オーディオ解体新書>パイオニア S-77 TWIN SD(改造)

 

パイオニア S-77 TWIN SD

最終更新日  2008年1月11日

  • 幅27cm、奥行38cm、高さ96cm
  • 2ウェイ・3スピーカー・位相反転式フロア型・防磁設計
  • ユニット 低域用:18cmコーン型×2 高域用:2.5cmドーム型
  • インピーダンス 6Ω
  • 再生周波数帯域 35Hz〜40000Hz
  • 出力音圧レベル 91dB/W/m
  • クロスオーバー周波数 2500Hz
  • 重量 29kg   
  • 2本セットで12万円 1989年発売

以下 1989年10月号のステレオ誌のメーカー取材でのパイオニア ホームエレクトロニクス事業部企画部企画2課課長菅野公彦氏、所沢工場第三技術部設計三課主事土屋五男氏、同課副主事田中博氏、同課主任高橋俊一氏の対談記事から抜粋要約しました。

 

いわゆるバーチカルツインと呼ばれる仮想同軸スピーカー。ある程度距離を置いて聞くスピーカーです。海外ではMTM(ミッドバスーハイーミッドバス)と呼ぶそうです。

1988年に発売されたS-77 TWINの改良モデルで、主な改良はツイーターにウエーブフロント・ディレクターと呼ばれるショートホーンが取り付けられたことである。バックルの厚みもS-77TWINでは25ミリであったものが、50ミリに改良されている。

トールボーイ型のスピーカーはAVとかホームシアターが全盛(??)になった2005年現在では、多メーカーから色々発売されていますが、そういったヘナチョコじゃなくてピュアオーディオ用のまじめなスピーカーです。当然当時は極めて異色な存在でした。しかし下記のようなメリットがあります。

  1. 占有面積が小さい
  2. スピーカーの内容量が確保しやすい
  3. スピーカースタンドが不要
  4. バッフル面積を小さくできる
  5. 同じ容積のスピーカーなら、木材が沢山必要で、当然重くなる
    (同時期の3ウエイ大型ブックシェルフのD-77XGは30キロと1キロしか違わない)

デメリットは以下

  1. 正統派(?)3ウエイスピーカーと比較すると ルックスで見おとり(?)するかも
  2. 大口径のウーハーが使用できない
  3. 側板の面積が広く、防振対策が必要
    (このスピーカーは特に対策していませんが・・・)
  4. 同じ容積のスピーカーと比較すると、木材が多く必要でコストがかかる。

更にバーチカルツインに限ると メリットが2つ追加になります。(メーカー談)

  1. ウーハーが小口径なので、ボリュームを絞っても低音が痩せない。大型3ウエイであればアンプのボリュームを9時より下に絞るとウーハーを駆動するパワーが足りなくなり、低音が出なくなってしまう。
  2. 3ウエイで混声合唱を再生すると、女性の声は男性の声の上に定位しがちであるが(女性の方が声が高いので)、実際は男性の方が背が高いので男性の声の方が女性の声の上に定位すべきである。このスピーカーはちゃんとそんな風に定位する。

 

バーチカルツインを採用したスピーカーには パイオニア製だけでS-55TWIN S-33 S-HE100 S-HE10 S-EU5TB S-1000TWIN などとやたら多いですが ビクターなどにも同様の製品があります。またTAD(パイオニアの高級ブランド)にも製品があります。

1986年頃、当時はスピーカーの59800円戦争の真っ盛りでした。オーディオ店にいくと同じような黒い3ウエイスピーカーが沢山陳列してありました。良く見ないとどこのメーカーか判別できないものが多く、またバッフル面に金属フレームだのボルトだのいっぱい露出しておりゴッツイ印象でした。これはイカンということでパイオニアの技術部や設計部の方が、考え出したのがこういったバーチカルツインのスピーカーです。従来の3ウエイ大型ブックシェルフという枠の中だけでの過当競争は、重量・大きさ・音質などでナンバー1になっても、すぐ後ろにナンバー2、ナンバー3が控えていてどんぐりの背比べで、メーカーとしても利幅が薄いし製品の差別化ができないので破綻は眼に見えていました。

最初に登場したのはS-101というコンパクト2ウエイスピーカーのユニットをベースに製作されたS-55 TWINというスピーカーで、好感触を得た同社はその後もこのタイプのスピーカーの生産を続けることになります。勿論販売店や社内からも当初は、店頭に陳列する場所がないなど反対の声も強かったようです。S-55 TWINに続いて、S-33T、S-55TSD、S-77T、S-99T、S-1000T、それからエクスクルーシブS-5と、次々と発売され、低迷していたパイオニアスピーカー部門の業績回復し、販売台数・金額・ベース共にかなりのシェアを占めることができた。

バッフルは50ミリ厚で強力。

天板や側板・裏板は20ミリ厚。補強も無い等しいのでそれほど大きな音量で再生しなくても、手で触れると側板や天板は共振しているのが判る。特に裏板は木ねじで固定されているだけなので 盛大にビリビリと共鳴している。これは如何なものか・・・・。強度だけ考えたら接着してしまえば良いが ユニットの交換が2度と出来なくなる。エポキシ樹脂などで10ミリのステンレス無垢板を裏板に接着すると制震できるが、音は変わってしまうだろう。良い方向か 悪い方向か・・・?また重い補強材を取り付けすぎると木ネジごと裏板がもげてしまう可能性もある。


純粋な底板は20ミリだが 40ミリ厚のパーチの真ん中をくりぬいた袴(ハカマ)が装着され、袴の中にはニードルフエルトが充填されている(一応固定されている)。

バフレフポートは2本で紙製。ユニットの直後に設置されている。写真ではよく判らないが ポートにはガムテープが貼られている。裏板下側にはウーハー用の2つのネットワークがある。


ツイーターはバッフルに埋め込まれてあり、また裏側から木製の蓋がされており、全く見えない。内部はニードルフエルトが多量に使用されている。


ウーハーは、細めのダイカストフレームで、トンネル状にくり貫かれたバッフルに はまり込んでいる


アルニコではなく通常のフェライト磁石を使用した磁気回路でキャンセルマグネット付。磁気回路は、前モデルS-77TWINより5%アップしたものが使用されている。フレームが細くなったのもS-77TWINからの変更点で、音の逃げ道を広くする狙いがあった。

バッフルには固定されておらず 30ミリ厚の木製インナーフレームに固定されている。ミッドシップマウントとかインナーフレームマウントなどと同時各社が呼んでいたが 同様の方法はONKYOのセプターシリーズやサンスイの一部のモデルなどにも採用されている。バッフルに固定されていないので演奏中にユニットのフレーム(表側)に触れると酷く共振してる。パイオニアもそれを知ってか ユニットの表側フレームにゴムをかぶせて制振してあるが十分ではない。


上側はT型のフレーム、下側はH型のフレームに固定。多少はキャビネットの補強にもなっているかもしれないが、フレームの位置はバッフルより側板との接触面積も狭いので補強効果は少ないと判断した。


ウーハーを引き寄せて固定するボルトにも吸音材が貼られている。ワッシャーとスプリングは銅メッキがされている。

ネットワークは 側板裏に2つのウーハー用に2つの独立したネットワーク回路がある。上下のウーハーは全く同一のネットワーク素子をそれぞれ独立して持っている。ツイーター用は側板に取り付けられている。基盤を使用せず黄色のゴム系の接着剤で固定されている。


ツイーター用のネットワーク
ツイーターのネットワーク回路は極めて振動に影響されやすいということで、このスピーカーの直前に発売されたS-1000Tでは基板の下に吸音材を入れてフローティングしてある。このスピーカーのツイーターネットワーク回路も一応ニードルフエルトの上に設置してある。



ニチコンのAXFコンデンサー3.3μF(左)と鉄芯コイル(中央)とニチコンのBPコンデンサー 6.8μF(右)


2つのコンデンサーはユニットに対して直列に接続されて-18dBのローカットになっている。これは素子を含めて改善の余地があると思う・・・。ASCなどのフィルムコンデンサーを使用して-12dBで作り直してもいいかも。


ウーハー用のネットワーク (2つあり) ハンダは使用されていない。
カシメと接着剤で固定されている。
ニチコンBPコンデンサー8.2μFと鉄芯コイルによる-12dBのネットワーク
BPというのはバイポーラー(双極性)の意味

 


コイルの容量は不明。



ウーハーのエッジは布に樹脂(?)を染み込ましたようなもの

振動板もパルプコーンを+樹脂でサンドイッチして表面を特殊な塗料で塗装したもの。基本的にTADブランドで発売されている振動板と同じものだが、TADのユニットとは使用されているパルプの種類がおそらく異なると思う。TADのユニットに使用されているパルプは、特注品でTADが買い占めてストックしてあると伺ったことがあり、上位機種のみ限定で使用されている。

コーンのキャップ部分には共振防止(?)と思われるシールが中央に貼られている。


ツイーターは浅いホーンの奥に設置され、振動板は黒い。当時パイオニアが汎用していたセラミックカーボン振動板で、99.99%の炭素純度。グラファイトを基材にしたしたベースを焼結して作成したもので、これ以前に同社が使用していたベリリウムには若干硬度で劣るが、ボロン合金にも勝り、昭和電工と共同開発した全結晶質ダイヤモンドについで内部損失も大きい素材とのこと。つなみに全結晶質ダイヤモンドは硬度も内部損失も最高の材質のようである。

硬度(音速)

チタン=アルミ=セラミックカーボン<ボロン合金<セラミックグラファイト<ベリリウム<全結晶質ダイヤモンド

実際は チタン>アルミではあるが、差が極めて小さいのでイコールとした。

内部損失

セラミックグラファイト>ベリリウム=ボロン合金=セラミックカーボン>チタン=アルミ

以上 すべて当時のパイオニア社内の資料より転載。表面処理でこの結果は変わることをご承知ください。


同社がウーハー用の振動板としてカーボングラファイトの研究をしていたときに基礎的なデーターが得られたもの。
カーボングラファイトは、黒鉛と樹脂を練り上げて強度を上げたものであるが、その樹脂を焼成して炭化させると非常に優秀な物理特性が得られることが実験的には判っていた。しかし量産面でのノウハウがなく安定した品質の維持に難があり、当時は商品化には至らなかった。S-701やS-101というスピーカーで初めてこの振動板が採用されたが、その際は三菱鉛筆の炭素の焼成技術の協力があり、日の目を見た。チタンやアルミと違って軽量なので、同じ重さなら厚みのある振動板とすることが出来、曲げ剛性が高く確保できた。

セラミックカーボン振動板が実用化された後は、パイオニアブランドとしてはベリリウム振動板の採用をやめてしまう。そのセラミックカーボンが一時同社の主流になりますがその後絶たれてしまい、マグネシウム振動板を使うようになります。(理由は不明)

 

ツイーター周囲にはスエードが貼られている。またツイーターのネットは共振を防ぐために銅が使用している。

磁気回路はネオジウムマグネットを採用しており、これによって磁気回路が従来比で1/9に小型化でき、事実上バッフルの中に内臓され内部音圧の影響を受けることがなくなった。これによりS/N比が向上したということである。従来の方法だとスピーカー内部の振動が、フランジなどを共振させて影響が出ていた。

バッフルに埋め込まれているので、ボイスコイルの位置はウーハーの位置とそろっており、リニアフェイズになっているが、単に位置を一緒にしたのではなく、ユニットの口径や重量、駆動系の強さなどによって、エネルギーが頂点に達する時間が異なり、それらを合わせてあるということです。

ショートホーンはたたいても鳴らない。S-1000Tでは、このホーンにイタヤカエデが使用されていたが、定価で1本6万円の本スピーカーではコスト的に無理ということで、ゴム系の材質が使用されている。またこのショートホーンは柔らかさがあり、ツイーターユニットにも接しているために、ツイーターユニットの不要な振動を低減するのにも役立っている。このショートホーンの設計には(パイオニアはショートホーンとは呼ばす、ダイレイターと呼んでいた)、ツイーターの軸上50センチの縦横1メートルに10cm刻みで合計121ポイントのマイクを設置して、ツイーターから再生される音の伝達情報をマイクから全部コンピューターに打ち込んで処理し、スピーカら波形が整った形で放射されるように設計された。

端子はバイワイヤリング対応・・・・といっても当時流行しただけで 現在バイワイヤリングしている人は少ないだろう。私も写真のようにして使用している。接点が増えるだけで意味なし。接続もめんどくさいので私は好まない。


端子板は樹脂製だが外側に凸の形状をしたやや柔らかい樹脂で作られていて叩いても共振は少ない。


端子板裏には ガムテープが貼られていた。(ダンプ目的?)オリジナル??? か前オーナーによるものかは不明。

 

10センチバックロードの跡を継いで 一日8時間働いています。


もうちょっと アンプは質の良いものに交換予定です。スピーカーの上には1枚6キロの石板を4枚ずつ乗せました。

メーカーの開発者によると、波面のコントロールをしたスピーカーなので、壁から離して、スピーカーの周囲に空間を確保すれば、後方にもグッと音場が広がるということですが、ごらんの状況です。

私の音のコメントはこちらを参照

1990年11月のステレオ誌にて金子氏は以下のようにコメントされています。
トールボーイのバーチカルツインシステムによって同軸2ウエイになる方法で、音像の定位を重視した設計。音色は適度な帯域をバランスよく持たせたもので、あまり部分的な強調感を作らず、割合平均的された素直なところがあり、安心して聴ける良さを持っている。いろいろなファクターに対して適度な処理をし、危なげない鳴り方にしている。


改造

概ね中庸で、落ち着いたサウンドのスピーカーだが、若干耳に付くような音もあるように感じた。またツイーターに電解コンデンサーを使用するというのは許せない。コンデンサーを交換することにした。


用意したコンデンサーの山
総額2万1000円(同時にNS-1000X用も注文した為)

このスピーカーに使用するのは、solen FAST 400VDC。 安価でありながら、数倍の価格のコンデンサーを蹴散らす音質を発揮することで一躍有名になったコンデンサーである。

[Solen] 3.0μF 400VDC x 2 ¥740.-
[Solen] 8.2μF 400VDC x 4 ¥2,680.-
[Solen] 6.8μF 400VDC x 2 ¥1,100.- 合計4520円(送料は着払い)
詳しくはこちらを参照してください。

Solen FASTには630VDCのものもあるし錫箔の製品もあるが、今回使用したのは比較的安価な通常品の400VDCである。耐圧が高い方が音が良いという人も居られるそうだが、予算の関係もあり400VDCで・・・・。630VDCより400VDCのほうが高音質であるという評論家もいるくらいなので、気にする必要は無い。

このスピーカーをフルで鳴らしても、おそらく流れる電圧は40V以下であろうから耐圧は問題は無い。元々使用してある電解コンデンサーの耐圧なんて僅か50V程度。


ツイーター用のネットワーク
ゴム系の接着剤は、バリバリと剥がれた!!(笑)
無理もない。製造後17年経過しているのである。
接着剤の油脂分が完全に稀発して、乾燥した鼻水のようにパリパリになっている。


交換終了
コンデンサーも新たに接着剤で固定。
このあとケーブルもステップルで固定した。
配線材を交換する元気は無かったが、使用されているのは、単なる平行線なので、良いケーブルに交換すると効果があると思う。


ウーハー用
ニードルフェルトのマットの上に固定されているのは、振動対策のため。



交換終了


スピーカー端子もバイワイヤリングを解除して、下側の端子に統合した。
また差込型の端子はハンダ付けして固定した。



作業終了


アンプは SU-A900に交換しています。
ソースは SE-90PCIで再生されるPCオーディオ(無圧縮ファイル)

コンデンサーの本領発揮には400時間のエイジングが必要であるが・・・・

音出し一発、音が変わった!!

効果が体感できなかったらどうしようかと思ったが、
フラシボ効果を勘案しても音は変わったと断言できる。

まず耳に付く音が無くなった。全体的にマイルド、たっぷり傾向に変わった。人の声がスッキリ素直に出るようになった。ただし高域が出なくなったような感じがする。好みによって印象は違うだろうが、個人的には歓迎したい変化である。

どうやら初期はレンジが狭く感じるが、400時間使用していると、最終段階で高域がうるさく感じられ、それが,納まるとレンジが広がって繊細な音まで聴こえるようになるとのこと・・・。

2006年5月
エージングが100時間越えた。 音は日々変化している。高音は出るようになった。それとともに音場感が非常に良くなっている。こんなに音場感が良いスピーカーだったかな??と関心するくらいだ。

4500円は、下手なオーディオアクセサリーも買えない金額であるが、
たったそれだけでこれほど変化するなら 改造は御勧めである。

 


その他の改良

 

  1. ケーブルの交換; それほど高いケーブルでなくても2スクエアくらいのOFCケーブルに交換すれば、それなりの効果があるだろう。高域が物足りない方はLC-OFCを、よりマイルドな傾向を目指したければPC-OCCやアニール系のケーブルなどがいいのだろうか?余り詳しくない分野なので各人の好みでお願いします。
  2. キャビネットの補強; 裏板のバフレフパイプの間とネットワークの間に10-15ミリくらいの補強板を貼り付ける。側板は、ニードルフェルトの下に高さ25ミリくらいの梁状の補強材を追加する。実は今回その木材を購入していたのだが、作業時間の関係で見送った。
  3. 吸音材の適正配置; ウーハー周りの吸音材を少し減らして、それをネットワーク素子を覆うように再設置する。またバフレフパイプにも巻きつけるように吸音材を設置する。吸音材そのものは無難なものが使用されており、種類を変更する意味は余り無いだろう。
  4. スピーカー端子交換; 既存のスピーカー端子を撤去して、内側から厚さ15ミリくらいのMDFを貼り付けて蓋をして、そこに大型のスピーカーターミナルを設置する。
  5. ネットワーク素子の再検討; 特にツイーター側には今回3.3μFのAXFを3.0μF(※)のsolen FASTにしている。10%の容量差、さらには2つのコンデンサーを直列に接続しているので、更に差は少なくなっているはずであり、実質何も問題ないと思うが、ここにスパイス的にちょっとキャラクターのある0.25から0.33くらいのコンデンサーを加えても面白いかもしれない。
    (※3.3μFがたまたま入手できなかったため。特に意図は無い)
  6. 裏板の上下変更; これはお遊びなんだが、裏板を上下さかさまに取り付けると、ダクトが下に移動する。するとダクトからの中音の漏れが減り、ユニットからダクトの距離も稼げて低音のパワーも上昇すると思われる。

気が向いたら やるかもしれません

オーディオ解体新書>パイオニア S-77 TWIN SD