オーディオ解体新書>Victor XL-V1100

Victor XL-V1100

最終更新日  2006年10月25日

1986年発売 ビクター初の高級CDプレーヤー。
概観は地味ですがコストのかかった製品です。

価格は15万円

435W×100H×380D

重量 10キロ 消費電力18W


後ろ部分は 完全に後付ボックスになっており、ここにアナログ回路が収納されています。


リヤパネルを外すと コの字型のぶ厚いアルミ材で作られたボックスの中身を見ることが出来ます。

 


4倍オーバーサンプリング 16ビットDACチップ。
上に銅チップが貼られているので詳細は不明だが、どうもバーブラウン社製のPCM54というチップらしい。SONYのCDP-552やNEC CD-610などにも使用されたチップでモノラル仕様。したがって必然的にCDには最低2個必要。

PIN27がMSBのアジャストとなっており、チップ左手の半固定抵抗で調節したのであろう。もちろん触ってはいけない。

DACは16ビットから18ビット 20ビット・・・・24ビットくらいまであっただろうか?スペックはどんどんあがったが結局音は良くならなかった。

それよりもジッターの処理とかアナログ回路の充実、シャシーを含めた剛性 その辺が肝だったな〜。今思えば・・・。

 


アナログ部
デカいスチロールコンデンサー(?)が目立つ
中央にはシールドをかねた銅板が設置されている。


日本ケミコンの高級コンデンサー AWFが使用されている


同様のコンデンサーは出力端子の基盤にも使用されている。あまり見ない部品ですね。

 


アナログ部の電源回路
青/灰色のコードは本体内部のトランスに繋がっています。

 


底板

 


足はプラスチックとアルミの組み合わせで内部は空洞 13g

 


天板の取り外しには 側面のボルトを六角レンチではずす必要がある。

 


天板はぶ厚いアルミ製で3ミリの厚みがある。
これ以上天板が上がらない(!?)
フロントパネルト連結されていて どうにも外れない
壊してもいかんので諦めました。

中央を左右に仕切る隔壁が見えます

白いシールは 修理点検したメーカーが貼ったもの
平成9年 平成15年・・・と記載してありました。

 


デジタル基盤 青いコンデンサーが目立ちます。

 


電源トランスは1つですが サイズは大きい。
容量は23.5VA

全体的に非常に頑丈なプレーヤーでカチンコチンです。
スピンドルモーターはトルク変動を抑えるために、5極のものが使用されています。またシャフトも太いものが採用され、同社のアナログプレイヤーでの経験が生かされています。

 

当時の雑誌に広告が見つかりました。
転載しておきます(以下)

鮮やかに独立D/A 秀麗のデジファイン
アナログ部独立D/A 2ボックス・コンストラクション
IS独立懸架システムなどで音は精美の極致へ

サーボ系・デジタル系・オーディオ系の独立3電源をベースに、各ブロックの干渉を明確なD/A分離2ボックス・コンストラクションで徹底的に分離。オーディオステージはご覧のように厳重にシールドされています。シャシーは厚肉のアルミ押出し材と銅メッキ剛板によるオール非磁性体です。

ビクター独自のフローティング構造ISメカは、制振材ベースを加えて無共振・無振動性をさらに強化。また高感度な振動検出素子を用いた新開発Vサーボシステムでトレーサビリティうぃ根本的に高めています。ピックアップも新設計のハイ・プレシジョン3ビーム。基本の振動読み取り制度が断然違います。

ピックアップ部と並んで音質を決定するD/A変換部。新開発の4倍オーバーサンプリングデジタルフィルターでオーディオ振動へのデジタル妨害を極減させました。D/AコンバーターもLR独立とし、デジタルノイズの排除能力に優れた電流伝送方式を採用しています。

ノイズレス基板でさらにピュア。シールドボックス内のオーディオ基板は左右チャンネル対称。そして両面パターンの上層をアースに利用。わずかなクロストークや外来ノイズの干渉も排除しています

以上 転記

別冊FMファン50号 (1986年 夏)の表紙を飾ったモデルです。

同時期に発売されていたモデルは

アンプ テクニクスSE-A100
アンプ NEC A-10 タイプ3
アンプ サンスイ AU-D907X DECADE
アンプ ラックス L-560
CD パイオニア PD-7030
CD ONKYO C-700 C-500X
CD YAMAHA CD-2000W
CD アキュフェーズDP-80/ DC-81
CD KENWOOD DP-2000
SP DIATONE DS-2000

など・・・・

オーディオ評論家の高島 誠氏によるコメントは 以下

ピアニッシモは想像以上で今回のテスト機中トップクラスであった。ONKYO SONYのように光ファイバーやフォトカプラー(当時はこれがデジタルノイズ低減に流行した。一番最初に導入したのはONKYO)を使っていなくても そのレベルに達していたし ケンウッドのトップと並ぶ優秀さで、私のリファレンスのLHH-2000(フィリップスの業務用CDプレーヤー)にも迫るほどの自然さを得ていて、少々びっくり。チェンバロやオーボエなど、単に透明だが冷淡にならず、柔らかく、木部のエコー感も表現し、その高S/N比はとても良い。ダイナミックレンジも、ソニー級でD/Aコンバーターが独立型に近いため、ソニーに匹敵する。時間情報も一級で、僅かに高域強調で小変化するのみで、今年の話題作になろう。

ところどころ意味不明ですが 原文のまま転載しました

FMファン誌のダイナミックテストで長岡鉄男氏もコメントを残されています。
(1986年ダイナミックテスト大賞部門賞)
ビクター久々の高級CDプレーヤーで同社比でも他社比でも特にCPは高い。実測10.1キロ。シーリングドア付きサブパネルに10keyを収納したデザインはビクターらしからぬ?スマートなものであるが、もう一つ垢抜けないものがある。キャビネットは前後に完全に分かれており、外観上も後ろ1/5が別のケースになっているのが判る。前部がプレーヤーで後部がD/Aコンバーターで、間をアルミ板でシールドしている。このシールド板はPタイル2枚でダンプ。天板は特に丈夫。プレーヤー部の天板は3ミリの厚みのあるアルミ板で裏にPタイルを貼りつめてダンプしてあり1450gある。丈夫でなき難い天板である。側板もアルミ板で6ミリ厚。複雑な形状をしておりきわめて丈夫で叩いても全く鳴らない。底板は両面銅メッキの鉄板でこれも叩いても鳴らない。内部に前後と底板を連結する補強をかねたシールド板が取り付けれあり、これも両面銅メッキで丈夫。(中略)パーツも高級品が使われている。基盤もシールドをかねた両面基盤が使用されて丈夫。大量の銅メッキのビスが使用されており、組立は通常のCDプレーヤーの倍くらい手間がかかりそう。(中略)音はワイドでダイナミック。全域にわたって厚みと力があり、特にローエンドの伸びとエネルギー感は第一級。情報料も多く、音に艶と輝きがあり、細かい音もよく拾う。音場は三次元的に広い。非常に生々しい感じの音で、ソースによっては余分な音が付け加えられて聴こえるときがあるが、決して歪っぽさは無くヒステリックでもメタリックでもない。出来れば高級なボリュームを介してパワーアンプ直結で鳴らしたいところだ。筆者宅ではそうしている。

STEREO 1986年8月号でSTEREO特選に選定されています。
石田善之氏

技術面の裏付けもあって、本物志向の高さを目指した高級機。本体の3/4がプレーヤー部とデジタル部、残りの1/4がアナログ部と、シャシーそのものを独立させている。2ボックスコンストラクションと呼び、機械系とデジタル系がオーディオ系に悪影響を及ばさないように、という構成である。電源は1トランスながら給電は独立している。国内では初めての4倍オーバーサンプリングのデジタルフィルターを採用し、コンバーターも左右独立で使用している。ビクターの特長ともいえるのだが、同社のアンプなどにも使用されているGmサプレッサー、つまり電圧を電流に置き換えての伝達が行われている。DA変換された後の信号をサンプリングホールドする部分で、電流伝達スイッチングを行っている。これも音質に関わっているのだろう。

 音は高級機で無ければ得られない豊かな情報量を持ち、音そのものがタップリとして余裕がある。全体の安定感も本物である。オーケストラも一音一音の伸びが見事であるし、これがフォルテッシモになると、どっしりとスケールが大きく、その中であくまでも細やかな音が表情豊かに伝えられる。特に弦パートの高域や木管楽器の倍音やハーモニー、打楽器の細やかな響きなど、実に良く伝えてくれる。ディースカウの声楽など、スケールの大きなピアノの前で堂々とタップリとして歌われているし、ブレスなどもスッキリとしていて、そこにキツサやギスギスとした感じが無い。あくまでもくっきりとした発声の良さがそのまま表現される。ピアノもfとpの差がキッチリと表現される。特に低い音は余裕があり、堂々とした中に緊張感や激しさを感じるし、弱音の美しさは類を見ないほど美しい。全体のS/N比が抜群なのである。オルガンやコントラバスの伸びも見事であるし、ジャズ系のソースも定位が定まっている中に躍動感がある。ミュートのトランペットも伸びやかで美しい。全体的に豊かでたっぷりとした音が出てくるのだが、その中に整然としたカタチの良さがあって、角がくっきりと出るし、情報量も多い。

同誌では他にも 金子英雄氏と福田雅光氏のコメントもありますが、長くなるので割愛します。

 

 

音はこちらを参照

なおこのCDにはデジタルアウトがありません。これはコストの関係ではなく、構造的にリヤパネルにデジタルアウトを取り付けると、せっかく分離したアナログ系のBOXにデジタル出力用の回路を組み必要があり、音質劣化になるを判断されたためでしょう。

 

オーディオ解体新書>Victor XL-V1100