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Victor SX-F3

最終更新日  2009年11月1日

・形式2ウェイバスレフ型
・ウーハー:14.5センチ英クルトミューラー製コーン蝶ダンパー、フェライトダブルマグネット
・ツィーター :2.5センチツィーター(シルクソフトドーム)
・インピータンス6Ω 
・再生周波数帯域50Hz〜27000Hz
・最大許容入力100W 
・出力音圧レベル89dB/W/m
・クロスオーバー 4KHZ
・大きさ: 幅18,5cm奥行き26cm高さ34,5cm
・重さ:6Kg
・1995年製品 定価8万円(2本セット)

1995年発行のFMファン誌で、長岡鉄男氏のダイナミックテストに取り上げられていたので、それをそのまま転記しておきます。
コンパクトHIFIコンポーネント、F3シリーズにセットで販売されているスピーカーである。いわゆるハイコンポだが、バランスからするとワンランク上の感じもある。SX-A103, SX-V1の系列上にあるコンパクトスピーカーだが、キャビネットの仕上げが違う。

SX-A103、 SX-V1はキャビネットのすべての辺(12箇所)にアールをつけているが、SX-F3は前後バッフル周辺-8箇所にアールをつけている。またSX-A103のバッフルは5mm厚アルミ、SX-V1は8ミリ厚真鋳(しんちゅう)であるが、SX-F3は20ミリ厚のウッドである。

キャビネットもA103はパーチボード、V1はマホガニーの無垢材だが、F3はウオルナットの無垢材で6面とも20ミリ厚というデラックスなもの。

実測重量5.8キロ。バッフルはF3のほうが厚いが、側板はV1の方が厚いので内容積は大差ないと思われる。底板は脚として3本のピンが突出している。ターミナルは裏板直付けで、音質劣化の原因になるプラスチック製の端子板は使用されていない。

ユニットは取り外せない。裏板も着脱式ではないのでどうやって組み立てたか不思議なくらいだ。

ウーハーはV1は14.5センチ ドイツ・クルトミューラー製コーンに蝶型ダンパー、アルニコマグネットに壷型ヨークだが、SX-F3は、14.5センチ イギリス・クルトミューラー製コーンに蝶型ダンパーとなっている。磁気回路はフェライトマグネットであろう。

ツイーターは2.5センチシルクソフトドームで、これはSX-V1と同じ。バッフルをパラボラ状に削って取り付けてあり、ショートホーン風だが、ダイレクターである。フレームや取り付け方法はV1と違うが、磁気回路は同じであろう。しかしSX-V1とはF特性が違うので振動系に違いがあるかもしれない。

(中略)

ダクトのチューニングは64HZ。F特性は2.5KHZにディップがあるが、S103やV1のような広い範囲のしゃくれはなく、スムーズに伸びている。サイズの割りに低音が豊かで、高域はきめが細かく、ボーカルがよく張り出してくるが声の質としてはソフトタッチ。キャビネットの響きが美しく、V1と比較するとキャラクターが少ない。値段もSX-V1(15万円)の半値に近いが、音は肉薄している。2.5KHZのディップは聴いていても判らない。

1995年 ダイナミック大賞 部門賞

品番からすると 往年の名機 SX-3の継承というか その流れを意図して設計されたものだろうか?ビクターのハイエンドコンポHMVシリーズの構想が世襲されたハイコンポ<Fシリーズ>の上級スピーカーとして設計された製品。キャビネットに無垢のウオルナット材を使用しているのが大きな特徴。弦楽器と同様の自然な響きや音場感を実現するために、これを高圧組み固め工法によって仕上げると同時に、接合面のフラッシュサーフェイス化を徹底することで音波の回折現象を抑制し、一層磨きをかけたピュアサウンドの再生を目指している。エンクロージャーは、高圧組固め工法で高精度且つ強固にくみ上げられている。

 


ONKYO D-200Uと比較


シルクドームツイーター
絹織り2重の振動板である。 バッフル面にはコーン状の陥凹がつけられている。


アップにするとこんな感じ

 


イギリス クルトミューラー製コーン
SX-V1は ドイツ クルトミューラー製コーンだった。
フレームが美しい。

 



裏側
6面 全部が無垢の板で出来たスピーカーは、私も所有するのは初めて。材質はウオルナット材を使用している。非常に贅澤。 またターミナルは非常に使いやすい

 


バスレフポート
ダクトのチューニングは64HZ


ポートは紙パイプで内部に植毛がしてある(?)



底面の3本の突起
中央の穴は スピーカースタンドとの連結用であろう

 


コーナーの処理
ユニットはバッフルに固定された後にバッフルごとキャビネットに取り付けられている。取り外しは不可能。


ネットワークはスピーカー端子裏に、電解コンデンサー1 空芯コイル1 コア入りコイル1のsimpleな物が設置してある。接着剤でコテコテに固めてある。ウーハーがコイルのみの-6dB、ツイーターが-12dBか?素子の定数は判らなかった。(判ったところで分解不能なスピーカーなので、交換は不可能。)


ウーハーユニット
キャンセルマグネット付
蝶ダンパーはベークライト製とのこと
ボイスコイルはエッジワイズ巻き
ユニットの取り付けは、なにか特殊なことをしているようである。


上の方にツイーターユニットも見える。
観察する手技はあるのだが、もしカメラが痛むと修理に100万円近い出費が必要になりますので無理はせず。

吸音材は白色のものが使用されており、底板・側板・天板を軽く覆ってある。後ほどチクチク痛くなったのでグラスウールであろうか?補強はウーハーの下に横に1本あるのが確認できる。


レントゲンを撮影してみた。
裏板に取り付けられたネットワークがわかる。
透過していない構造物がコイルで、半透過しているのもが電解コンデンサーである。
レントゲンを撮影して初めて気づいたのだが、キャビネットの中央よりやや後ろ側に、天板-側板-底板をぐるりと一周するように、溝が彫ってあった。キャビネットの共振をコントロールする技術だろうか?


ツイーターを確認してみた。
やはり通常のフェライトマグネットを使用した外磁型の磁気回路のようだ。
マグネットのサイズもそれほど大きくないようである。

 

音は 長岡氏の指摘どおりですね。普段は机の上に置いて使用していますが、至近距離で聴いていても耳が痛くなるような音は、余り出ません。スケール感の追求やシャープなフォーカス、どっしりした安定感というのは苦手ですね。

LS-SE7と比較してみた。両者とも超低音の再生は当然ムリだけど、中低域の再生はナカナカ頑張ってくれている。ただLS-SE7は一寸ボンボン言っているようで、締りが無い。またその上の周波数帯域では、LS-SE7は一転して少しドライな感じで、音の厚みが控えめになる。また高域は嫌味にならない程度のスパイスが効いている。これはLS-SE7がどうこう・・・というより、ケンウッドサウンドなのかな〜とも思う。SX-F3はLS-SE7に似たところもあるが、中域の音が暖かく、あっさりした表現にはならない。LS-SE7は、先にも書いたが、フルートなどは音が細くなり、金管楽器も痩せた音になって安っぽい軽い音がする。逆にSX-F3の音が重すぎると感じる人もいるかもしれない。

 

詳しい私の音のコメントはこちらを参照


ちょうどこのページを作製中
dualモニターを使用して、向かって左手に製作画面
右をIEやPhotoshopで使用します。


アンプはTA-F555ESL
ちょっとアンバランス。
ソースはパソコンのHDDに保管したファイルをONKYOのサウンドカード経由でアンプにつないでいます。そのうちCDプレーヤーとかは死語になって、シリコンオーディオに取って代わられるのかもしれませんね。


1995年11月号のSTEREO誌にレポートが掲載されていました。
石田善之氏
質的なレベルが大変高い。特に最も重視される中低域での密度感は、倍の値段の製品にも負けないくらいしっかりしている。一音一音の解像度も大変高く、音がストレートであるだけに明解感の方向が強く、中低域をいくらか厚くしてゆったりとさせた響き感、暖かさ、音場の豊かさなどは少し抑えられている。(中略)ピアノは骨格がしっかりしたところを聴かせて、一音一音の切れ味や残響の美しさなどは充分に表現されているが、豊かな厚み感やピアノの大きさを感じさせるスケール感が欲しい。声楽曲は、声のいきいきとした感じがよく伝わるし、サ行が強調されることもない。ジャズボーカルはハイエンドにもう少し力があっても良いかと思うくらい自然で素直。

福田雅光氏
エンクロージュアの高級感はすばらしい。パワー、迫力、明快というエネルギーのリアリティーよりも、どちらかというと明朝体の細やかさでエレガントな表現が特色となったスピーカーのように思える。ニュートラル基調で素直な帯域展開が特徴であるが、繊細感に魅力を持った清涼なトーンが持ち味になっている。エネルギー分布は中低域に中肉の厚みがあり、中高域へ細かく細かくサラッとした粒立ちでつながって雰囲気が広がる。金管楽器の感触を上品に再現し、解像度もしっかりしている。低域は適度な弾力でさりげなく伸び、やせていない。使いこなしで中間帯域に柔軟なボリュームをプラスする方向を検討してもいいだろう。

ほか入江順一郎氏と金子英雄氏のレポートもありましたが、以上5名とも <特選>のマークをつけておられました。

また同誌には <1995年最新コンポーネント試聴レポート>という企画があり、そこでは以下のようなコメントがありました。

貝山知弘氏
音のコントロールの行き届いた一種独特の響きがしますね。音場空間の中に響きがいっぱい詰まっているような、一聴すると、響きの非常に良いスピーカーという感じです。ほかのスピーカーとは違う音像・音場のできかたというものを感じました。それはソースによっては魅力的でもあるし、もともと響きが良い状態での録音だと、かえって音が賑やかになるといった違った傾向の音が聴け、ソースによってかなり印象が変わります。低域に関しては力感というよりも、切れ込みのよさやもたつかない軽快感のよさというものがあります。そして中高域の響きのよさがとても豊か感じがあります。価格以上の見栄えがするスピーカーですね。構造の非常に凝ったものがありますし、ピアノの一音一音の粒立ちの良さなども感じられますから、なかなか魅力のあるスピーカーだと思います。

金子英雄氏
マルチダクトなので、音の出方もシングルダクトとは少し違う。あまりダクトの音の割れのようなものはないのですが、全体に軽快さを出した感じで、伸びやかさが主体になっています。中低域から低域にかけての力感は余りあるほうではありませんが、爽やかな音を出してくれる印象です。分解能も割合高いですし、全体のバランスとしては確かに多少ハイバランスのところはあるかと思いますが、明るく鮮明な感じで音楽を聴けるところがこの製品の特徴じゃないかと思います。エンクロージュアの素材などにもかなりお金がかかているスピーカーのようです。

1995年冬号のオーディオアクセサリー誌にも以下のようなコメントがありました。
福田 雅光氏

ウオルナットによる渋く、深みのあるエンクロージャーの質感は素晴らしいものがある。高級家具という風格が音を聴く前に感性を刺激してくる。音質はデザイン的にイメージされる重圧さよりも、透明度の高い現代的な美しさを持っている。明度が高く輪郭を綺麗に描く中細なエネルギー感が主体であり、高域の繊細な表現や陰影の爽やかな中間帯域など、総合的な雰囲気はエレガントな基調である。ニュートラルで解像力も水準以上の実力、SN比が全体的に高く混濁も大変少ないのも注目したい。中域から高域は清涼感を楽しませ、音場空間も広く透明である。低域のエネルギー感はさりげなくバランスした弾力感とやや上品にうつる。ボーカル帯域のボリュームも濃密という感触ではなく、クール系でスッキリした発声を特色としている。セッティングは底面の3本のピンを生かして使うと本来の真価が発揮されやすい。ただ場合によってはもう少し中低域にボリュームやコクのような雰囲気を持たせたいというケースがありそうだ。ピンを生かして、まずは密度の高いボードの上にセットしたい。


ウーハー軸上 1メートルの特性。

ツイーター軸上ではないのは、そこまでのマイクスタンドが無かったため。
このときSX-F3は、D-37の天板上に乗せられた状態で、床からは120センチほど離れた設置でした。


同じ状態で、3メートルの距離のリスニングポジション。

カマボコ型の特性ですね。

オーディオ解体新書>Victor SX-F3