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Technics SU-A900

最終更新日 2006年10月8日


当時の価格 74800円
430W×136H×365D
9.4キロ

50W+50W(8オーム)
65W+65W(6オーム)
PHONO MC/MM 切り替え付き
1994年ごろの製品
リモコン付き

クラスAAの電圧コントロール部にMOS-FETを採用したMOSクラスAA回路を搭載している。

クラスAAというのは、純A級動作をする電圧制御アンプと大出力用の電流制御アンプが、ボルテージ・カレント・ドライブ、ブリッジ接続する回路です。つまりこのアンプはLR各2回路、合計4回路のアンプ回路を持っており、電流制御アンプは、スピーカー出力電流に比例した出力をする定電流源として動作し、純A級動作の電圧制御アンプは出力がブリッジの一端に接続され、スピーカー出力端子からNFBがかかる定電圧源として動作している。 電流供給アンプにはバイポーラトランジスターが使用されている。4アンプ構成ではあるが、山水のバランス回路のように(-)側のスピーカー端子にはアンプ回路はない。通常のアンバランス型のアンプである

またノイズ対策として バーチャル・バッテリー・オペレーションを採用している。レギュレーターと呼ばれる定電圧素子を利用して一定の電圧を得るのが通常だが、このレギュレーターには利点と欠点がある。レギュレーター内部の基準電位を決定する部分から多くのノイズは放射され、他回路に影響を及ぼしていた。この新開発のバーチャル・バッテリー・オペレーションは、素子をMOS-FETに置き換えてることによりこの問題を解決した。MOS-FETは、電圧で出力電流を制御できるという独自の性質を持つため、コンデンサーにチャージされた電荷を基準電位として動作することが出来る。この結果、電源からの影響を直接受けなくなるので、バッテリーで駆動したのと同じ効果が得られるということである。

トランスはコアの断面が角型でなく、角を落としたR型をしたRコアトランスを使用しています。これによりトランスの効率の上昇とリーケージフラックスの低減を達成しています。またコンデンサーではテクニクスで独自開発した、ケースに特殊制振アルミを使用したマスターシリーズコンデンサーを使用しています。シャシーは多層構造となっており、防振ゴムなどを使用して振動対策も厳重にされています。他にも金メッキブラシと鏡面仕上げカーボン抵抗を使用したボリュームや 金メッキ接点リレーなど、高品位なパーツが投入されています。これらは上位機種のSU-C2000などで使用された技術です。

ヨーロッパ市場を意識されて製造されたモデルで、事実かなりの台数が海外に出荷されたようです。また日本市場に流通したかどうかは不明ですが、SU-A900 MK2という改良モデルも存在したようです。


プロント下部には、アルミ製のパネルがあり、
それを開けると、スピーカー出力切り替えやトーコン、入力切替ボタンがある。

 


パネル内部

右からPHONO入力切替(MM/MC)、入力切替、テープモニター切り替え
ただし入力切替は、パネルのすぐ上にある左右のボタンで切り替えができる。
パネル内部のボタンは押し辛く、またシルク印刷も見えにくいので、必要性を感じない。

 


パネル左側内部

左からスピーカー出力切り替え・トーコン・バランス
ツマミは小さく 操作性は悪い
パネル上部のボタンで、トーコンをバイパス出来る。
OFFにすると僅かであるが、音も明瞭度が増すが、好みの問題。
ONのほうが若干マイルドな音になる。

 


背面パネル

プレーヤーというのはADプレーヤー
補助入力という表記も珍しい。いわゆるAUXのこと
特にダイレクト入力端子は設けられていない。
金メッキはされていない。

 


スピーカー端子

やや小型であるが、あまり問題はない。

 


底面

底板は取り外しが出来ない。
メンテナンス用に一部だけ、取り外しが出来るようにはなっているが
不可逆的になるので、取り外さなかった。
(PCケースの5インチドライブの蓋のような構造)

底板は2重構造になっている。
2枚の鋼板を張り合わせるのではなく、少し隙間をおいて組み合わせている。
ちょうど自動車のモノコックのような構造で、その間には硬質ラバーがサンドイッチされている。
しかし硬質ラバーは、周囲を中心に部分的に接触しているのみで、そのため底板は叩けばよく鳴く。

単なる1枚板の底板よりは剛性が出ているとは思うが、個人的にはこの構造は???と思います。



脚はプラスチック製で軽量
アンプ内部からネジ止めされているので、取り外しは困難
4つの脚を全部を取り外すためには、メイン基板や出力素子など多数のパーツを取り除く必要がある。


天板

サイド4本 リヤ2本で取り付け
特に振動対策はない



内部写真

白いケーブルはトランスから電力を供給するケーブル
立派に見えるが、カバーが掛けてあるだけでケーブル本体はよくある単なるフラットケーブルです。
内部はシンプル
よく観ると理解してもらえると思うが、前後パネルを連絡するケーブルがないことが判るだろうか?オーディオ信号は以下のような順路を通過する。

リヤパネル→メインの基板→フロントの基板→ボリューム→メイン基板→スピーカー端子

つまりメイン基板が前後のパネルをつなぐ信号経路の役目も果たしている。
非常に合理的な構造です。

ごちゃごちゃとした配線の多い TA-F222ESXの内部写真と比較すれば一目瞭然
ただどちらが音質的に有利かは不明。

A−919のようにセレクターもボリュームも フロントパネルには設置しないのが一番合理的であるが、コストの問題でローコストな機種には難しいだろう。


メイン基板とフロント側基板の接合部

ここをオーディオ信号が流れている。
手間のかかるコード類は極力排除されている。

 


Rトランス

0型のコアにコイルが巻かれている。


コアのリンクの断面は円で、これがRトランスという名称の由来。
これによって巻き線密度の向上・変換率の向上・不要放射の低減が得たれた。
コアの形状を陸上競技の運動トラックのような形とし、
コイルをその直線部分のみに巻くことでコストダウンを図っている。

従来のトロイダルトランスのコア断面は四角形で、コアの形状は新円であった。
そのため曲線のコアにコイルを巻く作業が必要となり手間が必要でコスト高の原因となっていた。

音質的には、むしろ大音量に続く小レベル信号でのS/N比の向上に効果があった。

 


それでも不要放射を減らす目的でシールド板が設置されている。

 


ヒートシンク

アルミ製で左側のメインのヒートシンクに、右側のサブのヒートシンクを組み合わせている。
製造後10年以上経過しているが、シリコングリスはベトベトであった。

振動対策は為されておらず、叩くと派手に鳴る。

 


テクニクスオリジナルのマスターコンデンサー
アルミ箔・ケースなどに徹底した防振対策が為されている。

50V 18000μFが2本
トップは銅メッキ
スポンジ状のもので振動対策されている。

SU-C2000(20万円のプリアンプ)やSE-A2000(25万円のパワーアンプ)と全く同じコンデンサーである。(容量・耐圧は勿論異なる)

 


入力系

メインアンプの基板上にインプットセレクターなどの回路が載っている。
JRC(新日本無線)製NJU7312
アナログファンクションスイッチ
2006年現在 廃版である。


入力用のリレー
オムロン製

 


スピーカー用のリレー
密閉タイプが使用されている。
耐久性の面で有利だが、接触不良になると交換するしかない。
横のコイルは、回路の発振防止用。

 


ボリューム

モーター駆動
ブラシを固定して、抵抗体を動かすという逆転の発想で作られている。
それによって音質劣化の原因となる異種金属の接合箇所を減らすことが出来た。
ブラシは金メッキ、抵抗体は鏡面仕上げされたもので、微粒子かされたカーボン粒子を特殊配合し電子の動きを滑らかにし、歪を減らしている。
ケースはダイカスト製で、金がかかっている。

 


出力素子

ワンパッケージになっている。左右に各1個ある。
詳しいことは不明。



左側のフラットケーブルが、トランスから電力を供給するケーブル。

交換すれば音質向上しそうだが、かなり手間がかかりそう。


コンデンサーは 松下製が殆どである。

PUREISUMというコンデンサーなどが使用されている。
SE-M100にも多用されていた。
ただ概観デザインは若干異なる。

 


メイン基板の回路は左右対称ではないので、
どの部分が 何の回路かさっぱり不明。

バーチャル・バッテリー関連の回路もこの基板上にあるはずだが、
どこがそうなのか不明。

 


唯一判りやすいのが、PHONOイコライザーの回路
フロントパネルからシャフトを伸ばして MC/MMの切り替えをする構造。
紫色のコンデンサーも松下製だが、銘柄は不明。

 


視聴中

SU-A900は左側
ヒートシンクのみ鳴き止めの処置をした。

右側はSONY TA-F222ESX
CDはKENWOOD DP-7040

スピーカーはS-77 TWIN SD

発熱はTA-F222ESXより、更に少ない。

私の音質のインプレは こちらを参照(別窓)

1993年冬のオーディオアクセサリー誌に貝山知弘氏のコメントがありました。
同社の新しいプリメインアンプシリーズのポリシーは、物量投入というアプローチではなく、技術内容で勝負している。比較的小ぶりな筐体から創造する以上に内容の濃いモデルだ。サウンドはエネルギーバランスの整合とS/N比の向上に主眼が置かれ、聴きやすい上品なサウンドに徹底している。音の雰囲気は国産アンプの中で最もヨーロッパ的である。本機はそれが高い次元で凝縮しており、センスの良いサウンドに仕上がった。fレンジは決して欲張っていない。パイプオルガンの最低域までのエネルギーがフルに出きらず、最高域の輝きも淡白である。しかし各帯域のエネルギーが均一でバランスが良く、音色は均一である。したがってどんな音楽プログラムも違和感無く聴く事が出来るよさがある。パワー感や切れ込みを誇張するタイプでなく、分解能もこの価格帯の製品の水準を越えたといったところだ。しかし、音楽の表情は極めて安定しており、整った枠組みの中でやさしくしなやかな響きを展開してくる。(中略)
バランスの良いオーケストラの響きの中で、豊かに艶が乗ったソロ・バイオリンが浮かび上がってくる。チェロパートは瑞々しい響きを聴かせ、木管もしなやかな表現である。高域のフォルテッシモでも決して下品な響きは出ない。表現の対比はきちっと出ている。声楽の滑らかな感触も良い。声のニュアンスが細かく表現できるわけではないが、付加音がなく歌詞も明瞭に聴き取れる。CDではあらゆる音楽に適度だった音のファクターが、AD(アナログディスク=レコード)では、表現を少し抑制している方向に働いている。低域のエネルギーが不足気味で、中域中心の表現になっている。リズム系のソースに弱く、ボーカルも少し細身の表現となっている。クラシックでは、CDと同じように聴きやすさはあるが、リアルな雰囲気を求めるジャズファンには(AD入力の音は)物足りないだろう。

また SU-A900の下位機種のSU-A700のレポートが、
1995年夏号のオーディオアクセサリー誌に長岡鉄男氏によって報告されている。(以下)
アダルト向きの高品位サウンドである。弦やボーカルが繊細、透明で、ふわりと浮く感じ、雰囲気が良く、オケもコーラスも十分に分解するが、切れ込みの鋭さ、叩きつけるような力強さといったものは無く、マイルドなサウンドである。
(あくまで下位機種のSU-A700のレポートです。誤解のないように)

 

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