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KENWOOD LS-X9

2006年3月12日 更新

1本52000円
フロア型・防磁式
使用ユニット
スーパーウーハー;16センチ×2
スコーカー;16センチ×1(フルレンジとして使用???※後述)
ツイーター;2.5センチ
再生周波数域 29-45KHz
クロスオーバー 150/9kHz
インピーダンス 6Ω
228W×912H×378D 重さ26.5キロ
1988-1989年あたりの発売。正面からみると単なるトールボーイ2ウエイだが、実はとんでもなく手の込んだ、金のかかったスピーカーである。

蛇足であるが、似たようなスピーカーでLS-V9という製品が、ほぼ同時期に発売されている。詳細は不明だが、小型2ウエイスピーカー+分離型スーパーウーハーという製品。2ウエイスピーカーの部分はこのLS-X9そっくりである。おそらく同じユニットを使用した製品であろう。スーパーウーハー部分はLR共通の一体式で10cm口径のユニットが使用されていた。双方ともLS-M7(65000円×2)と同時期の製品である。つまり同時期に3つのやや形態は異なるにしても同じ価格帯にスピーカーを発売していたのである。



ツイーターは、浅いホーンがついている。詳細は資料は無いが、LS-G5000で開発・採用された球面波ホーンであろう。球面波ホーンについてはLS-G5000のページを参照のこと。

振動板はダークメタリック色で、これまたLS-G5000で採用されたクリスタルダイヤモンド振動板である。マグネットはアルニコがおごられている。1本5万円のスピーカーとしては異例である。確認したわけではないが、おそらくダイアトーンでいうDUD(振動板とボビンを一体化して振動板に直接ボイスコイルを巻く構造)・DM構造(フロントプレートとがそのままトッププレートをかねる構造)も採用されていると思われる。(LS-G5000と同じ)


ウーハー(に見える)ユニットは、16センチコーン型
振動板にはカーボン繊維とダイニーマ繊維を編んだクロスダイニーマを採用している。カーボン振動板の導入初期にあったようなモッサリして重そうな振動板ではない。ダオニーマというのは、東洋紡が開発した超高強力ポリエチレン繊維で、同じ重さで比較するとピアノ線の約8倍の強さをもち、ガラス繊維・アラミド繊維・カーボン繊維より強い引っ張り強度をもつ繊維です。(カーボンの約2倍、アラミド繊維の1.5倍の強度)しかも音響材料として重要な振動減衰特性も優れた値を示しています。原料はポリエチレンですが、非常に長い分子のポリエチレンポリマーを使用し、それを縦方向に強く引っ張ることによって、ポリマーの繊維を伸びきった状態で整列させて製造されます。高性能ロープや超伝導コイルなどに使用されるそうです。残念ながら、2006年現在ケンウッドからはこれを使用したスピーカーはすでに発売されていません。

磁気回路はツイーターと同じくアルニコが使用されています。ボイルコイルには角型断面のアルミ腺が採用され、ボビンに隙間無く巻かれている。なおこのユニットはバッフル面から少し落とし込んだ場所に固定されている。理由は不明。またユニット周囲には、プラスチック製?樹脂製?のシートが貼られている。おそらくバッフル面からの不要放射を抑制するためであろう。

 


スピーカー下半分は、いわゆるスーパーウーハーになっている。低音はこのスリットから放出される。途中で180度折り曲げられており、内部の中音〜高音が漏れないようになっている。スーパーウーハーのユニットには、ハイカットのネットワークは使用されておらず、まったくのスルーで接続されている。(後述)


リヤ上部にバフレフポートがあるが、これは下部のスーパーウーハーとは無関係。
上部の16センチクロスダイニーマ振動板ユニットのためのポートである。
見ての通り16センチユニットにしては直径が大きく、また長さも2-3センチしかない。
事実上息抜きと低音カットのためのポートである。


端子は下部に設置、バイワイヤリングである。使い勝手はかなり最低。個人的には2度と接続作業をしたくないので、スピーカーケーブルは継ぎっぱなしにしている。本来なら上下の端子を連結するプレートがあるはずだと思うが、入手した製品には付属していなかった。裏板は木ネジで固定されており脱着可能だが、繰り返し脱着しているとネジがバカになるので要注意。スピーカーの外装はMDFという木の粉末を圧縮して形成された木材で構成されているので、木ネジは効き難い。


ネットは上部のみカバーする。


底板はS-77WIN SDのようにハカマ状にはなっていない。
20ミリ+10ミリの合計30ミリ(MDF製)


前述のポート
裏板は20ミリのMDF。ポートの長さは裏板の厚み+αしかない。


ネットワークは、端子裏に接着されている。
これはあまり良くない。端子板はプラスチック製で振動の影響を受けやすい。できれば他の場所に、しっかりした木製のベースに乗せて移設したほうが良いだろう。下のほうに見える黒い物体は0.18mHのコイルで、16センチクロスダイニーマユニットに使用されている。つまり-6dBのハイカットである。16センチクロスダイニーマユニットがスルーで使用されていると説明していた評論家が居たが、これを見る限りそうではないようだ。

ツイーターは、2つの抵抗で、出力を調節し、ローカットは電解コンデンサー+フィルムコンデンサーを並列に接続して-6dBで成されている。ケンウッドは長年フィルムコンデンサーを使用しないネットワークを多用したが、このフィルムコンデンサーが前ユーザーの手によって後付されたものではないとしたら、方針が変わってしまったのだろうか?電解コンデンサーは日本ケミコンのAXF 1μFが使用されている。勿論バイポーラーである。


ネットワークは こんな感じ
フィルムコンデンサーの容量は P363Jとかいてあったので、各自調べてね。0.63μFかな?

 


スーパーウーハーユニット
15ミリのインナーバッフルに各4本の木ねじで固定されている。
下部ボックスには、 吸音材は皆無に等しい。
真ん中にはポートが設けられており、ポートには薄い吸音材で蓋がされている。
さてこのポート・・・・実は下記のような構造になっている。

 

実際はスーパーウーハーのフロント側の音の出口は横を向いた構造になっているのだが、構造を判りやすくするために、縱にして表示した。

これを見て判るように2つのスーパーウーハーは同一動作ではなく、スタガードになっている。下側は、ある意味ダブルバフレフに近い動作といえるかもしれない。

先にも書いたが、板の厚みは下記のとおり
天板20ミリ
側板20ミリ
フロント25ミリ
底板20+10ミリ
上下の仕切り20ミリ
インナーバッフル15ミリ

下部ボックスの前側、
上下の仕切りも真ん中には入っていない。
下側が30センチ、
上側が25センチとなっている。

補強材はないが、インナーバッフルなどの為にかなり頑丈なキャビネットになっている。

非常に複雑な構造。計算で出来るような代物ではなく、相当数の試作品を作ってカットアンドトライで追い込んで作ったものであろう。

故 長岡鉄男氏好みの構造ですが、音は同氏の好みではありません。



 

 


スーパーウーハーユニット
16センチということになっているが、ストロークを多くとるために幅広エッジを採用しており、振動板の正味の直径は12センチである。素材は発泡ウレタン(?)のようなものでコーン型振動板にふたをした印象のもの。このユニットのエッジはウレタン製なので、保管状況によってはボロボロになっている製品もあるだろう.外から見えないので、確認するのは大変.ある程度もろくなっているようなら、あらかじめ他の素材のエッジに交換してしまった方が良いだろう.


フレームはプレスフレーム
したから見ると本来のコーン型振動板が見える。触った感じはパルプ。
磁気回路の詳細は外見からは不明。

 


上側のボックス内部は、吸音材たっぷり

 


吸音材を押しのけると、非常に頑丈なダイカストフレームのユニットが見える。
バッフルの裏側からネジ4本で取り付け。アルニコマグネット・壷型磁気回路採用

 


ツイーターに至っては、さらに観察し難い。
プレスフレームだが、かなり厚みのあるものが使用されている。
同じく内側から4本の木ねじで固定。アルニコマグネット・壷型磁気回路採用

 


スーパーウーハーユニットを取り外した穴
インナーバッフルは15ミリ厚
穴の向こうに、フロントバッフルに固定されている折り曲げダクトが見える。
共振防止の為、スポンジが表面に貼られている。

 


試聴風景
スピーカー間隔が同じになるように配置して聴いた。


サイズはS-77TWIN SDよりひとまわり小さめ、しかし重量は、それほど変わらない。

音質に関するコメントはこちらを参照

総じて言うと、かなり大人しい音のスピーカーで、いやみの無いスムーズな音色。このスピーカーは物量投入型であり、剛性の低いキャビネットと非力なユニットを使ってそういった音作りをしている製品とは音の純度が違う印象がある。

しかし雷の音・大砲の音・自衛隊の爆音 などという源音追求派のサウンドマニアにとっては、キャラクターが大人しすぎて物足りない面もあるだろう。 素材としては非常によい製品なので、その場合、ツイーターの固定アットネーターの見直し(抵抗の数値変更)や電解コンデンサー→フィルムコンデンサーに交換、上部ボックスの吸音材を半分程度に減らす、などで相当音が変わると思う。興味のある方はトライしてみてください。

 

1989年7月のステレオ誌に江川三郎氏のコメントがある。
一見流行のトールボーイタイプであるが、この中身には評価されるべき技術が込められている。価格が安いほうに属するからまさかと思われる人が居るだろうが、まず聴いてみることだ。まず正面にみえる16センチコーン型ユニットはネットワークなしのフルレンジとして動作している(※間違いです)。ツイーターはコイルなしのコンデンサーのみのネットワークで接続されている。スーパーウーハーは2つのユニットが使用されているが、これまたネットワークなしで鳴っている。ではその高音域はどう処理しているかというと低音用フロントホーンが折り曲げ式で、このホーンの中でアコースティック式に高音を減衰させるという方式だ。つまりのこのSystemはネットワークという必要悪を極力少なくして。そこから発生する歪を抑える方式だ。今までの3ウエイのように硬い音はしない。それに慣れた人たちには逆に物足りない音に聞こえるだろう。滑らかな音の響きは、アコースティックな雰囲気を良く捉えている。

1990年11月のステレオ誌に斉藤宏嗣氏のコメントがあった。
トールボーイタイプのスピーカーシステムとして同社の製品群の中でもユニークな存在である。AVユーズを意識した構造で、大型プロジェクターの横に設置すると、映像と良くmatchするだろう。メリハリの効いた歯切れの良いサウンドで華やか。

 

 

 

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