59,800円1台、1983年10月発売
3ウエイ 密閉型
NS-600のバッフルは、木材を塗装したような仕上げであるが、NS-500Mは突き板または塩化ビニルシート仕上げである。新品だったときは、NS-500Mの方が外観は良かったであろうが、発売後23年経過した今日では風化してボロボロになっており、むしろシンプルなNS-600のほうが外観の程度は保たれている。
ユニットのフレームもNS-600はシナ地仕上げの平坦なフレームであるが、NS-500Mは盛り上がりのある立体的なフレームになっている。ただそれが音響的に良いかどうか不明。段差が出来るのでマイナス面もあるだろう。
NS-600ではウーハーのフレームもバッフルを削って埋め込み、フラット化されていたが、NS-500Mでは写真のようにバッフルから飛び出している。取り付けはNS-600までは+の木ネジであったが、NS-500Mは六角レンチを使用する六角穴付ボルトに変わっている。スコーカーのフレームの横を見ると、微妙にラウンドして盛り上がっているのが判るだろう。
ツイーターはあとで分解してみるが、外観はフレームが違うだけであろう。
このフレームの違いは、NS-1000Xへの移植を前提にしていたので、実はショックである。
品番はJA0544
マグネットのサイズはNS-600と同じで、直径70ミリ×15ミリ
他のユニットに対して逆相で接続。
スコーカーの振動板も材質はNS-600と同じ炭化チタンであるが、ドーム部分とコーン部分が一体プレス加工されたものになっている。
こっちがNS-600のスコーカー
ドーム部分とコーン部分に接着剤の跡が見える。
マグネットのサイズは NS-600と同じで、直径110ミリ×15ミリ
品番はJA1214
吸音材はグラスウールで、NS-600と比較すると量は半分くらい。
バックキャビティはバッフルに固定されている。材質はなんとプラスチック。
叩いた感じはプラスチックのコップに近い。強度や固有振動など大丈夫であろうか?容積もNS-600と比較すると少なくなっている。
ウーハーはカーボン製ではあるが、カーボン繊維を編みこんだクロスカーボンではない。よく見るとパルプのような線維も見えるので、カーボングラファイトとパルプを混ぜてpressしたようなものかもしれない。
叩くとペシペシという感じで高い音で鳴る。
ちなみにNS-1000Xのウーハーはペンペンという更に高い音がする。
NS-600はパルプコーンなので、ポンポンという音ですね。
エッジはウレタン製ではない。これもNS-600と違うところ。
振動板の実際の直径は235ミリで、エッジを含めると273ミリである。この数値はNS-600やNS-690と共通。
バッフルに面するフレームはNS-600と比較すると厚くなっているが、ご覧のように中抜きされている。マグネットのサイズは、NS-600と同じで直径120ミリ×20ミリ。
品番はJA3109
スピーカー端子は、NS-600がNS-1000Mのようなワンタッチ式の貧弱な端子だったのに対して、NS-1000Xのような大型の端子に変わっている。
板の厚みは、フロントバッフル25ミリで、その他の5面は20ミリ厚だと思う。
吸音材はグラスウール
ただしその量はNS-600やNS-1000Xと比較すると若干少なめである。
とはいっても一般のスピーカーと比較すれば多い方であろう。
補強板はバッフル横に左右各1本
底板に水平に1本
バッフルは、ウーハーとスコーカーの間に水平に1本とスコーカーとツイーターの横に垂直に1本あり、逆T字型に組まれている。
裏板は下半分に垂直に1本、ネットワークが中央にあり、その上に水平に1本ある。
以上すべて厚さ20ミリの木材が使用されている。
ウーハーの抜き穴は使用されていない。
三角柱の隅木は20ヶ所くらい使用されている。
スコーカーのバックキャビティと、フロントバッフルの補強材が見える。
ネットワークはスコーカー裏の裏板にプラスチックのベースを使用して固定されている。
裏板の補強の構造が見える。
配線は日立のOFCが使用されている。
コイルの定数はわからない
手前のコイルは、ウーハーのハイカット用
奥中央が、スコーカーのハイカット用コイル。奥右はスコーカーのローカット用コイルである。
47μFの黒い電解コンデンサーはウーハー用
3.5μFの灰色のコンデンサーは、スコーカーのハイカット用です。
2.5μFの灰色のコンデンサーはツイーターのローカット用、その隣の小さなコイルもツイーター用です。
その上にある黒い電解コンデンサーはスコーカーのローカット用で18μFあります。
以上 少なくともコンデンサーの容量はNS-600とまったく同じです。余り細かい変更や調節はしていないような・・・・気がしますね。多分コイルの定数もNS-600とまったく同じではないでしょうか?
配線を紐で縛っているのはなぜでしょうか?音質的なメリットがあるのでしょうか?共振対策??
早速鳴らして見た。
発売後23年経過しても まだ使用されるとはYAMAHAの設計者も考えていなかっただろう。
良いことかもしれないが、オーディオブームというバブルの崩壊の影響なので、微妙なところだ。
割とバランスがよく、素直に聴ける音である。これだけ聴いていたらそれほど不満には感じないが、スケール感とかダイナミックさ(派手さではない)はNS-1000Xと比較するとワンサイズ小さくなり、価格差をはっきり感じ取れるが、ではNS-500Mの音質がNS-1000Xより明らかに悪いかといわれれば"NO”であると感じた。おそらく10人に試聴させれば半数の方くらいはNS-500Mの方が好きと答えるだろう。少し音の傾向が異なり各々得意分野がある。
このスピーカーに関する私の印象はこちらを参照
該当箇所を参照してください。
ツイーターの移植
このNS-500M 外観はボロボロであるが、機能的に問題がない状態である。
すこし躊躇したが、NS-1000Xのためにツイーターを取り外して流用させていただいた。
流用の方法は、NS-600のページのとおりなので省略。無理をせずフレームごと流用した。
フレームのサイズが微妙に大きく、サンダーで結構周囲を研磨した。
NS-1000Xに取り付けて気づいたのですが、NS-500Mのフレームは、膨らんでアールがついているではなく、取り付け部分が薄くなってアールがついているようでした。振動板はNS-600とまったく同じである。ボイスコイルはNS-1000Xと同じであれば・・・と期待したが、残念ながらNS-600と同じで、紙の筒にコイルを巻いた状態のものであった。
マグネットのサイズは、先に記載したようにNS-600と同じであったが、分解してみると若干内部の形状が違った。しかし音質的な意味はなさそうである。
NS-600のツイーターの磁気回路
NS-500Mのツイーターの磁気回路
NS-1000Xのツイーターの磁気回路
NS-500Mのその後
ツイーターはNS-1000Mのものが入手できたので、NS-500Mのツイーターは元に戻されました。色々試聴しましたが、このNS-500Mは大変良い素性のスピーカーでそれなりに楽しめました。私が目指すNS-1000Xの改造の方向性の検討にも役立ちました。ただストックしておくには外観が劣化していることやスペースを割いて保管するほどの個性はないということで、売却しました。しかし心に残る名機だったというのは間違いありません。ソースを選ばない万能向けのお勧めのスピーカーです。機会があれば継承機であるNS-500Maも入手したいと思います。
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