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DENON DCD-1650AR

最終更新日 2009年1月20日

アナログ信号に迫る波形再現テクノロジー [ALPHAプロセッサー] を搭載
リアル20ビットΛ(ラムダ)S.L.C.搭載
ハイブリッド・ローダー採用の高剛性メカ
振動を抑制する2重構造のボトムカバーとトップカバー
DUALトランスを採用

周波数特性 / 2Hz〜20kHz
SN比 / 118dB
ダイナミックレンジ / 100dB
全高調波歪率 / 0.0018% (1kHz)
消費電力 / 20W、スタンバイ時約4W
寸法 / W434 x H135 x D340mm
質量 / 11.9kg
希望小売価格 99,000円(税別)

前モデル1650AL(1995年)をマイナーチェンジしたもので、1997年発売された。

1650(1990年)→1650GL(1991年)→1650AL(1995年)→1650AR(1997年)→1650AZ(1999年)→1650SR(2002年)→1650AE(2006年現在)という順序である。

DENONのCDは、16ビット4倍オーバーサンプリングの時代から人気がある。マルチビットDACのゼロクロス歪をスーパーリニアコンバーターという手法で解決し、SONY、YAMAHA、KENWOOD、ビクター、パイオニアなどと主に中級機クラスと中心にシュアを争った。

個人的な見解で申し訳ないが、音がよいのは勿論であるが、内部を見て惚れ惚れとするような機器であって欲しいと思っている。いままでのDENONのCDはその点は今ひとつ。


右のボタンは、押すたびに表示が暗くなるというボタン


前側のボタンは必要最小限。サーチボタンくらいは付けて欲しいところ。私はリモコンを好まず、殆ど使用しない。


天板
プレス加工品だが、リブが2本入り、中央にはもう一枚裏から鉄板を張り合わせている。
真ん中にブチルゴムが張ってあるが、これは前オーナーの仕業かもしれない。既に硬化しており、綺麗に剥がすことは困難。これが貼っていなければ、ここに御影石のプレートをエポキシ樹脂で貼る予定だった。残念。


底板



ルックスは良いが、中は空洞のプラスチック製で軽量。中身に樹脂やシリコンを充填しようにも上下に穴が開いており、ちょっと手間がかかる。


底板を外すと、もう一枚底板がある。


それを外すと、やっとシャシーの底が露出する。3重底である。


メンテナンスしやすいように、基板にあわせて切抜きがある。


酸化とショート予防のコーティーングで文字が判別困難
こちらはテクニクス(松下)製MN662720RB
データーシートが入手できなかったが、CDプレーヤー用の信号処理プロセッサだと思う
保守部品としてメーカーにもまだ在庫があるようだ(2006年現在)。


テクニクス(松下)製
AN8389S
4チャンネル リニアドライバー
ピックアップの駆動用アクチュエーターのコントロールをしている。


こちらはパナソニック(松下)製 AN8805SB
Three-Beam Method Head Amplifier IC for CD Player


これはDENON製
2622172107
6433724D16F
カスタムLSIなので、詳細不明。


これもDENONカスタムチップ
シャシーの裏側なので品番などは直視出来ない。


内部の構造。
ガラ〜〜ンとして寂しい。6〜7万円のCDのようである。


ドライブメカは、銅メッキ鋼板のカバーが被せてある。
ビス6本で固定されている。 まさに<被せてあるだけ>なので、意味は不明。
ドライブ部分を密閉するわけでもないし、ダンプするわけでもない。何の効果があるのだろうか?


カバーを取るとドライブ本体が現れる。
トレイは金属と樹脂のハイブリッド構造で、コラーゲン入りの防振塗料で塗装されている。
SVHローダーと呼ばれ、1650ALや1650AZにも同じものが使用されている。


しかしドライブメカのフレームはご覧のように単なるプラスチックである。


ピックアップはシャープ製で、ピックアップの移動もリニアモーターでなく、ギヤドライブである。奥のほうにスピンドルシャフトが見えるが、格別太いようには見えない。ここの構造をはっきり見るためには、フロントパネルを取り外す必要があり、時間がかかるので今回は取り外さなかった。ピックアップとモーターはスプリングでフローティングされている。


本体 向かって左手側は電源回路である。
デジタル/アナログ独立トランス


トランスはこの銅プレートを介してシャシーに固定されている。


トランス本体は、樹脂で埋没されている。


本体 左奥の電源回路
シルミックコンデンサーが多用されている。
右側がアナログ系の電源回路、左側がデジタル系の電源回路である。


ドライブ後方の基板
手前にはアナログ回路が見える。
空きパターンが多く見られ、実装されていない電解コンデンサーやフィルムコンデンサーが沢山あるようだ。


フィルムコンデンサーは U-CON社製


こうやって見ると、デュークスリートで組んだ回路が存在しないことに気付く


アナログ回路
オペアンプを多用している。
緑のコンデンサーはSONYのCDP-555ESACDP-555ESJでも使われている製品。
アナログ出力端子のなんと情けないことか・・・・。
10万円の製品なんだからこの辺はしっかりしたパーツを使って欲しい。また基板の裏を見ると判るのだが、アナログ出力の位置は不適切で、この位置にあるが為に、随分細くて長いパターンの経路をアナログ出力が通る羽目になっている。スキルがある方は端子を交換して、シールド線などで直接結線すると、音質改善になると思う。


ANALOG DEVICES製 T806-OP275G
ANALOG DEVICES製 T727-OP275G
フィリップス製 NE 5532AN
NEC製 C4570Cなどのオペアンプが使用されている。


4個並んだバーブラウン製PCM1702 DAコンバーター
(なんと韓国製)

面白いことに外側の2つは選別品のKランクが使用され、内側の2つはNランクが使用されている。
偶然か?使い分けている?のかは不明。皆さんの1650ARはどうなっていますか?

※PCM1702
BiCMOS構造の20ビットD/Aコンバーター
サイン・マグニチュード方式の採用によって、ゼロクロス歪を根本的になくしたバーブラウン製チップで、当時は低歪率、高S/N比、ワイドダイナミックレンジを有しており、特に微小信号の再現性は他のDACの追従を許しませんでした。なお電流出力チップだったので、外部にオペアンプなどによるI/V変換回路が必要です。後継チップはPCM1704で、概略は同じですが1704は24ビット動作になっています。自作DACでも良く使用されます。複数個の1702/1704を使用してバランス接続やパラレル接続することは、比較的簡単な高音質化テクニックでバーブラン社も専用の書類を配布して推奨しているようですが、亀の子状態で、複数のチップを垂直方向に積み上げる行為は、絶対にやめてくださいということでした。内部バイアスポイントが各DACで異なっており、リファレンス、サーボ、BPOの端子を共有接続することは出来無いというのがその理由のようです。1チップで1チャンネルしか出力できないので、ステレオの場合最低2つ必要。

DENONのスーパーリニアコンバーターは、ゼロポイントを挟んだ(+)領域と(-)領域にDACアウトプットをシフトさせて、DA変換後に信号をミックスして歪分をキャンセルする変形4DAC方式なので、PCM1702も最低4つ必要になる。
詳しいことはDCD-1630Gのページを見てください。


コンデンサーの間の7905Aというのは、JRC性の3端子レギュレター


サービスモードというボタンがある。
押すとどうなるのか・・・。


フロントパネル裏のヘッドホン端子回路
JRC製の4556ADと、ローム製のBA1524Bというオペアンプが使用されている。

 


デジタル出力端子裏
おなじみの74HCシリーズが使用されている。
赤いコンデンサーはTA-F50ESでも使用されていたエルナーのStargetコンデンサーであろう。


この写真中央下と右下端のように、取り付けビスが省略されている箇所が沢山ある。


コンデンサーの1本、ネジの1本までコスト削減の努力が見られる。
こういうのを見ると萎えるなあ。
省略されているビスは5箇所(全てM3 10mm程度)、コンデンサーは電解がなんと14箇所、フィルムが2箇所である。特にDAC周りで8箇所のコンデンサーが省略されているのは、影響が無いとは言えないだろう。



DAC周りで省略されているコンデンサー(8個)
印刷されているパターン見ると、それほど大容量ではないようだ。

後継機種は1650AZで、外観は同じで内部も似ているが、鋳物トランスベースとリアル24bit ラムダS.L.Cが投入されている。音は少しマイルドに変化したとされている。


長岡鉄男氏のダイナミックテスト 1997年部門賞
DCD-S10U(19万円)を一部上回る猛烈な物量、普通に聴けばS10Uとの違いは判らない?文句なしのハイCP機だ。
このシリーズは歴史が長いが、マイナーチェンジではなく、その都度大きな変更があった。1650Gは89800円で11キロ。1650GLは99800円で12.3キロ、中身もワンランクアップ。脚は焼結合金で275グラムと超ド級。1650ALは99800円でセンターメカに変更。パネルデザインも一新されたが10.2キロと軽量級。1650ARは外見こそ1650ALに似ているが中身は一新されている。重量も12.2キロと増加。1650GLのサイドウッドパネルと焼結合金の脚を取り付けたら、1650ARは13.7キロになる計算だ。ボンネットは制動鋼板を張り合わせて2350グラムとヘビー級。12本のネジでている。DCD-S10Uも同等のボンネットだが、取り付けネジは8本だけなので、本機のほうが強度は大きい。ボンネットを外しても更にサイドパネルがあるので、キャビネットの強度は抜群である。脚はDCD-735と共通の15グラムのモールド製。ACコードは3ピンの着脱式で丸型の1.25スクエアのキャブタイヤコード。出力はアナログが固定/可変各1、デジタルが同軸/光各1。
 電源トランスはケース入りで、ケースのサイズは70×70×60のものが2つ。フィルターコンデンサーは50V3300μF(直径3センチ×5センチ)が2本。この辺はDCD-S10Uと同じであり、消費電力も同じ20Wである。
 メカは銅メッキカバー付きで電磁波、音圧を遮断。基板はブラックの上質なもので驚くほど強固に取り付けられており、押したくらいではビクともしない。基板上の電解コンデンサーの数も1650ALより増えている。1650ALとは明らかに違い、S10Uに近い設計のようだ。ALPHAプロセッサー、リアル20ビット・スーパーリニアコンバーターという基本は共通。スペックも1650ALと1650ARとS10Uは全て同じである。
  音は良くなった。1650ALよりS10Uに近い。むしろ、その点でS10Uに及ばないか探すという感じになる。普通のオーディオシステムで、普通の音量で再生していると、S10Uとの違いは判らないのではないかと思う。馬力がありハイスピード、ワイドレンジで、解像度が高く、音場も広い。それでもS10Uと比較すると、コクとか艶とかいった、いわく言い難い部分で違いが出るようだ。文句なしのハイCP機だ。

1997年12月のステレオ誌にて、ベストハイコンポ(7万円以上10万円未満のCDプレーヤー)で1位を獲得しています。2位はSONYのCDP-XA50ES、3位はパイオニアのPD-HS7とビクターのXL-V1A、4位はマランツのCD-17Dでした。


ビスはホームセンターで同等品を購入して取り付けた。10本で180円だった。


省略されているコンデンサーを取り付け中
(足をカットする前)無鉛半田を使用した。


電源基板のみ、空きパターンに電解
コンデンサー(シルミックU;写真一番左)を取り付けた。すぐ右横の50V3300μFのシルミックコンデンサーと並列に入っているので、効果は体感できないだろう。

一番右側のコンデンサーはシルミックUαという品番が使用されている。カスタム品であろうか?


50V470μF、シルミックUα
外径やサイズは通常のシルミックUと同じ。

その他のコンデンサー未装着部分(アナログ部分とDAC部分)は、慎重な判断が必要。パターンを読んで回路を理解する努力が必要なので、私には出来そうも無い。


こんな小細工もした。
ここは電源ケーブルからの線材が接続されるところで、ここからフロントパネルのスイッチや電源トランスに配線が分かれる場所。いわばこのCDの中で一番沢山電力が流れるところである。


電源回路は、裏側から8個のシルミックUコンデンサーを増設して強化した。とても不細工なのは御容赦ください。


底板の2枚目には、このようにビニルテープを貼ってから、3枚目の底板をつけるようにした。この方が制振が効くが、これも不細工な小細工です。まあ器用な方はもっとスマートにやってください。


改造後に本格的に試聴。
うーん CDP-555ESAと比較しても驚くような差はありませんね。
オークションでは高値で取引されているので期待してたんだけど、
その意味で残念。

 

詳しくはこちらを参照

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