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SE-M100

最終更新日  2006年4月25日

当時の定価90000円(1988年ごろ)

430*158*403ミリ
重量15.5キロ
100W+100W(6オーム)

当時の広告の記載を引用しておきます

このアンプの登場で、
デジタルオーディオは新しい局面を迎えた。

テクニクスだから
クラスAAだから出来た
スピーカー出力段までデジタル・クオリティ

ブレイクスルーという言葉は、このアンプにこそふさわしいように思います。テクニクスの新しいアンプテクノロジー”デジタル・ダイレクト・ドライブ”(以下 D.D.D.と省略)、パワーアンプ直結で到達できなかったデジタル・オーディオの新しい新しい世界へ、マニア諸氏をご招待します。
(中略)
パワーアンプのノイズがCDの音を汚している
例えばS/N比を考えてみると、一般的なプリメインアンプでは106-107dB前後。パワーアンプへのダイレクトインで120dB前後になり、CDプレーヤーのS/N比をようやく上回ります。しかしこれはあくまで定格出力での数値であり、一般的な実使用状態である1W前後の出力ではS/N比は大きく悪化し、ゆうに20dBはダウンします。これではCDの優れたS/N比は全く生かされません。このS/N比の劣化は、アンプが増幅という動作を行う以上避けられません。アンプが存在する限り、CD本来の音質は楽しめないのでしょうか・・・。この問題を、ある根源的な発想で克服したのが、D.D.D.です。

増幅しないアンプ  0dBアンプの発想
アンプが増幅動作をしなければS/N比は悪化しません。しかしアンプで信号を増幅しなければスピーカーを駆動する電力は得られません。テクニクスはここで発想を転換します。増幅しないアンプ--0dBアンプの発想です。果たしてそんなものが実現できるのか?、という声が聞こえてきそうです。テクニクスには出来たのです。今から4年前(1984年)、セパレートアンプSE−A100 SE−A200で初めて導入して注目を浴びたクラスAAという技術をご記憶でしょうか?これはアンプの動作が電圧増幅と電流供給の2種類の動作を同時に行っていることに注目し、この2種類の動作を異なる2つのアンプに受け持たせることで、デリケートな音楽信号へのスピーカーなどの負荷変動の影響を排除した技術です。このクラスAAで、電圧増幅を全くせず、スピーカーを駆動する電流だけを供給する0dBアンプを作ることが出来ます。増幅しなければ、その残留ノイズは極めて小さくなり、DAC部からの信号は、そのままの純度でスピーカーを駆動できます。D.D.D.ではDAC部のI/V変換器を可変ボリュームとして動作させ、変換率のコントロールでスピーカーを駆動できるだけの電圧を得ています。つまりDAC部からの出力電圧は、デジタルのクオリティを保ったまま0dBアンプを通過し、スピーカーを駆動することになるわけです。以上がD.D.D.の原理。クラスAAという独自のテクノロジーを持つテクニクスだから出来た発想でした。


DAC内蔵のアンプ

フォノ入力も無く アナログ入力も最低限。構成としてはメインアンプ+DACに限りなく近い。トーコントロールなども無い。 デジタルダイレクトドライブ(D.D.D.)搭載となっているが詳細は上記参照。DACの出力を高めてアンプ部分では電流増幅だけしかしない。 DAC出力電圧=スピーカー端子電圧にしてある。通常のDACからの出力のままでは、そのあとに30dBくらいの増幅が必要になるが、大出力のDACをつくってプリアンプをジャンプさせる構造になっている。おかげでパワーアンプ部分では電圧増幅の必要がなく、残留ノイズが極めて小さくなっている。またボリュームを絞るとノイズも小さくなるので、小音量で使用しても高S/N比を保つことが出来る。


トーコンやバランス・サブソニックフィルター・ステレオ/mono切り替えなど一切無し。入力切替とスピーカ切り替えのみです。


天板はよくあるコの字型のもの
防振材などは使用されていない。1.7キロ


ボリウムは無垢ではないが、適度に重い


脚はこんな感じ
4本脚です。多分プラスチック製 10g
底板にトランスやヒートシンクが直接固定されているので、底板は取り外すことが出来ない。メインの基板の裏側を見ようとするとヒートシンクを取り外し、出力トランジスターのハンダを取らないと無理っぽい。メンテナンス性が良いとは言いがたいですね・・・。


スピーカーケーブル端子
端子自体は大きいが ケーブルを差し込む隙間が狭いので5.5スクエアとかの極太ケーブルは難しいと思います。


入力端子

アナログ入力は固定と可変のみ


内部は完全左右対称 リヤパネルもごらんの様子。
中央の黒い部分がDAC、完全にシールドされている。
・デジタル入力端子4系統装備 (光2/同軸2)


アンプ部分も完全に左右に分かれている。
電源トランスもケースに封入されている。 容量は各170VAくらいか?
ケースのサイズは110*90*90 で巻き線にはOFCが使用されている。


ケースの天板
やはり防振材などは使用されていない。4箇所でネジ止め。330g


電源コンデンサーも当然左右独立で使用されている。松下お得意の ・ハイスピードEX電解コンデンサー 。83V8200μF(直径35ミリ高さ80ミリ)が左右独立で2本ずつ 合計4本


DACのケースの蓋を開けた写真。
ヒートシンクはベース7ミリ、フィンが2ミリ厚が13枚が左右別々に設置されている。

このDACの出力は24.5Vもある。電圧増幅をDACだけで終わらせてしまい、それ以降のアンプは電流増幅だけである。DACの電源も左右のトランスから別々に貰っている設計。アナログ入力は通常のアンプと同じように、ゲイン45dBのフラットアンプを経て0dBパワーアンプに入る。


中央に4つ何べられた バーブラウンPCM56P
差動回路を構成しているらしい。 選別品ではない。

20BIT 8倍オーバーサンプリングデジタルフィルター4DAC
16BITのDACにデュークスリートで4BIT付け足して20BIT動作にさせている。

後継機種のSU−MA10では MASH1ビットDACに変更されている。


コンデンサーも高品位なものを使用している。 ピュアイズム(pureisum )という名称。このアンプに多用されている。


DAC基板裏側 テクニクスのオリジナルチップが装着されている。役割は不明。


DACを取り除いた写真。DACのケースは前後のシャシーを接続しており補強に役立っている。シャシー自体は1.6ミリの鋼板を使用しており、比較的丈夫ですが、DACケースを取り除くとリヤパネルはグラグラになります。


整流ダイオードも当然左右独立です。
内部の電線は全てOFC(無酸素銅)ケーブルです。


ボリウムは4連
市販のボリウムではダメなので専用開発品。
ボリウムノブは無垢ではないがdumpされており75g


DACが入っていたケース 個人的には銅メッキしてほしかったな・・・
防振材などは使用されていない。


アンプの回路(片チャンネル分)
スペースが不足したのか、抵抗が縦にレイアウトされています。
ここにもピュアイズムというコンデンサーが使用されてます。

やや部品が多いように思いますが、これはclassAAという回路を組んでいる為です。

純A級動作をする電圧制御アンプと大出力用の電流制御アンプが、ボルテージ・カレント・ドライブ、ブリッジ接続するということらしいです。つまりこのアンプはLR各2回路、合計4回路のアンプ回路を持ってるようです。電流制御アンプは、スピーカー出力電流に比例した出力をする定電流源として動作し、純A級動作の電圧制御アンプは出力がブリッジの一端に接続され、スピーカー出力端子からNFBがかかる定電圧源として動作している。


出力段はシングル構成

音質対決(DACのみ)


ベルデンの同軸ケーブルを使用。

CDP−555ESDに接続してデジタル出力とアナログ出力を切り替えて、聴き比べしてみました。うーん やっぱり低音のゴリゴリしたパワーはCDP−555ESDの勝ちですね。DACのスペックは完全にSE-M100の方が上なんですけどね。その他はあまり差がありません。音色も同じ感じで 非常に差が少ないですが、音が響く感じ-エコーはパーと拡散する感じはこのアンプのDACの方が良いみたいです。しかし非常にその差も僅かなものです。

9万円という価格で、この内容は凄いと思います。それを可能にしているのが入力系の思い切った削減でしょうね。普通はプリアンプ基板がサイドにデーンとあるのですが それがこのアンプにはありませんから・・・・。凄くsimpleな回路ですね。(クラスAAはともかく・・・)

尚このアンプはDAC部分を物理的に取り外しても ボリウム付きメインアンプとしてキチンと動作します。

長岡鉄男氏(FMファンダイナミックテストから抜粋;1988年ダイナミック大賞部門賞)
(前略)24.5の高出力DACと0dBアンプの組み合わせというユニークなものである。通常のパワーアンプの入力は1Vである。6Ω100Wのアンプだと1Vの入力をするとスピーカーの+/-の端子の間に24.5Vの電圧がかかり、6Ωのスピーカーを接続してあると100Wの出力になる。アンプでの増幅は24.5倍、ゲインに直すと28dBである。ところがこのアンプは24.5Vの入力をしてスピーカーの端子間に24.5Vの電圧がかかるというものである。実はこのようなアンプを作るのは非常に難しい。それがテクニクスのクラスAA回路を使うと容易に実現できるのである。一方24.5Vの高出力DACはどうするのか。単純にDACに供給する電流を12倍にすれば出来るのだが、そんなことが出来るかどうかもわからないし、説明も無い。(中略)
デジタル入力のサウンドは高SN比に驚かされる。こんなに静かなCDは聴いたことがない。音も透明、繊細で情報量も多く、音場は広い。アナログ入力の音はデジタル入力と差がある。

入江順一郎氏 (1988年11月のステレオ誌より抜粋)
このアンプは実に変わったコンセプト。アナログ入力ではシンプルな構成を反映して細かい音が出てくる。ハイエンドもすんなり出てくる。ピアノもタッチ軽快という感じのサウンドで、オーケストラも密度感のある音が出てきたと思う。バランス的にも厚いし、密度感もあるし、その辺のところで、音への執着心が感じられる。メリハリで訴えるようなこともないしナチュラル。

福田雅光氏 (1988年11月のステレオ誌より抜粋)
肉厚であるが、肉厚の低域と、密度感もある中域、そしてこまやかな雰囲気、表情を出す高域という感じで、一部突出したキャラクターを持つアンプではない。強調感もなく表情もずいぶん豊かに出てくる。質感はかなり高い。D/Aコンバーターはなかなか解像度が高くて、透明感も高く、デジタル入力時の再現力としてはまとまっている。DAC内臓のアンプには何かと問題があるが、このアンプは従来のアンプと遜色ない音が出ている。ただデジタル入力の方が若干高域にアクセントが付く感じがあるがあるが、音の劣化でもないし、これはこれでいいと思います。多少アナログ入力とひかっくして色彩感とか艶がのる。透明感や純度の高さもあり、基本的にかなり透明で中低域あたりの雰囲気は結構自然に出ているので、アコースティック系でも雰囲気は良い。ニュートラル系で適度な弾力も持っている。Fレンジも広くキープされている。

石田善之氏(1989年3月のステレオ誌より抜粋)
ボリューム前・ボリューム後・DAC同軸・DAC光と、それぞれ音に違いがあって評価が難しい。 全体を通して言えるのは、メリハリの効いた、ハッキリした音でまとめられていて、低域はよく引き締まっているし解像度の高い。モノラルコンストラクションのメリットか、音場の安定感が高いし、前後の立体的な表現も優れている。オケはfでの力やその中での分解能も優れているし、声楽曲も一音一音の骨格がはっきりしている。音そのものにもにじみが無く、クリアである。弦バスやオルガンなどの低音楽器は、ゴリゴリするくらい輪郭が明確であるが、量感的にはもう少し余裕が欲しい。ポピュラー系はリズムもはっきりしているし、明解で伸びやかさがあり、立ち上がってくるエネルギー感もなかなか優れている。イコライザーを省略したことがサウンド的にメリットに繋がっているようだ。次にボリュームを飛ばして入力してみると、全体の抜けのよさは更に上昇して来る。特に不足がちだった低音でのゆとりが出てきて全体の粒立ちや質感も向上してくるが、入力感度が高いためにこれを生かした使い方は難しい。デジタル入力ではレンジの広さを感じさせるし、バランス的にも無理は感じないが、全体的に硬質な印象が出て雰囲気や表情のゆとりに差が出る。光入力では高域の硬さがやや緩和され、標準的なバランスになる。


福田雅光氏 (1989年3月のステレオ誌より抜粋)
このアンプの形態はパワーアンプかプリメインアンプなのか議論も多い。デジタルアンプ自体の新しい形態というところだ。アナログ可変入力が最もオーソドックスな入力系になると思うが、クリアですっきり細やかな雰囲気が基調である。音像感としてはややスリムなパターンであるが、低音のエネルギー感は締りがあり立ち上がりが良い、力強いものである。瞬発力も良い。質感はクールでタイト系、透明なムードに結ばれて冷たい印象はある。中域から高域はサラッとして爽快な展開で濁りは感じない。中音は明るく十分に澄み切ったものである。解像度も高く適度な艶があって抜けの良いサウンド展開である。アナログ固定入力の試聴にはプリアンプを併用した。ピュアで明快、音離れのきわめて良いすっきりしたサウンドが特徴である。くっきりした音像、明るくしまりの良いスポーティーな躍動感があって高域もすっきりと伸びている。繊細で綺麗な雰囲気が特色である。デジタル入力同軸ではしなやかなニュアンスが出てキャラクターが素直で柔軟になるのが特徴。中低域や低音はボリューム豊かであり、密度は高い。光入力系の方がクリアになり繊細感は良好。

オーディオ解体新書>SE-M100