してデジタルIN OUT回路を装備

デジタルフィルターは、オーバーサンプリングフィルターをカスケード接続した4倍オーバーサンプリングフィルター採用して、リップル低減と広帯域にわたってイメージスペクトル除去。

デジタル部からアナログ部へは、不要なノイズを遮断する高速光結合アイソレーター採用。

当社独自開発のローパスフィルターC.A.L.P.(Computer Analyzed Linear Phase)を搭載して、超広帯域ノイズを完全にカットしてピュアなアナログ信号に変換。

コンバーター部を独立させて使用できるDAC OUT端子を装備。


2. オーディオ部

特殊4連ボリウムと増幅度『ゼロ』の無帰還UGI(Unity Gain Interface)アンプを搭載して、低ひずみ率(0.002%、20Hz〜20kHz)を達成。音質劣化のないピュアレベルコントロール、さらに低インピーダンス(10Ω)伝送を実現しました。

広帯域フラットアンプ(16.5dB)を搭載していますので、再生系のトータルゲインを補足することができます。(ON-OFF)

バランス型などライン入力3系統、テープ録音再生2系統を装備。

600Ωバランス型出力を装備。


3. 電源部/機構部
ノイズ干渉を排除したデジタル・アナログ完全分離シャーシ構造を採用、デジタルシャーシ部とアナログシャーシ部をアクリル材質のアイソレータで完全に絶縁することにより、デジタル/アナログ間の相互干渉を排除。

電源コードから完全分離した2トランス、2電源回路構成デジタル/オーディオ各セクションの完全分離を徹底するため、ツインパワートランスの搭載により電源部よ完全独立化。デジタル/オーディオの2つの専用電源部を構成し、妨害 雑音のオーディオ回路への干渉を排除しました。

ヘビービューティ&バイプレスシャーシ構造。

キャビネット内が外部の振動に影響されない強固なシャーシ驚異的な振動吸収能力。

新案4個の焼結金属装着フットで構成するHEXロケーション・インシュレーターシステム。

主要規格

■デジタル部

デジタル信号フォーマット
デジタルオーディオインターフェース
入力端子
オプティカル(光)DIGITAL-1:1系統
コアキシャル(同軸)DIGITAL-2,3:0.5Vp-p75Ω
適合プラグ;RCAピン型
対応サンプリング周波数
32kHz、44.1kHz、48kHz
DIGITAL TAPE接続端子(同軸)
IN&OUT 0.5Vp-p75Ω
適合プラグ;RCAピン型
D/A変換方式
4DAプッシュプル・スーパーリニアコンバーター
フィルター
4倍オーバーサンプリング・デジタルフィルター+LC-OFC直線位相(C.A.L.P.)7次・アナログフィルター
周波数特性
2Hz〜20kHz±0.2dB
S/N比
110dB(EIAJ)
ダイナミックレンジ
97dB以上(EIAJ)
全高調波ひずみ率
0.002%以下(EIAJ)
チャンネルセバレーション(1kHz)
100dB以上(EIAJ)
■アナログ部

入力感度・入力インピーダンス
LINE-1・2,TAPE-1・2PB: 1V/150mV・10kΩ 適合プラグ:RCA-3-11C
LINE-3(バランス型): 1V/150mV・10kΩ 適合プラグ:XLR-3-11C
定格出力・出力インピーダンス
PRE OUT:1V/10Ω 適合プラグ:RCAピン型
(バランス型)2V/600Ω 適合プラグ:XLR-3-12C
TAPE REC OUT:入力接続機器の出力条件と同じ
最大出力(PRE OUT)
30V、バランス型15V
周波数特性
1Hz〜300kHz(+0/-3dB)
S/N比
116dB
全高調波ひずみ率(20Hz〜20kHz、出力5V)
0.002%
その他の付属機能
LINE-1(IN)および不平衡PRE OUTには、フロントパネルに並列端子を装備
PRE OUTスイッチ装備
■DACOUT(D/Aコンバーター直後の不平衡アナログ出力端子)

出力電圧(対.CD記録最大レベル)
10kΩ負荷時 2V
出力インピーダンス
470Ω
■一般

電源・消費電力
AC100V 50/60Hz・20W
外形寸法
W434xH133xD380mm(含、フット・つまみ・端子)
重量
13.7kg
付属品
RCAピンコード(ステレオ)x1




電源ケーブルもデジタル/アナログ独立である。
デジタル入力は、光1、同軸2。

バランス入出力が設置されているが、アンプ内部は通常のアンバランス回路で構成されており、
バランス入出力は、通常のRCA入力の前後に+/-のバファを挿入されてサポートされている。
回路が煩雑になるだけで、意味は無い。

しかし回路が煩雑・・・といってしまうと、このアンプ自体も0dBアンプになるので、こんなアンプを使わずに
パワーアンプにダイレクトに入力した方が良いという、実も蓋も無い結論になってしまう。

実際、トーコン機能も無い、フォノイコライザー機能も無い、フラットアンプもバイパスできる・・・となると、本機はDACにボリュームとセレクターを付けたモノと考えれる。


前面にもプリアウトとライン入力がある。


キャビネットは肉厚のあるパネルで構成されており、剛性は非常に高い。


底板もデジタルアナログ別で、6本足である。


4本の脚は非磁性体の焼結合金製で、非常に重い。
この脚だけで、アクセサリーとして売り出せば1万円前後の値が付くのでは?


中央の2本の脚はモールド製。


キャビネット内部は、4分割されて、そこに1枚づつ基盤が設置されている。
左側のデジタルインターフェイス部分はシールドされている。
右側がDAコンバーター部分。


シールド板も厚くて堅牢なものが使用されている。


しかし、無理も無いことであるが、デジタル処理部分の集積化が進んでおらず、
実に大きな基盤が必要とされている。


デジタルインターフェイス系の基盤 (デジタル部分;下側の基盤)
右下が光入力端子。


DAIには定番のソニーCXD1076が使用されています。


これは、デジタル系の電源回路。(デジタル部分;上側の基盤)
下半分の役割は、フロントパネルのインターフェイス系のコントロールかな?


なにこれ?と思って調べてみると
三洋電気製の2-Pole 4-Position Analog Function Switchだった。
三洋電機って半導体部門、当時持ってたの?


えーお待ちかねのDAC基盤。(アナログ部分;下側の基盤)
なんか・・・・殺風景。
右半分はアナログ入力のセレクターが設置されている。


バーブラウンのPCM56Pが4つ使用されています。
左右独立の+/-プッシュプルDACということです。


PCM56Pは日本製で、Kランクのものが使用されています。


こちらはアナログ系の電源回路と、プリアンプ回路。(アナログ部分の上側の基盤)

黒い丸い物体は、U-CON社製のフィルムコンデンサー
右半分は、バランス出力の為の反転回路かな?


純粋なプリアンプ部分はここ。
使われている素子は、2SC2238と2SA968。既に廃盤である。



日本ケミコンのAWD 50V 2200μF


オペアンプを使用した反転回路

 


DENON DCD-1650AR→DAP-5500→M-90aSX-900という接続で試聴。
まずDENON DCD-1650ARからのデジタル出力をDAP-5500に入力して聴いてみたが、十分に良い音である。16ビットDACではあるが、現代でも全く問題ない音質だと思う。光入力と同軸入力であるが、短時間の試聴では、音質に差を見出すことが出来なかった。

つぎにDENON DCD-1650ARのアナログ入力とデジタル入力の差について比較した。双方ともDENON製で同じ4DACであるが、DCD-1650ARのDACはバーブラウン製PCM1702(20ビット)である。結果からいうと、本当に僅かな音の差しかない。解像度やメリハリという点では、DCD-1650ARからのアナログ入力が僅かに際立つが、音楽の質感とか密度とか纏まりは、DAP-5500でのDA変換の方が若干よい。・・・といっても本当に僅かな差であり、特に気にする程の物ではない。なおDAP-5500はフラットアンプをバイパスさせることが出来、その場合増幅度ゼロのプリアンプとして使用できる。またDAC-OUTもあるので、純粋なDACとして使用することも出来る。

音の傾向としては、DCD-1650ARからのアナログ入力は若干ヤング向きで、私はDAP-5500のDACを使用した音の方が好みである。ただそのために、このアンプを所有するのは、中古で数万円で入手できるとしても、実に馬鹿げた投資で、意味がないように思える。差が少なすぎるからだ。

フラットアンプをバイパスさせずに(ゲイン+16.5dB)、パワーアンプに接続すると、当然音が大きくなり、ボリュームは絞らざる得なくなる。エネルギー感は増すが、歪感というか刺激感は増える印象がある。私はフラットアップを通さない音の方が、そっけなくて好きだ。

なおフロントパネルにあるLINE-1は、リアパネルにあるLINE-1と同じもので、双方から音楽信号を入力すると、スピーカーからは、両方が混じって出力される。



このボタンでライン入力とデジタル入力の切り替えが出来る。
この機種は、入力切替時のミューティング時間が長いですね・・・。切り替えても直ぐに音が出てきません。

オーディオ解体新書>DENON DAP-5500