オーディオ解体新書>NS-1000X 改造 その1

 

NS-1000X 改造

最終更新日  2006年6月11日

NS-1000Xを改造することにした。コトの始まりはSS-A5の購入であった。このスピーカー、最初は侮っていたが意外と良いスピーカーで、次第にNS-1000Xの出番を奪ってしまったのである。目に付いてきたNS-1000Xの嫌なところは、高剛性でありながら、やっぱり高音が勝ちすぎている印象で、ちょっと音が硬いというところである。

色々調べたが、ユニット本体に問題があるようだが、ネットワーク変更やクロス周波数の変更でかなりその辺の感じが改善できそうなので、改造に踏み切ることにした。まず情報集めであるが、奇しくも掲示板にWEST氏のNS-1000Xの改造体験記をカキコ頂き、それを元にアレンジすることにした。コンデンサーの容量は比較的簡単にわかったが、コイルの定数はWEB上に情報が無かった。やむなくYAMAHAに直接お尋ねするに至ったが、2−3日で丁寧な御返事を頂くことだが出来た(感謝)。

事前に集めたパーツは以下のリストのとおりである。実際こんなにはいらないのだが、クロスを変更する予定なので微調節の必要性を考え、少し・・・というか だいぶ多めに注文した。

メーカー パーツ名
規格
単価
購入数
ERO社 KP1832
0.082μF 400VDC
300
4
Solen Solen Fast PB
1μF 630VDC
350
4
Solen Solen Fast PB
4.7μF 630VDC
650
2
ASC ASC X363
0.47uF 400VDC
540
2
以上入手先はgarrettaudio
ERO社 KP1832
9500pF 1.2KV
400
6
ERO社 KP1832
0.65μF 200V
1810
2
以上入手先はPract Sound System
Solen Solen Fast PB
1.0μF 400VDC
250
2
Solen Solen Fast PB
1.5μF 400VDC
290
2
Solen Solen Fast PB
2.0μF 400VDC
330
2
Solen Solen Fast PB
3.0μF 400VDC
370
4
Solen Solen Fast PB
10μF 400VDC
740
2
Solen Solen Fast PB
68μF 400VDC
2980
2
audience auricap
0.68μF 450VDC
1450
2
JANTZEN AUDIO Cross Cap
10μF 400VDC
840
2
JANTZEN AUDIO Cross Cap
27μF 400VDC
1360
2
ASC ASC9429 WEL267
0.68μF 400VDC
500
4
以上入手先はYAHOO オークション
-----以上のつもりであったが、後ほどコイルを追加注文(後述)-----
JANTZEN AUDIO 4N-OFC銅箔コイル
5.00mH (16AWG)
2900
2
JANTZEN AUDIO 4N-OFC銅箔コイル
2.20mH (16AWG)
2100
2
JANTZEN AUDIO 4N-OFC銅箔コイル
0.33mH (16AWG)
1200
2
Solen 空芯コイル
0.47mH (S16.47)
1110
2

合計4万円を超えてしまった。双信のSEコンデンサーなども欲しかったが、0.001μFで3685円もするので断念した。コイルは純正のフェライトコアコイル(市販価格200円〜)を再利用する予定であったが、取り外しに多大な労力と時間を要しそうだったので、諦めて全部を最初から作り直すことにした。

他にも下記ケーブルを準備

  • monitor ジュニアライン(OFC) PC-1.5Cを3メートル
  • DH LABS OFC&OFC銀コート ST-100を3メートル
  • オーディオテクニカ OFC AT613Bを 3メートル

予行演習として、S-77TWINSDを改造、まずまずの手ごたえだったので、5月の連休を利用して作業に着手した。ノーマルの状態のNS-1000Xについてはこちらのページをまずご参照ください。

 

まず分解しましょう

 


アッテネーターのダイヤルを引き上げます。


構造はアンプのボリュームと同じです。


12ミリのディープソケットを使用したほうが良いでしょう。
特に取り付け時には、ラジオペンチだと作業は困難です。


これでアッテネーターが下に落ちます。 アトネーターの取り外し、取り付けは左右同時にしないでください。センター出しが判らなくなりますので御注意。


アッテネーター本体
スコーカー用とツイーター用は、同じ製品が使用されています。


ACR W40 8Ωと刻印されています。
配線を間違わないように、こういう写真を撮影しておきます。


ユニットの端子は差し込み式ではありません。
黒いゴムの被覆をカッターナイフで切り裂きます。
ツイーターは逆相で接続されていますので御注意を


ユニットへの配線は、巻きつけてあるだけです。


ユニットが外れました。


一番の難関がネットワークの取り外しです。
8箇所でビス止めされています。視野が悪く、作業スペースも狭いので、時間を要します。(+)のドライバーは2−3種類あったほうがいいです。


スピーカー端子を取り外します。
(8箇所でビス止め;これは簡単)
スピーカー端子周りの補強材の構造が良くわかる。


ネットワークが丸ごと落ちます。


各素子がベースにガッチリ接着されており、コイルを再利用する事は断念した。シンナーで接着剤を溶かせば外れるそうだが、そうまでして再使用したいほどのクオリティーのパーツは無い。コイルの線も非常に細い。右から順に、スコーカーのローパスコイル、ツイーターのローパスコイル、ウーハーのハイパスコイルである。


ネットワークの裏の構造



ネットワークのあった場所

100円ショップで購入した3角の木材を隅木として追加した。
また裏板には定状波の防止のために、同じ木材で凹凸をつけた(余り効果が無いかもしれない)。


スコーカーの上部
隅木を追加


定常波防止のための加工
(しつこいが 余り効果は無いかもしれない)


コイルが到着した。


完成したウーハー用ネットワーク

オリジナル
改造

C

ニチコン電解B.P 47μF/50V ×2 
合計 94μF
Solen Fast 68μF 400VDC
JANTZEN Cross cap 27μF 400VDC
ASC9429 0.68μF 400VDC
合計 95.68μF
L
5mH
JANTZEN 空芯銅箔 5mH

見ての通り、ターミナルなどは使用していない。
アース側は、ケーブルを切断していない。途中の被覆を剥いて、そこにハンダ付けをしている。
電線はタイランドを介して、銅製の釘で固定した。
この銅製の釘は、柔らかくて曲がりやすく、打つ込むのはコツが必要だ。
スズ60%、鉛40%のハンダを使用した(ホームセンターで入手)
コイルはタイランドで固定しただけで、接着はしていない。
コンデンサーなどは、シール剤で固定している。接着剤は使用していない。


こっちはツイーター用ネットワーク
こちらもスズ60%、鉛40%のハンダを使用した。

オリジナル
改造
C
ニチコン電解2.7μF/100V
Solen Fast 2μF 400VDC
ERO KP1832 9500pF 1.2KV
audience auricap 0.68μF 450VDC
合計 2.68095μF
L
0.3mH
JANTZEN 空芯銅箔 0.33mH


 
solen社製のコイルをエポキシで固めます。(このままだと共振する為)
ホームセンターで2液混同硬化タイプのエポキシ系接着剤を購入し、塗布します。
そのあとドライヤーで熱風を吹き付けて染み込ませて、ファンヒーターで加温しました。


加温中(約2時間)


出来上がり。
5分で硬化が始まるタイプの接着剤でも、乾燥まで24時間かかりました。
外観は、りんご飴にそっくりです。

 

 
スコーカー用も完成
これには無鉛ハンダ(銀・銅購入)を使用した。ネットでも高価で取引されているが、ホームセンターでも安価で販売されている。ただし半田ごての出力は80W-100Wあった方が良い。特に一度融解して固形化したものを再度溶かす場合は、なかなか解けずに手間がかかる。
ネットワークの作成だけで1日必要でした。

ハイパスのコイル(solen)は、方向を変えて固定した。(言うまでも無いが、コイル同士の相互干渉を避けるためである)斜めに取り付けたのは、スピーカー内部の定常波を少しでも分散させるためである。

 

 
木材は、ホームセンターの木材カットの廃材を使用した。
(みかん袋に詰め放題で200円)
また小さく木片は、例によって100円ショップで購入した。積み木に使うような硬い木材である。(硬いゆえに、銅製の釘は、非常に打ち込み難い)

オリジナル
改造
ハイカット(C)
ニチコンMP 3.5μF/100V
Solen Fast 3μF 400VDC
Solen Fast 0.47μF 630VDC
ERO KP1832 9500pF 1.2KV
合計 3.47095μF
ハイカット(L)
0.45mH

SOLEN 空芯 0.45mH 

ローカット(C) 
ニチコンMP 3.5μF/100V×6
合計21μF
Solen Fast 10μF 400VDC
JANTZEN Cross cap 10μF 400VDC
ERO KP1832 0.65μF 200V
ASC X363 0.47uF 400VDC
合計21.12μF
ローカット(L)
2.3mH
JANTZEN 空芯銅箔 2.2mH

ウーハーはオーディオテクニカのOFCケーブル AT613Bを使用した。
ツイーターとスコーカーには、 DH LABS OFC&OFC銀コート ST-100を使用した。


オリジナルと新たに作成したネットワーク群

オリジナルは高さがあるので、容積としては同等
重量はオリジナル1.4キロに対して、2.8キロと2倍になった。
以上 ネットワーク作成だけで丸1日かかった。

あとはスピーカーに入れるだけ・・・って
それが大変なんだよね〜〜〜〜
アトネーターは、オリジナルを流用した。


ツイーター用は、オリジナルのネットワークが設置してあった場所に固定した。
定常波の防止のため、斜めに固定した。


スコーカー用は、スコーカーの側面に設置。



ウーハー用も側面に固定。
裏板に固定することも考えていたが、先に接着した三角柱の定常波防止の木片が邪魔で、設置するスペースが無くなってしまった。ただ裏板に固定すると、ウーハーのマグネットからの磁束でコイルに悪影響が出たかもしれない。ウーハーからの音圧にも、直接曝露されるので、側板が正解かもしれない。底板も好ましい位置ではあるが、ケーブルの長さが足りなかった。


ウーハー取り受け穴から 上方を望む

吸音材は、グラスウールは全部撤去した。当初はカットアンドトライで検討するつもりであったが、このネットワーク取り付けだけでも一晩かかっているので(※)、チクチクするグラスウールと悪戦苦闘するのは却下とした。

※以下の作業に一晩かかった

  • ネットワーク回路のケーブル処理
  • アトネーターの流用、移設
  • ネットワークのスピーカー内部への固定
  • スピーカー端子の処理
  • ユニットへのケーブル接続
  • 吸音材の充填


スピーカー端子への接続
スピーカー端子へは、オリジナルの状態でエポキシ系の接着剤が塗布されている。バーナーでナット部分を加熱して焼却処理をした後に、接触面を研磨した。機会があればスピーカー端子板を含めて作り直したほうが良いだろう。


吸音材の量

100円ショップで購入したポリエステル綿を使用した。1つのスピーカーに200円分を使用。オリジナル相当の吸音材の量にするには400円分くらいは必要。


ウーハーに使用したオーディオテクニカのOFCケーブル AT613B
このケーブルは、太すぎた。
ユニットの端子を壊しそうだ。
写真のように熱収縮カバーで被覆した。

ツイーターとスコーカーの、アトネーター→各ユニットへの配線コードは、オリジナルを流用した。


スコーカーのバックキャビティは鳴き止めをした。
中身のグラスウールは交換しなかった。


 

音出し

音悪い!!

オリジナルと比較すると、奥に引っ込んだ音で痩せたサウンドである。
分解能も無く低音の量感も無い。細かい音も出てこない
が・・・妙すぎる
スコーカーのアトネーターを回してみると、左に回したほうが音が大きくなる!!

アトネーターの配線ミスですね

アトネーターの配線を修正しました。低音も20分ぐらい音を出していたらどんどん出るようになり、今では改造したほうが良く出ます。特に40HZ付近の音量は明らかに改造した方が良く出ます。吸音材の違いでしょうか?曲によってはややボンツキ気味ですので、もう少し吸音材を増やした方が良いのかもしれません。あるいは穴を開けてバフレフにしてしまうとか・・・・。現状でスイープを再生すると天井から ピシピシ ばきっ と きしむ音がします。

中域や高域も音色の違いがあり、サイン波を再生しても、全然聴こえ方が違います。現在エイジング20時間程度。音の好みもありますが、オリジナルは音に艶がありますね。改造版はその艶というかキャラが無くなって聴きやすい音になっています。ピアノなどは改造版の方がいいですが、チェロのソロを短時間聴くとしたらオリジナルの方が良いですね。コントラバスのズゴズゴいう低音や躍動感は改造版の方が良いです。

現在エイジング20時間くらいでこんな感じです。総括としてスピーカーのキャラが変わり、どっちもありだな・・・・というのが現状です。

 今後の方針

まず完成(?)した片方のエイジングを進めつつ、もう片方の改造に着手しますが、
実のところオリジナルに忠実に作成するつもりはりません。
クロスオーバー周波数の変更を考えています。

コンデンサーの容量を変更するだけでは、好ましい結果を得られそうにありません。
(特にスコーカーのハイカット)

予定としては、ツイーターのコンデンサーを3.4μFに
スコーカーのハイカットのコンデンサーを5.5μFに
スコーカーのハイカットのコイルを0.68mHに 変更予定です。(注文済み)
ウーハーやスコーカーのローカットはそのままで行こうと思います。

スピーカー端子も交換予定で、交換したスピーカー端子に穴を開けて、
息抜きのバフレフにしても良いかもしれません。


周波数特性を測定しました。
WaveGeneとWaveSpectraを使用しました。PCとアンプを接続するのは手間がかかるので、Wave Geneでピンクノイズ・ホワイトノイズ・スイープ・20HZから20KHZまでのサイン波をCD-Rに焼き付けました。それをCDプレーヤーで再生し、PCに接続したマイクで測定するといった手技となっております。

WaveGeneとWaveSpectraは、efu's pageで配布されているフリーソフトです

 

ツイーター軸上1メートルでの測定

  • 青線がノーマル
  • 赤線が今回改造したNS-1000X
  • 黒線はノイズ(主にPC内部のラインノイズ)です。

中高域の特性は見事に一致しています。多少コンデンサーやコイルの定数が若干変わったところもあったのですが、誤差の範囲でノーマルと全く差が無いことがわかります。10KHZ以上が急降下なのは、このツイーターの特性です。スーパーツイーターを追加しても面白いかもしれません。

3KHZから6KHZにDIPがあります。これはNS-1000Xのキャラクターで、過去のFMファンのダイナミックテストでも 長岡鉄男氏がこのDIPのことを指摘されています。ツイーターのアトネーターをMAXにして、フラットにしようと試みたのですが、MAXにしてもF特は変化しません。聴感上はDIPが改善する傾向を感じますが、測定に現れるほどではないのでしょう・・・・。マイクの特性かもしれません。

注目は40HZから60HZの差です。明らかに改造後の方が低音が出ています。これはサイン波を再生しても、音楽CDを再生してもハッキリ差を感じることが出来ます。この差は吸音材の変更に寄るものでしょう。ただ



ツイーターのアトネーターをMINまで絞ってみましょう。

  • 赤線がツイーターがMINのF特
  • 黒線はノイズです。

ツイーターからは音が再生されなくなります。F特性は、4HZから急降下になりますが、15KHZくらいまでスコーカーから高音が出ている事がわかります。ネット上で言われているように、NS-1000Xのノーマルのネットワークでは、スコーカーの高音が絞りきれていないと言う意見に矛盾のない結果となりました。


 
スコーカーのアトネーターをMINまで絞ってみましょう。

  • 青がノーマル
  • 赤線がスコーカーがMINのF特
  • 黒線はノイズ

このとき気が付いたのですが、3KHZから6KHZが陥凹しているのではなく、400HZから3KHZが上昇しているために、相対的に3KHZ-6KHZ DIPに見えているのです。


 
ということで スコーカーのアトネーターを調節してみます。

アトネーターを3目盛り絞ると、丁度フラットになることが判りました。

ノーマルのNS-1000Xは、スコーカーを絞る前は、改造後と優劣つけ難いが、この状態で試聴すると声の張りが無く、ドンシャリ傾向で冴えない音です。F特ではフラットなのですが、聴感上は中だるみの音です。

一方、改造したNS-1000Xは、スコーカーを絞ることによって更に自然な感じとなり、明らかにノーマルと差をつけて、音が良く感じます。嫁にも試聴させましたが、”改造後の方がやさしい音で好き”といわれ、何とか面目を保ちました。

これは思いも掛けない発見でした。この結果を踏まえて、クロスオーバー変更を決断しました。

NS-1000X 改造 その2に続く

 

オーディオ解体新書>NS-1000X 改造 その1