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SONY TA-F333ESA

最終更新日  2007年10月19日


TA-F333ESAはGシャーシーを採用したSONYのアンプシリーズの6
作目の製品です。外観デザインは333ESLと同じです。回路についても終段にMOS-FETを採用した333ESL と同じです。なお初段・ドライバー段は従来どおりのバイポーラートランジスタです。

Gシャーシーとはジブラルタルシャシーの略で、ネーミングはジブラルタル海峡の硬い岩壁から取られました。モノはグラスファイバーなどで強化したレンジコンクリートのようなものです。333ESLとの違いですが、細かいコンデンサーの銘柄の変更や内部配線の強化くらいで、変更点は少ないようで、予告なしのバージョンアップといっても差し支えない範囲でしょう。

海外ではTA-F770ESという名称で販売されました。ちなみにTA-F555ESAはTA-F870ESという名称でした。


動作不良のジャンク品を入手。
しかし外観は超美品で殆ど傷らしい傷がない。
持っていても 多分捨てるから・・・ということで頂きました。 恐縮です


外形寸法 470Wx170Hx435Dmm 
重量 21.3キロ
1991年発売 90000円

TA-F555ESLとの重量差2.7キロはトランスとコンデンサー、ヒートシンクの差である。


基本的なことは、TA-F333ESRとかなり重複しているので、333ESRのページもあわせてご覧ください。TA-F555ESLの内部と比較しても 面白いことがわかります。

モデル名 変更点
333ESX

1986年2月発売。18.6キロ。トランスは350VA。120W+120W。コンデンサーはドライバー段13400μF、終段25000μF
Gシャシーを採用。音はハードでダイナミック

333ESXU

1987年10月。1987年10月。19.6キロ。120W+120W。コンデデンサーの配置が変更。しっかり固定されるようになり容量も強化される。

333ESR 1988年10月。21.2キロ。120W+120W。トランスがケースに封入され320VAとなる。シリーズ中ベストな音質と評判も高い?聴きやすいマイルドな音でエネルギー感は後退しバランスの良い音に。
333ESG 外観のデザインを大幅変更して左右対称となる。コンデンサーの表面を植毛で防振加工、コンデンサーはTA-NR1用に開発した新型コンデンサーに変わっている。トランスなどは333ESRと同じ。リモコン付属
333ESL 外観のデザインを大幅変更(333ESGが不評?)
終段にMOS-FETを採用。リモコン付属
333ESA 外観は333ESLに準ずる。21.3キロ。140W+140W
リモコン付属。内部配線を強化
333ESJ MOS-FETを電圧増幅段、ドライブ段、パワー段にも採用。外観は333ESLに準ずる。21.3キロ。120W+120W
FA5ES 終段がシングルに戻る トランスがトロイダルになりセンターマウントされる。Gシャーシ廃止。偏心インシュレーター。フッ素加工放熱フィン。外観デザイン大幅変更。
FA50ES 電源部強化。リモコン廃止。外観デザイン大幅変更。

 


サイドウッドはMDF製、裏側にリング状のフェルトがあり、それでコの字状の天板をダンプする方式。


コの字状の天板 多くのソニーアンプの共通パーツだろうが、ダンプ用の防振材の貼り方が各機種で異なる。

 


内部構造  TA-F555ESLとそっくり
ヒートシンクは555ESLとは材質が異なる。TA-F333ESRと同じヒートシンクである。


ただ細かいパーツを見ると、やはり価格差にともなうコストダウンがある。TA-F555ESLでは黒い箱状のフィルムコンデンサーが使用されていたが、TA-F333ESAでは茶色のフィルムコンデンサーになっている。

右手のコンデンサーは555ESLではセラファインコンデンサーだったが、同じエルナ社のシルミックに変わっているが、(写真はフォノイコライザー基板)これはコストダウンではなく、セラファインの生産中止に伴う仕様変更だろう。


金色の派手なコンデンサーはニチコン製で特注品だろうか?銘柄は記載されていない。555ESLではニチコンのAVFがここに使用されていた。 2階がフォノ基盤、1階がプリアンプという基本的な構造は同一である。外観はきれいだったが内部となると、鉄シャシーに年代相応の錆が析出している。


側面の白いものが錆


ボリュームはモーター駆動


ボリュームの品番は241-250-11


筐体前面のコントロール系の基盤
リモコン系のマイコン回路は使用しないときは、電源が切られる設計である。


トランスのケースのサイズは333ESRや555ESLと同じ。


トランスは4本のネジで固定。
ジブラルタルシャシーを貫通して、裏側からナットで固定されている。


トランスの容量は 190VA
555ESLは勿論、333ESXや333ESRより小さい容量である。トランス本体はケースに入っているのでサイズは不明。


パワーアンプ基板からスピーカー端子に伸びる電線。透明被覆の太いものが使用されている。ESL→ESAの改良点の1つだろう。TA-FA50ESにも同じ電線が使用されている。


ドライバー段用のコンデンサー
ネガティブブラックの63V 8200μFが使用されている。
これはTA-F555ESLと同じ容量であるが、高さが異なる。直径は同じ。


取り付け方も555ESLと全く同じ


コンデンサーのプラットフォームを取り外す
これもTA-F555ESLと同じものが使用されている。


終段用のコンデンサーも 555ESLと同じ63V 18000μFのネガティブブラック
コンデンサーの直径も直径60ミリと同じサイズであるが、長さは90ミリとすこし短い。外観も異なる。

 

 


BIAS調節部分  30mVと記載がある。
基板の質も 333ESAと555ESAでは異なります。


問題のスピーカー端子の基板


ほどほどの汚れ具合です。
紙やすりで軽く研磨します。


交換修理される場合は、この写真をご参考にしてください。


このあとは お約束のハンダクラックの補修作業に移行します。
怪しそうなハンダ部分を片っ端から再ハンダしていきます。SONYの製品はハンダが少ないような印象があり、ハンダクラックが生じやすい感じがあります。ソニータイマーといわれる現象の原因は、これではないでしょうか?

 



左よりC3298A-A1306A 東芝製MOS-FET J200(2個), C3423, 東芝製MOS-FET K1529
(片チャンネル分)

東芝製 2SK1529 2SKJ200 MOS-FET いわゆる新型MOS-FET
C3298A-A1306Aは、バイポーラー型トランジスターでプリドライバーとして使用されている。
以上 全てTA-F555ESLと全く同じ素子による同じ構成。


ジブラルタルシャシーに直接固定される基板
写真中央の2つのネジは、メインのフィルターコンデンサーを固定するためのもの。その下側の黄色い端子が付いているネジは、アースポイント

フロンパネルなどの件は、TA-F555ESLと全く同じなので割愛します。
ジブラルタルシャシーや脚についても同一です。



上が333ESA、下がが555ESL。外観はサイドウッドの仕上げとSPターミナルが違うのみである。


TA-F333ESAは光沢仕上げのサイドウッドである。正面もRがつけられている。
TA-F555ESLはつや消し仕上げ。

 

電源のパワーを比較

  フィルターコンデンサー トランス
TA-FA333ESX (12500μF+6700μF) ×2 350VA
TA-FA333ESXU (12500μF+6700μF) ×2 350VA
TA-FA333ESR (12000μF+6000μF)×2 320VA
TA-FA333ESG    
TA-FA333ESL    
TA-FA333ESA (18000μF+8200μF)×2 190VA
TA-FA333ESJ    
TA-FA5ES    
TA-FA50ES 12000μF×2  

空欄を埋めれる情報をお持ちの方は、教えてください。

さて音だし確認、メインボリュームにわずかなガリがありますが、左右のチャンネルから問題なく音が出るようになりました。めでたしめでたし・・・・

音はMOSらしい中高域に少しキャラクターがあり、低音は少し軽めです。TA-F555ESLと比較してみましたが、同じ基調にたつソニーサウンド。少し高域にアクセントがあり音場も密度より拡散を重視している。低域は下の雑誌コメントでは酷評されているが、そう酷いとは思わない。555ESLとの差は僅かで驚くような差ではない。このアンプも発熱が大変多いアンプですので設置には注意が必要です。

1992年秋号(季刊32号)のSOUND TOPSに高島誠氏と藤岡誠氏による辛口コメントがありました。同時期に販売されていたONKYO A-917F(89000円)と対決させる形で対談形式のコメントとなっています。
(
この雑誌のコメントは 非常に辛口な傾向があります。他の雑誌のコメントとは尺度が違います)

藤岡 この価格帯のプリメインは他にサンスイのAU-α607DRもあり、それを加えて三つ巴の比較を本来ならやりたかった。ところでこの2機種はともにMOS関連アンプです。ソニーは出力段がMOS-FETで、オンキョーはドライバー段の回路の一部にMOS-FETを組み合わせて使用しています。価格は同一。外観も重要ですがデザインはどうでしょうか?
高島 見た目のスッキリ感はソニー。伝統というべきもので、正面にはボリュームとセレクターしか出ていない。側板も付いていて高級感があります。
藤岡 ソニーのデザインは上級機のTA-F555ESAと同じですからね。
高島 オンキョーは流行のチタンカラーですが、やや地味ですね

藤岡 面白い色ですが、コンポを組むときに困りそう。他に同様の色を出しているメーカーが少ないですから。色が違うと統一感に欠けてしまいます。その点ソニーはうまい。細部まで丁寧に作ってあり高級感が十分。このデザインが売れ行きに大きく寄与しているのは間違いありません。ただ出てくる音はまるで違う。オンキョーの良さは低域にあります。低域の噴出し感、馬力感はまさにこのクラスで一番。駆動能力はダントツです。
高島 テストソースにロン・カーターのベースを持ってきました。彼独特の指のテクニックで余韻がどーんと伸びる音を比較しようと思ったからです。その差ははっきり出ました。ソニーはそこそこですが、オンキョーは良く低域が延びています。
藤岡 オンキョーは電源部にブリッジによる優秀な整流回路を持っていることが一因でしょう。それと出力段がバイポーラーということも効いていると思います。ソニーはMOS-FETですからね。最近の新型MOSは旧型のMOSと特性が変わったとはいえ、低域の物足りなさはMOSによるところがあると思います。
高島 ただオンキョーにはもう少し引き締まり感が欲しい。ややルーズです。
藤岡 しかし優れた電源部を持っているため、瞬時供給能力はなかなかももの、この噴出し感は評価できます。ただ気になるのはソニーの高域です。
高島 そうですね
藤岡 例えばソプラノは子音やブレスが何やら荒っぽくハードタッチです。もう少し濡れてしなやかな音が聴きたい。
高島 高域にキャラクターがあると、耳がそっちにひっぱられますからね。
藤岡 いわゆるマスキング効果。
高島 そのために低域が不足気味に聴こえるのかもしれません。
藤岡 そうですね
高島 でも、なぜこうした一種の光り輝くカスのようなものがくっついてくるのでしょう。特にバイオリンの重なりの所で顕著です。
藤岡 とはいえ、中域は綺麗。密度感もあるし軽やかです。これはMOSならではの良さでしょう。 バイポーラーよりの濡れた音ですね。
高島 今回のソースの中では、ピアノが良かった。
藤岡 右手の基音そのものは確かに綺麗。しかし響きはもう一息。
高島 そうした不満はどのソースにも共通しますね。ハープも低域が延びないため、スケール感が小さく、タッチ感が出てきません。
藤岡 ハーブはオンキョーの方がスケール感、リアリズムとも優秀です。こうしてみるとオンキョーは相当変わりましたね。かつては音の立ち上がり感や透明感など、いわゆるオーディオ的な方向に力を入れていましたが、最近は暖かさやふっくらした感じなど音楽を楽しむ方向に寄ってきており、それが成功しています。
高島 ボーカルを主体としたクラシック志向ならオンキョー、ソニーはどちらかというとオールマイティーな感じです。
藤岡 オンキョーはデザインがよくなればトータルでもっと評価して良いはず。このあとに上級機も発売されるようなので(A-919)それに期待しましょう。
高島 インフィニティーのルネッサンス80とのマッチングはどちらでしょうか?
藤岡 オンキョーですね。うまく鳴らしていると思います。
高島 そうですね。なかなかいい。

こちらで他のアンプと比較試聴しています。

TA-F555ESLを所有しているので、あえて維持する必要性は無いのだが、本当に傷ひとつ無い綺麗な状態なので、売却するノバ惜しい。売却したところで1万円前後の値段しか付かないだろう。仕事場でSX-F3の駆動用として使用中。独特の中高域のキャラクターもSX-F3と通して再生するととてもシルキーで美しく再生されます。

 

オーディオ解体新書>SONY TA-F333ESA