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KENWOOD LS-770A

最終更新日  2006年10月19日

3WAYの小型バフレフ型スピーカー
高さ52cm、幅28cm、奥行き26cm 重量11.5s 39800円
22センチウーハー
7.5センチセミドーム型
2.5センチハードドーム型

クロスオーバー 900 4000Hz
出力音圧レベル 92dB

ONKYO D-77が発売された頃、 つまり59800円(片方)スピーカーの大激戦が始まった時代の製品である。上位機種として LS-990A(59800円)LS-880A(49800円)があった。LS-770AはLS-880Aの縮小版という側面もあるが、ウーハーを中心に違う側面もある。

以下は別冊FMファン 47号(1985年 秋)より抜粋要約したもの

LS-300のAV対応グレードアップモデルで外寸法は同じ。デザインはそっくりだが中身はかなり違う。ユニットは全部新開発である。実測重量11.2キロ。

バッフルは20ミリ厚で補強材はなし。裏板にバッフルの抜き板が貼り付けられている。吸音材の使い方は変わっており、ユニット側の側面の下半分と底板にフェルトを貼り、上の方にはフェルトをまいて団子のようにしたものを2つ 左右に取り付けてある。落ちないように三面に接着してあるのだろう。

パイプダクトによるバスレフだがパイプ内部はフェルト張りになっており、高音の漏れや共振を抑えている。入力端子はワンタッチ式だが割りと太いコードでも使用できる。

ウーハーはダイカストフレームで1.7キロ。22センチ。クロスカーボンとパルプをエポキシ樹脂でプレスした3層構造の振動板を採用。ダンパーを2枚使用してダンパーの非直線的減衰特性を是正するクラスAサスペンションを採用。マグネットは一般的なキャンセルマグネットではなく、直径80ミリ厚さ13ミリのマグネットを2枚使用しそれぞれ反発する方向で取り付けられていました。ボイスコイルも2つありそれぞれ逆方向に巻かれていました。つまり独立した前後の2つの磁気回路をもっていたのです。振動板の駆動力は2倍近くになりますが、オーバーシュートしてコーンが前方に飛び出すと後ろのボイスコイルが前の磁気回路のギャップに近づきブレーキがかかり、逆にコーンが引っ込みすぎてボイスコイルがそこあたりしそうになると前のボイスコイルが後ろの磁気回路のギャップに近づきブレーキがかかる仕組みになっていました。

スコーカーはドームとコーンの複合型で1.15キロ。ドーム部分はイオンプレーティングチタンと呼ばれ、チタンの振動板の上に窒化チタンを蒸着させたものでした。プラスチックのフレームに1ミリのアルミ製化粧板を貼ったもの。マグネットは直径90ミリ×15ミリ厚と直径65ミリ×9ミリの2枚重ね、これは普通のキャンセルマグネット形式である。バックキャビティはユニットとは独立してあり、バッフル一体型で厚手の紙パイプと15ミリのパーチボードによる丈夫なものである。

ツイーターは650gで振動板もスコーカーと同じ物質の振動板を採用していた。確かツイーターにもエッジを2枚使用して非直線性を改善するクラスAサスペンションが採用されていたと思う。プラスチックのフレームにアルミ製1ミリ厚の化粧板つき。マグネットは直径75ミリ×10ミリ厚と直径65ミリ×9ミリの2枚重ね

ネットワークは 電解コンデンサーを使用したものが、3箇所に分散配置されている。この頃のケンウッドのスピーカーのネットワークにはフィルムコンデンサーは使用されていないのが特徴。コイル5個、電解コンデンサー6個

私が最初に購入した(してもらった)スピーカー
音はやや明るめで張り出すような感じ。透明感はあるが、少しキャラクターも感じた。ウーハーはWボイスコイルのおかげでストロークを長く取ることが出来、このサイズとしては比較的低音のパンチ力を感じたと思うが、このサイズでバフレフ型なので超低音は無理。割と爽やか系のスピーカーです。いわゆるケンウッドサウンドで薄化粧をしたやや淡白な音ですが このモデルについてはエントリーモデルということもありやや明るめの音だったと記憶しています。私が最初に購入したスピーカーです。


クラスAサスペンションの構造と効果

別冊FMファン 47号(1985年 秋)に長岡鉄男氏のコメントが掲載されている。

f特は1mでにもややハイ上がりだが、なだらかな特性。リスリングポジションではややハイ落ちだがローエンドまでのバランスが取れており、聴感上もバランスが良い。スコーカー・ツイーターはLS−330より明るく繊細に切れ込む感じが出てきたのはバッフルの強度の向上とサブマグネットの効果か?。梵鐘は無理で、魅入られた風景もイマイチだが、そのほかのほとんどのソースで水準以上のパフォーマンスを示した。ボーカルは音像が小さく声も素直でニュアンスも良く出る。どちらかというとエネルギー感より繊細感に力を入れた音作り。音像は小さく音場は広い。ソースによってはハイエンドに硬さを感じるときもあるが、これはハードドームのエージングで取れるはずだ。ウーハーのストロークも大きく取れているので、低音の大入力時にも強いが、エネルギッシュでダイナミックな低音とまではいかない。

ということです。

 

このモデルは後のLS-11ESなどに受け継がれた。

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