オーディオ解体新書>YAMAHA NS-1000X
YAMAHA NS-1000X最終更新日 2010年6月29日 |
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NS-1000Mを改良して1982年に発売されたモデル。改良といってもNS-1000Mと長期間併売されたので継承モデルというより別のモデルというべきか。 30センチコーン型 427W×695H×335D 42キロ
ユニットについて
なお YAMAHA 電気音響製品修理受付センター 大場様より、以下のようなご伝言も頂いております。 平素はヤマハ製品に格別のご高配を賜り誠にありがとうございます。スピーカーユニットの在庫状況ですが「ツイーター」「スコーカー」 「ウーファー」の各ユニットは申し訳ございませんが、在庫切れと
なっております。 ・・・・・・・・・ということです。
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重さは4.8キロとウルトラベビー級。比較するとLS-770Aのウーハーの2.5倍くらいの重量がある。フレーム厚みも10ミリありゴージャス。マグネットは直径156ミリ×25ミリ厚と巨大。小型のメタルバックキャビティつき
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おそらくダイアトーンの採用していたアラミドハニカムスキンのウーハーとともに かなり重い部類に属する振動板であろう。良くも悪くもこのスピーカーの性格を決定付けているユニット
ユニットの固定には すべて鬼眼ナットが使用されています。
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キャビネットについて
バッフルは25ミリ厚
コーナーには隅木があり、更に三角柱の補強材が随所に使用されている。
この時点で全身が痒くなり 作業中断。
ネットワークについて
スコーカーに直列で入る6個並列接続のMPコンデンサーは圧巻。しかし吸音材の件もそうだが、やはり設計が少し古いという感じはぬぐえない。やっぱり1980年代のスピーカーなのだ。ちなみにツイーターのローカットとスコーカーのハイカットは、NS-1000M, NS-1000X, FX-3,とすべて同じである。おそらくNS-2000とも同じであろう。 またこのスピーカーに限ったことではないが、ネットワーク回路の配線は、CDプレーヤーに使われるジャンパー線程度の細いものが使用されている(特にスコーカー)。またコイルも極細の線を使用したものが使われている。スピーカー端子からネットワーク、ネットワークからアトネーターやユニットまでは、日立製の16AWGのOFCケーブルが使用されている。 ウーハーのコイルは、5.0 mH、ユニットは6Ω、ネットワークは12dB/OCTなので、ウーハーのカットオフ周波数は270Hzとなる。
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音質について音は ウーハーのクソ重い振動板の為 並みのアンプでは低音が出ないといわれますが、そんなことはありません。スケールの大きながっしりした音を聞かせてくれます。非常にバランスのよい音で明るすぎず暗過ぎず、前に出るわけでもなく後ろに展開するわけでもない・・・・。甘口でもドライでもない・・・・。スカッと爽快でクリアな音です。アダルトなウオームな音は出ません。 剛性の高いキャビネットだけあって余分な音は出ず音場も広く感じます。重さは大人1人でsettingするのにぎりぎりの重量。一応持ち上げることは出来るが5メートル以上は動かせない。(D-55は大人1人では持ち上げることも不可能) 以上のように 物量投入型のスピーカーですが、現代の目でみると、今一歩 煮詰めというか配慮が足りない部分 大雑把な部分があるように思います。外観ではウーハーのボルトが4本と少なく不十分なように思います。NS-2000では8本、NSX-10000では12本でした。また内部構造では大量のグラスウールが使用されていますが、これについても もう少し検討の余地があるように思い得ます。ネットワークも1箇所に集中配置するのではなく、3箇所に分散すべきだと思います。スコーカーのバックキャビティーも、安易なプレス製で、この辺も改善の余地があります。内部の吸音材もこれまたグラスウールが安易に使用されています。確かに強力なユニット・強力なキャビネットと、このスピーカーに投入されたコストは感じ取ることが出来ますが、それだけに残念に思います。ダイアトーンのDS-10000のように・・・とは申しませんが、ああいった形での煮詰めがあれば もっとすばらしい音が出ていたでしょう。ただし1980年代のスピーカーとしては悪くないと思いますし、現代でもこれだけの内容の製品を30万円で作れるはずもありません。 オーディオ評論家の小林 貢氏は 1986年に以下の様なコメントがありました。 もしNS-1000Mにほれ込んでいるなら敢えて1000Xにすることなく、スタンドの強化やウーハーユニットの増し締め、更には低域に力のあるアンプを与えるなどで対処すれば、もうしばらく現役を続けさせてやることが出来る筈だ。だが古いものから最新のソースまで十分満足させてくれる音で楽しもうとするなら1000Xに分がることは否めない。NS-1000Mがどこまでロングセラーを続けるか成り行きを見守りたい。 また長岡鉄男氏は ボーカルも明快で鳥の歌の定位も確か。タイアトーンのDS-2000と良い勝負だが、小音量の繊細感はDS-2000、大音量の厚み、エネルギー感、切れ込みはNS-1000X。音場の雰囲気はどちらも良いが,1000Xは梵鐘が山々にこだまする雄大な雰囲気に強く、DS-2000はソロ・バイオリンのエコーがやみに消えていくといった繊細な雰囲気に強い。 1988年11月のステレオ誌では ---蛇足--- 上位機種のNS-2000は スピーカー4隅に柱状の木材を使用してラウンドバッフルを構成しています。サウンドはNS-1000Xより やや穏やかな音調だったと記憶しております。ウーハーのエッジはウレタンですので自然に崩壊します。定期的に交換しましょう。1988年11月のステレオ誌では神崎一雄氏が以下のようなコメントを残しています。 低音の感じもNS-1000Xとかなり異なっているようですね。 NSX-10000(1本40万円)の批評もありました。私はこのスピーカーは観たことはありませんが、ピアノの加工技術を生かして 板をラウンドバッフルに合わせて曲げるという(削るのではない)凝った製法で作られたキャビネットを採用しています。板にストレスがかかると思うのですが、音は良かったのでしょうか? 入江順一郎氏は1988年11月のステレオ誌で以下のようにコメントされています。 ・・・・・・・・・・・率直な批評です。 NS-1000Mについては あちこちに批評があるので割愛します。まだ使用されている方も多いでしょう。オークションでも活発に取引されています。 FX−3は 現在所持されている方は 非常に稀でしょう。キャビネットも大きくバスレフ型ですので、ややタッブリしたゆとりのある音のようです。 ---ベリリウム振動板について--- 某所にヤマハの技術者の取材特集がありました。 ヤマハがスピーカーに参入した頃は、後発だったのでどうしてもテクノロジーだとか、使っている素材のアピールが必要だったのです。そこで、ベリリウムに目を付けたのですが、ベリリウムを使えばすべてにおいて音がいいわけでもありませんでした。 メーカーなりの使いこなしの幅が、ベリリウムは狭いのです。ベリリウムだと成形方法が、真空蒸着しか選べないし、厚膜にすることもできません。その条件のなかでしか、性能が発揮できないのです。一方、アルミニウムは、JIS規格のなかでもたくさんの種類がありますし、加工もしやすいので、ノウハウを蓄積できますし、自分たちが狙う音を見つけやすいメリットがあります。 ・・・・ということで、ヤマハ自体がベリリウム振動板を見限ったようなことが書いてあります。
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