オーディオ解体新書>Victor SX-900
Victor SX-900最終更新日 2009年7月31日 1988年発売 1台 204800円 |
SX-1000の縮小モデルとして開発された。3つのユニットは、全てアルニコ磁石を使用した内磁型磁気回路が使用されている。ツイーターとスコーカーは、 Zeroシリーズでも使用されたファインセラミックス振動板に、KENWOOD LS-G5000などでも採用されたアモルファスダイアモンド層を形成させた複合材(ファイン・ダイヤモンド・セラミックス)を採用している(KENWOODはベースにチタンを使用)。ウーハーは、パルプとクロスカーボンの複合材で、この時代に頻用された素材である。
NS-690Uと比較。 このスピーカーの音を聴いて連想するのは、やっぱりNS-1000Xかな。現在解体したままになっているNS-1000Xを再度組み上げて、このスピーカーと比較視聴してみたいですね。 組み合わせるアンプですけど、あまり音の艶がある製品は合わないと思います。サンスイのAU-α707L EXTRAでは、ちょっと中域が勝ちすぎる印象で、パイオニアM-90aのダイレクト入力だと、逆に少し大人しすぎる印象でした。 SX-900Spiritという後継機種があり、スコーカー振動板の直径拡大や振動板の改良、バッフル板厚の変更がなされ、重量もアップ。しかし価格は大幅アップ。密閉型からバスレフ型に変更され、音の傾向も大幅に変更され、より使いこなしやすい音色に変わりました。サイズは殆ど変更ありませんでしたが、バブル崩壊時期に価格大幅アップした製品の投入となったわけで、販売台数は少なかったようです。スタンドも変更されていますが、相変わらず背の低いスタンドで、スピーカー設置ベースという感じのものでした。 1990年6月のステレオ誌では ビクターは比較的低価格なシステムにまで、アルニコ磁石を使用しているが、そのこだわりは、アルニコの磁気特性が良好であるからだ。ニッケル・コバルト・アルミニウム・鉄の合金であるアルニコは、電気比抵抗値が、フェライト磁石と比較して200分の1になっており、制動力が非常に高いので、ボイスコイルの逆起電力を強力に打ち消すことができる優れた特性を持っている。 磁界の強さをコントロールできるフィールド型の磁気回路での実験で、磁気回路は定電流回路のはずなのに、なぜか入力信号に比例して電流計の針が振れるのを発見。それがボイルコイルで発生する逆起電力の影響で、磁束密度を変動させていた。それによって音の密度や艶、奥行き感という音楽の非常に重要な部分が影響を受けていた。 本機は新開発のリング型アルニコ磁石を使用しており、振動板の背圧を効率よく除去し、振幅のリアリティーを改善している。 響きが美しく、透明な音の再現性がある。(沢村) エネルギーバランスの優れたスピーカーである。ソプラノの質感が大変によく、肉声らしさを良く再現している。伴奏のピアノのあたりも感じの良いものになっている。弦楽器は厚みがあり豊かな感じさえ受けるし、解像度も良好で、きめの細かい音を聴かせ、穏やかさもある。ピアノソロもくっきりとしていながら、当たりの柔らかさもあり、透明感のあるサウンドになっている。オーケストラでは、音が細くならず、粒立ちの良い滑らかなサウンドを聴かせ、音場感もごく自然で奥行き方向への広がりも充分である。低域については低い方への伸びも良く、ベースの分解能力もある。量感も不足していない。全体的に大変バランスの良いスピーカーであり、アコースティックな感じを充分に表現しているし、レンジも広いので安心して音楽を楽しむことができる。(入江) 非常に密度の高い音質である。ハイテク素材の振動板を採用しているが、それらを充分に使いこなしているところに本機の真価がある。多少中域付近に固有の艶が乗っているが、音楽のバランスや曲相をマスキングするほど強烈なものではないので、安心してよいだろう。Fレンジも充分に広く、それでいながら高域方向にも刺激成分を排除した上でエナジー感がある。音場と定位の関係も良好である。ただデザインはあまりにもありきたりであり、また入力端子はバイワイヤリング対応とショートコードの付属はあっても使いにくい。 SX-1000の方が、音の立ち上がり、解像度、厚みで強力である。鮮明でブラスの粒立ちが勢い良く生き生きと表現される。金管系のリアリティーが大きく違う。低域を含めてエネルギーレスポンスが良く、倍音もすっきり伸びて、厚みも増している。低域はSX-1000の方がタイトであり、SX-900の方は、ボリューム豊かな押し出しという印象がある。もっとも力強さという点ではずっと良く、腰の強い低音を出してくる。 質感、雰囲気という点で比較すると、SX-900が柔軟な、SX-1000はクッキリ明確な音像感が得られている。音色も1000の方が素直だ。弦楽器の表情もみずみずしさを備え、基音と倍音との調和は明らかに1000の方が自然に思う。音場の広がりも横方向に拡大して開ける。ボーカルの音像感もしっかりする。鮮度と純度の高さは倍の価格差を納得できるものである。 サイズに見合ったリスニングルームを準備できれば、手ごろなスピーカーである。このスピーカーの優れたところは、バランスが優れており、セッティングも難しくないということだ。また音が痩せないので、厚みと暖かさが得られ、心地よいサウンドになっている。鮮度や密度感も充分で、低域から高域までの音のつながりも良く、ピアノの左手でも違和感は無い。ボーカルや弦楽器の分解能の良さ、ベースの躍動感など、音楽的な鳴り方だ。(入江) 1998年11月のステレオ誌に批評が掲載されていました。 私はむしろ上級機であるSX-1000よりこちらの方が好きですね。眼前に演奏が緻密に展開され、緊張感を持たずそこに自然と吸い込まれていく。ナチュラルさという点においては、10万円クラスのスピーカーとは一線を画している。今まで聞こえなかったオルガンの低い音も聴こえる。こんな細かいところまで拾ってくるのかというところまで判ってくる。SN比ももちろん良い。中高域も滑らかだし、ぱっと床にスピーカーを置いて鳴らしただけでも、充分にその良さ、滑らかさが伝わってくる。文句無い完成度。(貝山) 各部分に贅沢を尽くした設計。余裕を持った音がスムーズに出てくる感覚は独自のもので、バイワイヤリングにすると緻密感と力感がさらに増す。(神崎)
http://0481.rocketspace.net/SX900NS690-1 バッハ無伴奏チェロ組曲 http://0481.rocketspace.net/NS690SX900 いろいろ聴いて最近思うのが、やっぱり音が硬いですね。あと高域方向、低域方向の伸びは良いのですが、中域の充実度と言うのが、相対的に希薄になります。反響音などは綺麗に再生しますし、エネルギー感も良好です。 |
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