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Panasonic SU-MA10

最終更新日  2010年6月10日

サイズ 430W×186H×433D
重量 25.0キロ
消費電力 250W
価格107000円
発売 1989年

なぜかPanasonicブランドで発売。松下電器産業は、テクニクス・パナソニックと一時使い分けていた時期がある。

SE-M100と同じコンセプトのアンプ。変更点としてはまず入力系が強化された。SE-M100は実質アナログ入力は1つという極端なアンプであった。SU-MA10にはチューナーやAUX入力端子が備えられ、一般的に使いやすいアンプとなった。内部構造としては、DACが20ビットDACからMASH方式の1ビットDACに変更されている。アナログ回路はSE-M100と同様のクラスAAで、使用されているパーツも同レベルであるが、電源部についてはトランス・コンデンサーの容量が飛躍的に強化されている。

SE-M100のページを合わせて読んで頂くと、より判りやすいと思います。

高出力DAC+パワーアンプという組み合わせは、YAMAHAのAX-2000でも採用されています。

 


ボリウムは無垢

トーコントロールやステレオ/モノラルの切り替えなどは無い。
入力系の切り替えとスピーカーの切り替えのみ


入力セレクターなども無垢である

 


DACは下部に設置されている。DATの普及に対応するために、デジタルアウトも装備されている。しかしDATは普及することなく終わったのは周知の事実。入力系はセンターに集中している。

面白いのが CDというポジションが無い・・・ということである。
CDはデジタル入力を使用しろということであろうか?
アナログはAUX1 AUX2 TAPE TUNERの4系統

 


トランスは300VAが2台
裸でこのサイズなのでケースに入れるとTA-F555ESXUなみのサイズになるだろう。完全ツインモノラルコンストラクション


ヒートシンクは叩いてもあまり鳴らない。発熱は少ない。

 


松下製X-PROコンデンサー
66V12000μFが左右独立で各2本、合計48000μF


コンデンサー自体はプラスチックのケースに入れられて防振されている。


左右を連結する補強具

 


中央の黒いカバー
特にダンプはされていない

 


内部はプリアンプかと思いきや
セレクターしか設置されていない

 


ちなみにスピーカーのリレーなどはコンデンサー近くに設置されている

 


左右のパワーアンプ部分のカバー
特にダンプはされていない

 


ファイナルはシングルプッシュプルとシンプル
使用されているトランジスターは不明


C3944Aとマークされているが、詳細不明

 


パワーアンプの回路
PUREISUMコンデンサー(松下製;製造中止)が使用されている。


脚は簡単は取り外しできない
ゴムシートを除去するとビスがあるのだろう

 


底板

 


底に1ビットDAC回路があるが、肝心の部分はシールドされており直視できない。
シールドを除去しようとしたが、簡単には出来そうにも無いので断念。


三菱製?の5238とマークされた製品が6つ使用されています。
外観はオペアンプのようですが・・・

左側にはモトローラー製MC74HC32ANが2つ
東芝製74HC123APがひとつ


試聴

サンスイ CD-α717L EXTRA(1988年発売)と接続して試聴。
どうしてこの機種を選択したかというと、ピンと来る方も居られるかと思うが、同じMASH方式の1ビットDACを使用しているのである。このアンプは1990年なので完全に同一のDACチップかは不明。

  • デジタル入力 特筆できることのが圧倒的にノイズが少なくSN比が良い。これは0dBアンプの効果だろう。特にピアノソナタは、このSN比の違いを露骨に感じる。全体的にスッキリして見通しが良く、メリハリがあるが、ちょっとスッキリしすぎて物足りないという感じもある。
  • アナログ入力 細かい音が良く出る。またソフタッチでややふくよかな印象。音の輪郭が少しボヤけて太る感じがあり、やや音像が奥に引っ込んむ。これはアナログ入力のキャラというよりCD-α717L EXTRAのキャラだろう。ブラスバンドのような賑やかなソースにするとデジタル入力と差は感じなくなる。

続いてパイオニア PD-T06と組み合わせて試聴した。



デジタル出力(同軸)とアナログで比較

DAC単体のスペックとしてはPD-T06の方が上であるが・・・さて どうなるか。
スピーカーはS-LH5を使用した。

  • デジタル入力 やはりSN比の良さが差が付く。CD-α717L EXTRAと比較するとバランスが良く落ち付いている。ドライブだけ比較すると、やはりPD-T06の方が優れているからか?低音もある。アナログ入力と比較するとややスッキリしている。
  • アナログ入力 アナログ入力の方がふくよかでホールに響く感じが美しく、弦の響きも良い。PD-T06はアナログ回路・デジタル出力のON/OFFが出来るのだが、アナログ出力中にデジタル出力OFFにしても、あるいはデジタル出力中にアナログ出力をOFFにしても、差は感じ取れなかった。

あと追加であるが、アナログ VS デジタル の差をSU-MA10のヘッドホン端子で試聴すると、また違った印象になる。御持ちの方はお試しアレ。


SONY CDP-555ESAを接続してみた。

  • デジタル入力 やはりSN比で猛烈な差が付く。色々な機器で音質の差を書いているが、皆微妙な差である。しかし、SU-MA10においてのデジタル入力とアナログ入力には、相当なSN比の差があり、ピアノソナタなどではデジタル入力の音を聴いてしまうと、アナログ入力は聴く気がしなくなる。
  • アナログ入力 サーサー、ノイズが五月蝿い。音質はややソフトな感じになるが、そんなことをどうこう言う前にSN比が悪い。勿論管弦楽や交響曲を聴く分には問題ない。しかしソナタや協奏曲、無伴奏曲を聴くとデジタル入力との差が気になる。

1989年 FMファン 長岡鉄男のダイナミック大賞部門賞受賞
長岡鉄男氏は以下のようにコメントされている。
SE-M100からの発展型だが、ルックス・内容・使い勝手とも格段に向上している。ハイCP機である。外形寸法はSU-V900と同じだが、シルバーゴールドの明るい色調と、大胆なデザインの為に一廻り大きく見える。実測重量24.7キロはクラス最大。キャビネットの構造はSU-V900と全く同じ。フロントパネルも同じだが、切抜きの位置が違う。ボリュームノブは無垢の巨大なもので210gもある。重すぎて心配になるほどだ。ACケーブルはV900と同じ。電源トランスはコアサイズ108×90×68ミリ、電源容量300VAのものが2台とクラス最強。このスペースに収納できる最大のトランスで、したがってシールドケースなどは無い。フィルターコンデンサーは松下で開発したオーディオ専用の高級品で、X-PROと命名されているもの、66V12000μF(直径50ミリ×80ミリ)が4本設置されている。銅板のキャップが付いた大型の樹脂ケースで4本のコンデンサーが一体化されて強固に固定されている。複雑な形状のケースなので型代も馬鹿にならないと思う。ヒートシンクはベース厚7ミリ、フィンは2ミリ厚のものが13枚。これが左右に1基づつある。(中略) ゲイン45dB(電圧増幅178倍)のフラットアンプとゲイン0dBのパワーアンプという構成。アナログ入力は固定を含めてフラットアンプを通過するが、デジタル入力はフラットアンプを通らずパワーアンプにダイレクトに入る。音はV900に似ているが、一段とスケールアップしていてパワフル。透明で繊細感もある。デジタル入力でのSN比の良さも印象的。15万円でも十分通用するアンプだ。
スズメの子 そこのけそこのけ戦車が通る。方舟

 

1990年11月のステレオ誌にて石田善之氏のコメントがありました
重量もありガッチリと大きく完全にツインモノラル構成で電源部まで独立している。一音一音の骨格がハッキリとしていて、音の芯を聴かせる。中低域の厚みや密度も高い。


音は透明度が高く、重心が低く、中低域にしつかんがあるり、爽快と肉厚がブレンドし、良いアンプが新しいコンセプトで生まれた。
高島 誠氏

 

今考えても、もの凄くお買い得なモデルかと思います。
ヒートシンクやトランス、シャシーなどは、SE-A3000(30万円)と全く同じように見えます。

 

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